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校長との対面

日曜更新するとか言っときながらこの様です。申し訳ございません。


 きぃー、という蝶番が軋むような音はなく、煙のように一瞬で姿を消した扉。

「おおっ」

 日本では見たことのない現象に思わず声を出してしまう。

「なんだ?」

「ンでもねぇーって」

 あんまりビビらすなよ……。

 そう思いながらも視線を前に向けた。広さは日本の表現でいくならば10畳ほどだろうか。

 たった一つの部屋として考えるなら、相当にでかい。

 まぁ、これを一人で使ってるんだよな……。

「こっちだ」

 後ろからハゲ頭が声をかけるために、振り返る。

 おいおい……まじかよ。

 消えたはずの扉は元通りになっていた。やばい……。魔法のある国ってのがわからん……。

 何でもありじゃねぇーかよ。なんかマンガやアニメでよくある人を生き返らせる魔法があっても不思議じゃねぇーぞ。

 不思議そうにあたりを見渡しながら1歩1歩と部屋の奥へと進んでいく。

 床は大理石調の白タイルで埋め尽くされており、四方は天井に届く高い本棚が並んでいる。

 その本棚にはびっしりと本が並べられていて、僅かな隙間さえない。

 う、うわぁ……。

 圧倒的すぎる本の量に気圧されながらも、俺は歩みを進めた。

 瞬間、体が何かに呑まれたかのような浮遊感を覚えた。そして同時に音が消えた。

 な、なんだ……?

 慌てて辺りを確認しようとするも、水の中にいるかのようで瞬間的な動きができない。

 どうなってんだよ。校長室じゃなかったのか!?

 深海のように真っ暗な後ろを見た俺は、胸中で毒づく。不意に、前方で明かりが走った。

 自分の中では慌てて、しかし、傍から見ればゆっくりと、前方に視線をやった。

 そこには何かに呑まれる前に見た、大理石調の床があり、焦げ茶に塗装された両袖デスクが存在している。

 そしてその奥には見るからに高級そうな椅子に腰を下ろす一人の青年がいた。

 じ、ジジイじゃない……?

 俺の概念からいくと、校長と言えばジジイのイメージだ。故に、30代前半と思われるその男性を見て驚かずにいられなかった。

 その青年の隣にはハゲ頭が立っている。

 何やらペコペコしながら真剣な顔で話し込んでいる。

 しばらくハゲ頭が一方的に話し続けると、青年は幾回か頷き、指を鳴らす素振りを見せた。実際には、鳴らしたのかもしれないが何かに呑まれている俺に音は届かなかった。

 だが瞬間──。俺の耳に音が届いた。

 日本の学校のような喧騒な音はない。重苦しい空気の中に、ハゲ頭のボソボソと話す声が洩れるだけ。しかし、先ほどまでの無音とは天地の差だ。

 鳥のさえずりがあり、空気の流れさえ感じることができる。

「何だったんだよ……」

 体にモヤモヤした感じを残したまま、俺流れるように零した。

「合格だ」

 扉の前で聞いた若々しいと感じた声がそう告げた。

「……」

 どういう意味か分からず、俺は訝しげにその青年を見た。

「何がどうなってる? そういった感情か?」

 どこか愉しそうな口調で青年は言った。

 嘘だろ……。考えまで見透かされてるのか?

 ──大丈夫。この心意魔法が使えるのは私だけだから

 そう考えた瞬間、俺の頭の中に目の前に座る青年の声が響いた。

「えっ!?」

 予想だにしない場所に響いた声に思わず声を洩らしてしまう。

「コラッ! 静かにせんか!」

 ハゲ頭が顔を真っ赤にして俺に言う。

 こいつは一体何なんだよ……。どれだけ校長に媚びたいんだ?

「いいんだ。ところでハーハッド先生」

 青年は椅子に座ったまま、ハゲ頭──ハーハッドを見上げ優しい笑顔で話す。

「な、なんですか?」

 対してハゲ頭は引き攣った笑顔で答える。

「授業の方はどうなったのですか?」

「……え、えっとですね。じ、自習ということにしています」

「私の許可も取らずに自習……ですか。貴方も偉くなられましたね」

 優しい笑顔のはずなのに、俺はある種の恐怖を体感した。声にトゲがあるようには感じられない。だが、俺は恐怖を体感した。

 こいつは……一体何者なんだ? 本当にただの人間なのか?

 根拠があるわけではない。ただ、人間としてのシックスセンスがそう叫んでいるのだ。

「す、すいません!」

 ハゲ頭はその頭に脂汗を浮かべながら、頭を下げる。

「今すぐ戻ります」

「よろしい」

 より一層優しさの増した表情。だがそれは、造られた仮面のようで俺には冷たさが伝わった。

 ハゲ頭は怯えた顔で急いで駆け出す。そして、俺の横を通り過ぎる瞬間

「気をつけろよ」

 と囁いた。

 直後、ボンっという音がし、ハゲ頭は完全にこの場から姿を消した。


「はじめまして」

 俺の戸惑う気持ちを知っているのか、青年校長は穏やかな笑顔で俺に言う。

「……」

 訝しげな瞳で俺は青年校長を値踏みする。信用に値する人物なのだろうか?

「何も話してくれないのかな?」

 青年校長は穏やかなそれを崩さず、更に穏やかさを増したような声音で告げる。

 だが俺は答えない。いや、答えるべき言葉を選べなかった。

 何を話すべきか。どの言葉を選べば、相手が情報を洩らしてくれる?

 考えれば考えるほどに結論がまとまらない。

 しかし、情報を奪えないのであればそれは無駄と言うものだ。日本──いや、地球という情報が戦局を動かす大きな要因となる世界を生きてきた俺はそれを知っている。

「ふーん、情報が欲しいのかな?」

「なっ!?」

 俺の思考を読んだのか?

 ドンピシャで当てられた思考に、思わず声を洩らしてしまう。

 まさか考えまで読めると言うんじゃねぇーだろうな……。

 ──そのまさかだよ。でも、心意魔法を使えるのはどこに行こうと私だけだから安心したまえ

 安心? そんなの出来るわけがない。思考が読めるなら、話しかける必要もないだろう。

 声に出してしまいそうな言葉を喉を閉めて、俺は脳内で叫ぶ。

「私たちは二人きりだぞ?」

 表情から感情が伺えない。俺はただ黙ってその場の流れを伺う。

「んー、まだ話す気にはなれないか……」

 ここで青年校長は困ったような顔を見せる。

「なら、こういうのはどうだろうか? 私も、この世界の人間ではないのだよ」

出てきただけの校長。若いよね。世界創世時から生きてるんだよ?

若すぎだよー。

って。何この人も異世界人?

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