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双竜は藤瑠璃の夢を見るか  作者: 結城星乃
第ニ幕 海容
79/110

第10話 前触れ 其の二



「……ったく! ただでさえしばらく近付くな、今のお前達は毒の塊だって、追い払われたっつーのに」



 だから機嫌が悪かったのかと、(りょう)は納得する。

 香彩(かさい)が熱で倒れたの原因は、(かのと)の甚大な妖気と鵺の妖気、そして竜紅人の神気だ。

 竜紅人も普段は抑えているが、叶に攻撃を仕掛けられたのなら、解放するしか抵抗する術などない。

 近くにいる保護対象の香彩のことなど、きっと気に掛けている余裕などなかったはずだ。

 自分が原因の一端を担っているというのに、香彩に会うことが出来ない。身体の様子を見ることも出来なければ、看病も出来ない。寧ろ近くにいればいるほど、香彩の容体は悪くなる。

 どうしようもない状況だったにせよ、竜紅人の心の中には焦りと苛立ちがあるはずだ。

 守れなかったのだ、と。

 療は小さく息をつく。



「毒の塊って、上手いこと言うね紫雨(むらさめ)

「どこが上手いんだよ、まんまじゃねぇか!」



 竜紅人(りゅこうと)の感情の昂りだけで増す神気に、療は露骨に嫌な顔をして見せた。



「本当に、きかないんだね、調整」

「うっせぇ!」



 ふいっと、療から視線を外した竜紅人が、卓子(つくえ)の上に置かれていた、湯呑みを掴むと、香茶を喉へと流し込む様にして飲む。


 竜紅人の動作に合わせて流れて来る神気は、まるで身体に良くない物が混ざった煙みたいだと、療は思った。

 胸の辺りが苦しくて、身体も少し重く感じる。

 鬼族(きぞく)の身体は、人に比べると遥かに丈夫に出来ているので、すぐにどうにかなるわけではないが、微量の毒をじわりじわりと、自ら進んで浴びているような気分にさせられる。



 だが。

(何で……懐かしいって思うんだろう)

 苦しいだけのもの、だというのに。



「──で? 今度は何だよ」

「えっ?」



 畳で片膝を立てていた竜紅人は、仰向けに寝転がる。片腕を枕にして、視線だけを療へと向けた。



「え、じゃねぇよ。お前の様子が変だったのは、俺も香彩も知ってる」

「あぁ……うん」


 

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