俺の知らないうちに俺にフラグが...っ!
「竜にぃって......?」
「......竜先生の事を兄呼ばわり?」
「転校生って竜先生の何なの......?」
「まさかの非王道受け......!?これもまたっ。む腐腐」
竜先生のファンだと思われるクラスメイト全員が、ゴリラちゃんとチワワちゃん問わず生気を失ったような目で、無意識と言うように吐いた。
...ーーあ、
「もしかしてやらかしちゃった......?」
「ああ、やっちまったな。(ニヤ」
おっと、声に出していたみたいだ。いや、そんな事よりも今はクラスメイトからの殺気が怖過ぎる。
その時の俺の行動は一瞬の出来事だったと言う。
ーーガラッ......!
俺は全力疾走で教室から逃げ出した。
※
(??視点)
俺は、要様の弟を探しに学園の敷地内を徘徊していた。だが転校生は一向に見つからない。
その事に少しイライラしながらも足元に視線を落とすと、そこにはまだ花が咲いているにも関わらず枝ごと折られ、他の桜のように桜としての一生さえも送れなかった桜が落ちていた。
その桜を見ていると昔の事を思い出してしまう。
ーー......神崎要と名乗った、要様と同姓同名な綺麗な男の子。
その男の子と初めて会ったのは、俺が小学校5年生だった頃の春だった。
俺はフラワー委員会に所属していた。俺は昔から花が好きで、クラス委員もクラスに飾っている花に毎日欠かさず水をやると言うだけのお花係をやっていたぐらいだ。
......だか、何故か俺が世話した花は全て1週間も持たずに枯れてしまう。
クラスに飾ってある花は、俺が毎週のように枯らしてしまうので、俺が花を枯らす度に担任の先生が花を買って来てくれていた。
フラワー委員会の仕事をしていても、毎日委員が決めた日にちゃんと水を上げているのにも関わらず枯れてしまう。
俺が余りにも毎回花を枯らしてしまうので、フラワー委員会の顧問の先生に本当に水を上げているのかを問われる始末だった。
その度に、俺と同じ時間帯に水やりをした生徒が先生に言ってくれたけれど、枯らした回数が10回を超えた頃から俺を化物を見るような目で見てくるようになり、俺が先生に言われている時も誰一人助けてはくれなくなった。
他のクラスの奴らや、先輩や後輩までもが、
『うわぁ、触らないでよ腐るでしょ?ふふっ』
『来たぜ、アイツに触られると腐るんだってよ。汚ねぇよな!!』
『うわ、こっち見たぜアイツ。もしかして俺ってばアイツが枯らした花みたいに枯れるかも!?あははははははっ!』
『先輩近ずかないで下さいよ......(笑)』
などと言われ、常に避けられるようになっていた。
それから俺は前まであんなに好きだった花を見ても、美しいとも思わなくなり、むしろ学校で孤立してしまっていると言う現実を突きつけられるようで嫌になっていた。
それでも、水やりは委員会の仕事なのでやらなければならない。その日も俺は憂鬱な気持ちで裏庭の花に水をやっていた。
「むふふふっ!」
どこからか楽しそうな声がする。とても綺麗な声だ。声の主が女性では無い事は分かるが、とても女性らしい綺麗な透き通るような声だった。
...ーーこの声の主も俺の事を笑って居るのだろうか......。
ずっとその綺麗な声を、聞いていたいと言う気持ちと、この声の主も俺の事を笑っているのでは無いのかと言う不安が入り交じり、それは恐怖となった。
ーーガサッ
「...っ!?」
「ヤバっ!誰かいたのかよ!」
音をした方を見ると、そこにはーー妖精がいた。
その表現の仕方は、今の俺から考えても無いなと思う。だが、その男の子の容姿を表現するのに、これよりも適切な表現は当時小学校5年生の俺には思いつかなかったのだ。
「...妖精......さん?」
「妖精......?まあ、確かに妖精のように可愛い男の娘とヤンチャ系ショタのカップルはすっぅぅぅぅごく可愛かったけど......思い出しただけで...む腐っ。」
「大丈夫......?鼻血出てるよ......?」
「おお、これは失敬。」
彼の第一印象はよく分からない事を言う人。だった。
でも、今俺に気づいたと言う事は、先程の笑い声が俺に向けられた物じゃないと言う事だろうかと少し安心した。
「俺の名前は、神崎すばっ、ゴホゴホッ...要だ。ん?花に水やってたのか?」
「...え?あ、うん......。」
その彼の言葉に現実に戻された。彼の視線は、俺の手の中にあるジョウロ向けられている。
「人間に花を枯らす力があると思う?」
ふと口をついた言葉だった。けれど言った瞬間後悔した。きっとこの子も俺を変な奴だと思うだろう。普通の人間ならこんな訳の分からない質問をされたらそう思う。
「やっぱ、なんでもーー「あると思うよ?」っ!?」
俺が先程の質問を無かった事にしてと言おうとすると、その声は男の子本人の声によって途中で遮られた。そしてその口から発せられた言葉は俺の想像していた言葉とは正反対の意味を持つ言葉だった。
「花を枯らす事は、薬品とかでも出来るじゃん。」
「ちが、そうじゃなくて......っ!」
「へ?何が?」
「俺は、花に薬品なんてかけない......っ!」
詳しい詳細は話は何もしていないのに男の子は何かを察したように言った。
「あっそ。じゃあ誰かがかけたんじゃない?」
「へ......?」
そうだ......。俺じゃ無い。俺じゃない誰かが薬品をかけていたとしてたら。
「おおっ!!あれは、禁断の教師×小学生カップルっ!!」
その綺麗な男の子は、俺にはよく分からない単語を大きな声で言った後、興奮気味な様子で遠くに走って行った。
それからの俺の行動は早かった。
一応それなりの会社の息子だった俺は、教師に『俺の持ち物が無くなってたんです。』と言い、カメラをセッティングしてもらった。
そして数日後、俺が教室の花に水やりをやった後、花に除草剤をかけているクラスメイトの姿がセッティングしたカメラに写っていた。
『もう少しで、この子が俺の物になる筈だったのにっ!?』
どうやら、除草剤をかけていたクラスメイトは、弱っている俺の心につけ込んで恋人になりたかったみたいだ。
ーー裏でしかコソコソ出来ないなんて、馬鹿らしい。
......?
俺は今、俺の中で生まれた感情に混乱していた。いつもなら、『男が男を好きになるなんて気持ち悪い。』と思うところなのに、今の俺には男が男を好きになる事に対して嫌悪感を微塵も抱いてい無かったからだ。
今思えば、その時既に神崎要君の事が好きになっていたのだろう。
それからの俺は、内面では要君以外の全ての人間を信じていないものの、なるべく地位の高い者と交流をして来るようにして来た。今じゃ、政治関係の者の殆どの者は俺と面識がある。
...あれから、五年たった今でも要君の事が好きだ。要様の事は要君と同姓同名だからと言う事もあるが、雰囲気が要君に似ている所があるので『俺が守らなくちゃ』と思ってしまい、気付いたら親衛隊の隊長にまで上り詰めていた。
でも、何故あんなに俺が要様に執着していたのかは今考えてみても分からないが。
ーーガサッ
昔の事を思い出して、つい頬が緩んでいると草むらから音がした。
...まるで、あの時のようだな......。
更に俺の頬が緩むのを感じる。
また、会いたいよ......ーー
「妖精さん......、」
え?主人公が空気......ですか?(∩・ω・)<あーあー聞こえない