第二話
第二話です。
4月の初め。春になったというのに、凍えるような冬の寒さが未だに続いている。
今日は高校に入学してから1日目、授業はまだ始まらないが、クラス事務とか顔合わせとかをする日だ。地元の高校だから、中学の時にできていた女子のグループの結びつきがさらに強くなっている気がした。
学校に着いて、教室に入る。目立つのが嫌なので、教室の後ろのドアから静かに入った。男子の賑やかな声、女子の高い声が一度に耳に入ってくる。茶色い髪、長い睫毛、赤い唇。私はその中に入りたいとは思わない。私はあんなふうにはなれない。昔は寂しいと思っていたが、今はもう慣れた。私は先生が来るまで、本を読むことにした。話す友達もいないし、それくらいしかすることが無かった。物語ではよく、私のように周りに馴染めない主人公に、ただ一人、自分を理解してくれる幼馴染がいる、というのがよくあるが、私にはもちろんそんな存在はいない。別にいいのだけれど。
私は静かに過ごし続け、帰る時間になった。外に出てみると、しんしんと雪が降っていた。地面うっすらと、白い着物を羽織っている。
歩く度にチリンと鳴る小さな鈴の音を聞きながら、私はユキのことを思い出していた。あの日も雪が降っていた。
(ユキは今頃大きくなっていんだろうなぁ。あの日から一度も会えてないけど、元気にしてるのかな。会いたいなぁ。)
「ただいまー」
そんなことを考えているうちに家に帰ってきた。誰もいない家に声をかけると制服を脱いで、部屋着代わりに着ている桜の柄の入った薄紅色の着物に着替え、掃除も兼ねて隣の神社に散歩に向かう。
さっきよりも雪がたくさん降っていて、踏めば足跡が残るくらいに積もっていた。もう四月なのに吐く息が白い。今年の春は異常気象らしい。
(桜はいつ咲くのかな)
私は普段と変わらず鳥居をくぐる。
すると、なんだか少しだけ暖かくなったような気がした。そして、周りの雪がさっきよりももっと真っ白に見えた。周りを見渡すと、今自分が来た鳥居と目の前の神社だけ。
(前にもこんなことあったな)
私は思わず首から提げていた鈴と結んだ紐を見つめた。
───その時、風が持っていた鈴を揺らした。
思わず風の吹いてきた方へ顔を向けると、そこには雪のような着物の少年……と思ったら銀色の大きな耳と九つの尻尾を持つ、まるであやかしのような少年がこちらを見つめていた。
そして、首には綺麗な濃い水色の長いマフラーを巻いていた。
神社に具体的な名前を付けるか悩んでいます。