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145 『裂空』、ぶつかりあう

 それからしばらく、俺と赤マントは刀身をぶつけ合った。


「ちいいいいいいッ!?」


 相手の隙がなく致命傷を入れられない。


 強い。


 直感からそう伝わってきた。

 ただ強いのではなく技や勘、経験と鍛錬でしか磨き上げられないものがズバ抜けて高かった。

 達人と言っていいほどに。


 右下方から斜めへ斬り上げるように刃が迫ってきた。


「逆袈裟斬り……!?」


 反応して、ヘルメス刀で受けようとするが……!


「かかったな」


 なんと本当は左側……、逆方向から迫ってきた。


「フェイントか!?」


 この俺がフェイントに引っかかるなんて。

 動きも気配もまったく素振りも見せなかったのに。この俺の観を欺けるほどの技量……!?


「くう……ッ!?」


 ここからではどんな体の動作も間に合わない。

 俺はヘルメス刀に流しオーラの質を変えて、鞭形態に変化させた。


「ほッ……?」


 いや半分ほど剣の性質を残して。

 鋭い刃を残したまま柔らかにしなる刀身は、蛇のようにうねりながら赤マントへ迫る。


 フェイントによる薙ぎ切りと、俺の蛇刃。

 どちらが届くのが先か。


 ヤツは無理だと判断したようだ、地面を蹴って飛びのき蛇刃をかわす。

 それと同時に俺は空気にオーラを込め、範囲の大きな空圧を発した。


 それで益々赤マントは吹き飛ぶ。


「……あ、危なかった……ッ!?」


 俺の持っているのがヘルメス刀でなかったらやられていた。


 なんだヤツの……、剣神のごとき玄妙の動きは……!?


 吹き飛ばされた赤マントは既に地面を転がって勢いを止め、スクリと立ち上がった。


「……クセというのは侮れんものだ。必要ないのについかわしてしまった」

「何……!?」

「この体はもう、そのような気遣いは無用だというのにな」


 意味がわからない。

 どういう意味だ? 斬られたり刺されたりしてもかまわないということか!?

 もしそうなら、次からは相討ち上等で突っこんでくる?


「お前は一体……、何者なんだ……!?」


 戦えば戦うほど、相手がわからなくなってくる。

 本来なら一当たりするだけで相手の様々なことがわかってくるというのに。


 こんな感覚は初めてだ。

 わかるのはただ、相手がこれまで武器を合わせた誰よりも強いということ。


 オーラを伴わせた武器使いの……。

 レーディやゼスターよりも……。

 あるいはもしかしたら……。


 アランツィルさんよりも……!?


「そう揺れるな……、お前は充分に強い。純粋な撃ち合いでオレにここまで付いてこられた武芸者はそうそういない……」


 赤マントが言った。


「その奇妙な武器のアドバンテージもあるとはいえ、やはり惜しむべき逸材だ。お前のような強者の援けあってこそヤツを打倒することができるのだろう」

「ヤツ……!?」

「お前も知っているはずだ。前半生は魔王軍で過ごしていたのだろう? そこの小娘から聞いたよ」


 ヤツの視線が、俺の後方で縮こまるセルメトへ向く。

 頭から被ったマントに隠れて瞳の光も見えないが、それでもわかる濃厚な視線だった。


「ひッ!?」


 彼女は身がすくんで動くこともできなかった。

 それだけ赤マントの気配が恐ろしいということだった。

 おぞましいともいえるが。


 俺もできることなら彼女を抱えて逃げ出したいくらいだ。


「なんとも稀有な経歴だ。人間族でありながら魔族として生き、そして今また人間族に所属を変える。二つの世界を知っている一人というのは、この世界ではまさに貴重……」

「それで……!」


 俺は相手のペースに乗らず、聞きたいことだけを直入に聞く。


「『ヤツ』とは誰のことだ……!?」

「惚けるなよ、とっくに察しはついているんだろう?」

「ハッキリとした答えを聞くまでは、迂闊に早合点しない。そうやってヒトを騙すのが得意なんだろう?」

「そうか。信じる信じないはお前の自由だが、教えてやろう。……魔王だ」


 やはり。


「『やはり』という顔をしたな? しかし信じていいのかな? オレたちはウソつきだ」

「そこだけは信じてもいいだろう。お前ほどの強者が、ここまで入念な準備をかけて挑もうとする相手に……」


 ……魔王様以外の心当たりがない。


 恐ろしいことだが事実だ。

 コイツならば殺そうと思えば、グランバーザ様やアランツィルさんが相手でも思い立ったらすぐさま行える。


 それだけの実力があるんだ。


 特に技量。

 確実に俺を上回っている。


「いい反応だ。ヤツの恐ろしさを実感する者でなければ、その反応は出てこない。本来魔王の恐ろしさを知らないはずの人間が表すのだからなおさらいい」

「何のために魔王様を狙う?」

「理由? そんなものが殊更必要か? ヤツなど、どんな視点から見てもこの世にいていい理由こそない」


 赤マントは、語るままに剣を振り上げた。


「ついでと言っては何だが、お前に見せてやろう。魔王を倒すために用意した力を。オレたちが目指す結晶の力だ」


 マズい。

 俺は直感でそう悟った。


 相手が動き出すよりも早く、こっちが先に動かねばと思ったが結局のところあっちの方が早い。


「『逢魔裂空』」


 鮮血色に赤いオーラ隗が刃の鋭さで、俺へ向けて飛んできた。


「これは……ッ!?」


 赤い『凄皇裂空』!?

 少なくとも一目見ただけでそう感じた。


 刀身からオーラそのものを斬撃として飛ばす技。

 それを『裂空』。


『裂空』に工夫を加え、規模と威力を倍増させたのが『凄皇裂空』。

 先代にして歴代最強勇者と言われるアランツィルさんが創造した技だ


 あの赤マントが放ったのは『裂空』で、しかも間違いなく『凄皇裂空』クラスの大きさ。


 でもなんで赤い!?

 オーラに色とかつくものなのか!?


「くっそ『凄皇裂空』!!」


 危険を察知していたおかげで俺も動作が間に合った。

『凄皇裂空』は完全に赤い『裂空』を迎え撃つためのものだった。


 双方が空中にてぶつかる。


 極大のオーラ斬撃は、互いを粉々に消し飛ばし合った。


「ぐあああああああッ!?」

「ぬうううううッ!?」


 破壊の衝撃が全方位に散らばり、俺と相手の双方を襲う。

 吹き飛ばされないように踏ん張るのに精一杯で、他のことはできなかった。


「きゃあああああああッ!?」


 見事に吹き転がされていくセルメトへかまう余裕もない。


 余波が収まり、強撃のぶつかり合った跡地は焼け野原の惨状だった。

 すべてが吹き飛ばされていた。


「見事だ……。『逢魔裂空』を浴びせかけられてまだ命があるとは」

「おうま、れっくう……!?」


 そう言えば……!?

 ゼビアンテスのヤツが言っていた。三勇者を連れ去った謎のマント装束が赤い『凄皇裂空』を使ってきたと。

 まさか今のがそうなのか……!?


 この目で見て改めて異質さが極まる。


「……魔力が混ざっている」


 俺は言った。


「オーラだけでなく魔力が。お前の放った『裂空』の中に交じっている。赤く見える原因はそれだな?」

「たった一合でよく見破るものだ。その通り。オーラと魔力の融合。双方の長所を取り入れ強化した、その試作といえる技こそ『逢魔裂空』……」


 赤マントは言った。


「……魔王を倒すカギとなる技だ」

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