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双竜は藤瑠璃の夢を見るか  作者: 結城星乃
第一幕 天昇
54/110

第53話 無限の回廊 其の一


 

 初めに見たものは、何だったのだろうか。

 とても白くて眩しい光。

 護られている光と、傷付ける光。

 それが目の前で、大きな光になって、弾け飛んで。

 そして。






香彩(かさい)! 紫雨(むらさめ)!」



 とても遠いところで(りょう)の声を聞いた気がした。

 ぼんやりとした視界の先に、紫雨の端正な顔立ちが見えたような気がして、香彩の意識は一気に浮上する。

 紫雨に抱き込まれる形で、香彩と紫雨はは外廊下に倒れ込んでいた。

 ゆっくりと香彩が身を起こす。



「大丈夫!? 香彩、紫雨」



 療のその声に、紫雨もまた、おもむろに起き上がる。



「療……お前は無事か? 咲蘭(さくらん)は?」

「オイラ達は咄嗟に部屋に入ったから」



 あの風から逃れることが出来た、と療が言う。

 まさに『力』の塊がぶつかり合って出来た、奔流と衝撃だった。

 元々身体に毒でもある妖気と、本来なら護りの力でもある神気。そのふたつが加減なしに衝突すれば、身を灼き、気管支を灼く毒に成り代わる。強すぎる力は人の身にとって全て毒でしかないのだ。

 


 それでもなお。


 

「……ごめん、紫雨」



 急に立ち上がった反動で起こる眩暈を、前を見据えることで堪えて。

 外廊下の先へ。

 爆発が起こったその場所へ。

 療と紫雨の一瞬の隙を突いて、香彩が再び駆けだした。

 後方で驚く療の声と、諫めるような紫雨の鋭い声が香彩の名前の呼び、追い掛けてくる気配がしたが、敢えて反応せずに前へ前へと駆ける。 


 居ても立っても居られなかった。

 気配を辿ることしか出来なかったが、激突したのは(かのと)竜紅人(りゅこうと)だ。どうしてこのふたりが戦うことになったのか、側にいた(あおい)という少年はどうなったのか、分からないことばかりで焦燥感だけが募る。



(……竜紅人……!)



 余程何か切羽詰まった状況があったのだと、香彩は思った。

 そうでなければ魔妖の王に対して『力』で応戦することがどういうことなのか、分からない竜紅人ではないからだ。



(……りゅう……っ!)



 魔妖の王の神妖たる『力』は、恐怖よりも先にその強大さに畏怖の心が生まれる。譬え真竜といえども、荒れ狂う天災に立ち向かうようなもので、その『力』には適うはずもない。



(それでも、竜紅人は必死に抗おうとしている)



 その事実に、やはり香彩の心の中に生まれるのは、焦りだった。

 縺れる足を何とか前に踏み出して、香彩は進む。

 何があったのか分からない。



(だけど……少しでも力になれたら)


 

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