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双竜は藤瑠璃の夢を見るか  作者: 結城星乃
第ニ幕 海容
72/110

第3話 麗城にて 其のニ



「……ごめんね、(ねい)

「いえ。あなたが(かのと)様に勅命を受ければ、逆らえなくなるのは、知っていますから」



 寧と呼ばれた青年は、寝かせ耳になっている少年の頭をそっと撫でる。



「それにね、少しおかしいんだ」

「……おかしい、とは?」

「ねえ? 寧は何でぼくだって分かったの?」



 気配ですかね、と寧が即答する。



「叶様の気配の中に、あなたが見えました」



 薄い布を纏う様にして、存在していた玉三郎(たまさぶろう)の気配。

 それは完全に一致していたものが、少しずつ揺らいで擦れが生じたようにも見えたのだと、寧は語った。



「そこまで気配が読めるってすごいな。縛魔師ってみんなそうなの?」

「私の認める縛魔師は皆、もっと早い段階で気付いていたかもしれませんね。『読む』のは苦手なんですよ、私は」



 縛魔師とは国の安定と安寧を願い、祈祷や占術、そして季節ごとの祀りの行使を仕事としている者達の総称だ。

 国での役職名を大司徒(だいしと)司徒(しと)という。

 寧は『大司徒』の副官という立場にいるが、実際のところは六つある国の機関、六司(りくし)の統括である、『大宰(だいさい)』の副官だった。


 司徒である者がまだ未成年で、大司徒になることが出来ず、大司徒から大宰に昇格した官が、司徒が成人するまでのあと数年、両方を兼任する形を取った。

 本来ならば大宰に新たな副官が就く予定だったのだが、言葉遊びが好きな大宰が(ことごと)く副官を退職へと追いやってしまった挙げ句に、寧が良いと駄々をこねた為、寧は大宰と大司徒の副官を兼任する羽目になったのだ。

 司徒曰く、大宰の言葉遊びに付き合いつつ、さらりと流すことが出来る人物のひとりらしいが、寧にはその自覚はない。



(……今頃、どうしているんでしょうね)



 その司徒は先日、叶からの勅命を受けて出掛け、その後の連絡はない。

 大宰もまた視察の為に数日前から城を開けている。

 一日に数度、連絡と報告の為の式を飛ばし合うのだが、それが昨日からぱったりと途絶えていた。



(何も……なければいいのですが)



 連絡を怠る人物ではないので、何かあったのではと考えてしまう。



「じゃあさ、寧。香彩(かさい)ならすぐに分かったのかな」

「……あの方は気配を読み解くことを得意とされてますから、もしかしたら直ぐに違和感を感じられても、おかしくないでしょうね」



 香彩とは、司徒の役職を任されている少年だ。寧にとっては上司の子供であり、時期上司だ。

 そして玉三郎にとっては麗城にいて、初めて出来た友達でもあった。

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