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双竜は藤瑠璃の夢を見るか  作者: 結城星乃
第一幕 天昇
39/110

第38話 療と竜紅人 其の一



 療はなんとなく、天井の木目を見ていた。

 寝具を用意して竜紅人(りゅこうと)を寝かせて、自分も床に就いたはずだったのだが、何だが妙に目が冴えていた。

 身体は疲労感を訴えている。

 早朝から歩き通しで、夕暮れ前までに碧麗(へきれい)の街に到着しなければいけないという精神的な圧力と、『人』である香彩(かさい)との体力的な兼ね合い。そしてようやく街に着いたと思えば、結構な速度で走りだした竜紅人を追いかけ、かつての仲間との再会した。

 疲れていないわけではないのに、どうしたことだろう。

 療は小さく息をついて、寝返りを打ちつつ目を閉じる。

 寝てしまわないといけないのだ。明日から、帰城の旅路なのだから。

 ふと、視線を感じて療は目を開けた。

 寝ていると思っていた竜紅人と、視線が合う。



「……眠れねぇの? お前」

「……竜ちゃんこそ、もう寝たと思ってたよオイラ」



 びっくりしたと言う療に、竜紅人の少し笑ったような気配がした。

 昨日から様子のおかしかった竜紅人だ。

 夕餉もそこそこに床に就き、今朝からはあまり話をせずに、まるで何かに追い立てられるかのように、そして何かに呼ばれるかのように、この碧麗にやってきた。



(でもまさか)



 陽の暮れる前の、愚者の森へ単独で走って行くとは思わなかった。

 普段の竜紅人ならば決してそんな不注意なことはしない筈だ。ましてや保護対象である香彩を置いて行くなど、有り得ない話だった。



(……それ程までに)



 あの少年とは、深い繋がりのような何かがあるのだ。

 竜紅人が寝具から起き上がる。

 つられるようにして療もまた起き上がった。この季節特有の凍て返る寒さに、上掛けを自分の膝へと寄せる。

 夜も更け、あと数刻もしないうちに日付が変わってしまう、そんな時間だった。

 何やら思い詰めたような表情を浮かべていた竜紅人が、小さく息を吐いて療を見る。



「大丈夫なのか? お前」

「──何が?」



 療はきょとんとして竜紅人を見た。

 だがすぐに竜紅人が何を聞いているのか理解した療は、思わずそれはこちらの言葉だよと、心の中で唸った。

 竜紅人の視線は療から離れない。

 すまない、とそんな言葉が聞こえたのは、竜紅人の口からだ。



「……お前達のことを考えてる余裕がなかった。俺が『力』を抑えないで愚者の森に入ってしまったら、当然のことながら鬼族は動く。触発する。分かっていたはずだったのにな」

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