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双竜は藤瑠璃の夢を見るか  作者: 結城星乃
第一幕 天昇
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第48話 神妖 其の三



 (あおい)はその様を呆然と見ていた。

 竜紅人が自分を庇って、倒れていくその様を。

 そして目の前には。

 今一度と、攻撃を繰り出す彼君の姿があった。

 ああ。



(ここで倒れるわけにはいかないのだ)

(僕は……還らないといけない)



 たとえ、竜紅人が僕のことを思い出してくれなくても。

 


 



 葵に向かって再び爪を突き立てようとする(かのと)の攻撃が、弾かれた。

 戦い方なら知っている。

 竜紅人の経験と記憶が、自分の中に流れ込んでくるのを葵は感じていた。

 ゆらりと、葵が立ち上がる。

 神気で作られた手刀を、構えて。



「……成り替わるつもりか? 葵」



 葵の姿が少しずつ変化する。

 彼を護るために、そして自身を護るために。

 より力が使える姿に。

 葵はいつの間にか、竜紅人(りゅこうと)の姿を取り、竜紅人の気配と力をその身に纏っていた。



「彼と、僕自身を護るためなら」

「……片腹痛いな。その程度の力で護るとな。忘れ去られたものが! 思い上がりにも程があるわ!」



 妖力の籠った一撃が葵に向かって放たれる。

 葵はそれを手刀で受け止めると、叶へ向かって弾き返した。

 その勢いのまま、飛び込むようにして叶の懐へ入り込む。

 叶の放った妖力の塊ごと、手刀で一線を描いた。

 小さな爆発が起きると同時に、その攻撃を紙一重で避ける叶の姿があった。

 宙に叶の銀糸の髪が数本舞う。

 葵は迷わず回転を加えて、更に踏み込んだ。

 ぎん、と神気を纏う手刀と、叶の鋭い爪がぶつかり合う。

 叶の一撃は重いものだった。

 何とかその爪を弾き返し、葵は少し距離を取る。



「何故、僕を討とうとなさる、彼君よ」



 息を整えながら葵は再び手刀を構える。

 対する叶は吐息の乱れなど全くなく、悠然とそこに在った。



「──お前が忘れられた者、不要の者だからだ。お前が何者であるか自覚しているのであれば、この言葉の意味は理解できよう?」



 忘れられたもの。

 その言葉が葵の心の中で響く。



「彼君よ……あの日、地上に降りたあの日、()てられた陰の気はあまりにも強大だった。側にいた貴方なら知っていよう?」

 

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