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112 ダリエル、『鎚』の勇者ゼスターと再戦する

「ゼスター……!?」


 ピガロの暴食を阻まんと駆け出す俺を、壁のごとく阻む巨漢が一人。


『鎚』の勇者ゼスター。

 彼もまたミスリル摂食により凄まじい量のオーラを噴出している。

 まるでミスリルが、人を超人に変える霊薬であるかのようだ。


「ダリエルさん!?」

「レーディ! 今はピガロの方を……!」

「くッ、わかったわ……!」


 そうだレーディ、俺なんかより今はピガロを止める方を優先しろ。

 サトメもナイスアドバイスだ。


 ノッカーたちが汗水たらして掘り出したミスリルは、アイツなんぞに暴飲暴食させるためにあるんじゃない。

 しかし……。


「うわわッ!?」


 前方を遮るかのように飛んでくる矢に、レーディたちは急ストップ。


「この矢、アルタミル!?」

「行かせないわよレーディ」


 なんてことだ……?

 俺はゼスターに、レーディはアルタミルに止められた?


「くくく……! 役に立つではないかアイツら……!」


 その向こうでピガロが、ミスリル鉱石に手を置きながらほくそ笑む。


「いいぞ! そこで邪魔者どもをしっかり押さえておけ! オレがこのミスリルを食らい尽くすまでな!」

「勘違いするな」


 浮かれるピガロに、ゼスターが冷や水を掛ける。


「それがしはダリエル殿に用があるのだ。お前がどうしようと知ったことではない」

「私もよ。私はアンタの邪魔をしないから、アンタも私とレーディの話を邪魔しないで」


 同志と思われた相手からの冷たい言葉に、ピガロは一瞬鼻白むが……。


「ふん、何であろうと邪魔者が来なければそれでいい。このミスリルは全部オレのものだ」


 大事なミスリルに手を掛けようとした、その時……。


「させぬでござる!」


 体自体が矢のよう走る猛突進にピガロは吹き飛ばされた。

 しかしヤツのガードは間に合った。でなければ今頃串刺しになって、槍先が腹から背中へ貫通していただろう。


「セッシャさん!」


 勇者レーディのパーティメンバー。

 槍使いのA級冒険者セッシャさんだった。


「ぐおおおッ! アルタミル、ゼスター! 何をしている!? 虫が一匹擦り抜けてきたぞ!!」

「何度も言わせるな、それがしはダリエル殿に用あるだけだ」

「私はレーディよ。他のヤツが何しようと知ったことじゃないわ」


 だからセッシャさんは素通りできたわけか!


「誰からも興味を持たれないのが幸いしたとは複雑な気分にござるが……。こやつは拙者にお任せを!」


 大丈夫ですよセッシャさん!

 皆アナタのことが大事ですよ!


「舐めるなああ! こんなザコ一人すぐさま片付けてミスリルを貪り食ってくれるわあああ!!」


 だからミスリルはポンポン菓子みたいなものじゃねえ。


 セッシャさんもA級に承認される冒険者だが、ゲテモノ食いしたピガロの恐ろしいまでのオーラ放出量。

 楽観はできない。

 俺もすぐさま援けに向かいたいところだが。


「通さぬ」


 俺には俺の問題であった。

 目の前に立つ『鎚』の勇者ゼスターが壁そのもの。


「ここは気が散るものが多すぎるな。場所を変えるとしよう」


 ゼスターは握るハンマーを横へ振りかぶる。

 そして……。


「ぐッ!?」


 俺へ横殴りに叩きつけてきた。

 ガードはすれども勢いを抑えきれず、俺体全体で飛ぶ。


 自分自身が蹴飛ばされた小石にでもなったかのようだった。


 皆で混戦していた地点から遥か遠くへと飛ばされる形で強制移動。


「うっくッ!?」


 勢い失って着地(着弾?)するも上手く受け身を取る。


「さすがだな、派手に吹き飛ばされはしたがかすり傷一つ負ってない」


 何故か俺の前に、打ち飛ばされる前と変わらずゼスターがいた。

 まさか走って追ってきたのか?


「オーラ量が増大したのは伊達じゃないようだな」


 俺を小石のように飛ばしたのも、走って追いついてこれたのもミスリル暴食によって桁外れに増えたオーラによるところが大きい。


 かつて勝負した時とはまったく違うと思うべきだろう。


「……で、何故だ?」


 俺は戦闘態勢を整えつつ言う。

 さすがに確認もないまま斬り合いはできない。


「キミは俺に大層執着しているようだが、何故だろうか? 理由が知りたいんだが……」


 恨み買った覚えもないしなあ。


 ゼスターの瞳は今なお赤い輝きを発している。

 何者かに掛けられた洗脳魔法がまだ解けていない証拠だった。


 実直そうな彼が強盗まがいにミスリルを奪ったのも、洗脳魔法により正常な判断力を奪われているからだろうが、その状態でなお俺との戦いを望む。


 洗脳によって刷り込まれた命令より、俺と戦うことを優先しる。

 俺との戦いを心底から望んでいるということだ。


「誤解してほしくないのは、それがしは貴殿に恨みなどないということだ。むしろ感謝があり、尊敬すらしている」

「なんで!?」

「我が『凄皇剛烈』の欠点を最初に指摘してくれたのが貴殿だからだ。それがしは、それによって自分の未熟さを晒されると同時に、進むべき道を示された」


 アランツィルさんの『凄皇裂空』を真似て編み出した『凄皇剛烈』。

 本来剣で放つ『凄皇裂空』を無理やりハンマーで再現したために、形ばかりをコピーして実用性が伴っていないという欠陥技が『凄皇剛烈』だった。


「キミはその問題を改善することなく要塞に挑んだな……」

「お恥ずかしい限り。脇目もふらぬピガロに焦らされた……、というのはただの言いわけにすぎぬ……」


 だが、それでも……。


「それがしはアランツィル様のあとを担う勇者へとなりたいのです! そのため邪道にまで踏み込み、膨大なオーラを得ることができた! 次は『凄皇剛烈』、この技を完成させることが我が目標!」


 ハンマーを俺へ突きつける。


「ダリエル殿! 一合にて『凄皇剛烈』のすべてを見抜いたアナタともう一度戦ってこそ、この技は真の完成を得る! そう信じている! 不躾無礼は百も承知! しかしそれでもお願いだ! それがしと戦ってほしい!」

「それをアランツィルさんがよしとするかな?」

「……ッ!?」

「功を焦って敗北を喫し、力欲しさに盗みまで働き、今また自分の欲求を満たすためだけに無関係の一般人にケンカを吹っ掛ける……」


 そんな勇者を、アランツィルさんが勇者と認めるかな。


「……やはり貴殿は、あの方によく似ているな」

「はあ?」

「初めて勝負した時からそう感じていた。気配、言葉遣い、戦法。まるであの方のようだと、アランツィル様のようだと……! それがしは、あの方に認めてほしいと思うように、貴殿にも認めてほしくなった」


 俺とアランツィルさんが似ているか。

 そうかもしれないし、その通りかもしれない。


「ダリエル殿! それがしは貴殿と戦い、『凄皇剛烈』を完成させて貴殿に勝ち、貴殿に認めてもらう!!」

「盗人風情に成り下がった時点で、俺もあの人もキミを認めない」


 容赦ない一言をまず飛ばす。


「それでも認められないというのなら、この戦いで失点分を取り返せ。まずはそこからだ」


 ヘルメス刀を抜き、剣形態に伸ばす。


「まず言っておくが、キミはアランツィルさんの存在に縛られ過ぎている。そこから脱しない限り『凄皇剛烈』とやらもただの二流技で止まるだろうし、誰からも認めてもらえない」

「…………」


 神妙に聞いてくれるか。

 では……。


「違う人間を重ねて見るのはやめろ。俺はアランツィルさんじゃないし、キミもアランツィルさんにはなれない。キミはキミでしかない。ゼスターは、ゼスターになるしかいんだ」

「……」

「わかったか?」

「はい……!」


 そうか。

 それならば……。


「先代勇者アランツィルが一子、ダリエル、参る」

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― 新着の感想 ―
[一言] 殺されたのか分からんけど鉱山で働いてた人の事も思い出してあげて
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