表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双竜は藤瑠璃の夢を見るか  作者: 結城星乃
第一幕 天昇
3/110

第2話 序幕 其のニ



「……招集命令?」

「是。主君館へ上がれとの御下知が、(かのと)様より直々に」



 副官の言葉に、怪訝そうな表情を浮かべるのは、まだその顔に幼さの残る少年だった。

 少年は何かを思い返すような仕草をしていたが、やがてこてと首を傾げる。

 白の布着に、紅紐で胸と長い袖部分に縫い取りの装飾を施してある、縛魔服と呼ばれる正装を着込んだ少年の、高く結い上げ背に落ちる春の宵の春花のような藤紫の髪が、動きに合わせてさらりと揺れた。



「そうなんだ。特に何も聞いてなかったんだけどなぁ」

「こちらも大司徒(だいしと)からは何も。急を要する御下知だったのでしょう」



 正直言って嫌な予感しかしない。

 少年は空笑いをしながら、楼台の桟枠(さんわく)から外を見る。

 主君館へと続く渡廊(わたろう)が、そこにはあった。




 麗国中枢楼閣は、城主の政務室である主君館と、大僕(だいぼく)政務室、六つある国の機関、六司(りくし)の政務室と、その大司官、司官の私室ある場所だ。

 凹の形をしている楼閣は全六層にもなる。

 最上階にあるここ陰陽屏は、国の安定と安寧を願い、祈祷や占術、季節ごとの祀りを行う者達の政務室だ。

 彼らは一般的に縛魔師(ばくまし)と呼ばれている。国での役職名を大司徒(だいしと)、その補佐を司徒(しと)といった。



 司徒である少年にとって主君館は、上司である大司徒と共に上がる以外は、特に無縁の場所だった。

 特に招集に関しては、まずは大司徒に話がいき、そして少年に下るようになっていた為、余程『急を要する下知』だったのだろう。

 魔妖関連か、あるいは……。

 息を付く少年に、副官がくすりと笑う。



「そのような大きな溜息をつかれますと、幸せが逃げますよ。香彩(かさい)様」

「だって……嫌な予感しかしないじゃない?」



 少し困ったような顔をして、香彩と呼ばれた少年は、副官を見上げてそう言ったのだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ