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新たな証拠

どうも!

月曜日はやっぱり朝起きるのしんどいですねー。


というわけで、17話です!

 誰も、何も言うことが出来なかった。クラス三強の一角が、どこの馬の骨かも分からないような奴に負かされたのだ。しかも、その男の攻撃によるダメージを受けた様子もなくだ。


 そこへちょうどココロ先生が帰ってくる。

「って、あなた達。何やってるの!?」

 目を丸くし、声を裏返しながら言う。自身が能力があると判断し、指名していた一人のススが項垂れて座り込んでいる。対して俺は、それを見下ろすように立っている。

「デュエル? ってやつです」

 淡々と答える。悪いことなどしていない。ただ売られた喧嘩を買っただけだ。

「教師の立ち会いなしで行うなんて、何を考えてるんですか!?」

 驚きではない。怒りの混じった声が俺に飛んでくる。

「んな説明聞いてねぇーよ。それに俺が勝ったって事実ならここにいる全員が知ってる」

 顔を上げて、クラスメイト全員を一瞥する。すると、クラスメイトはこくこく、と頷く。怪物だな、俺。何もしてない。する気もない。でも、その力ゆえに恐れられる。

 自嘲気味に微笑んでから、俺はココロ先生に向き合う。

「で、頼んでたものは?」

 ココロ先生は俺をまじまじと見つめてから、えっ、と声を洩らす。

「んだよ?」

「あなた、怪我は?」

 どうやら制服の焦げ跡などを見て心配したのだろう。だが、そんなものは無用だ。

「全然してねぇ」

 嘘でしょ。そう言いたげな顔で俺を見ながら、手にあるA4の紙を受け取る。


「──これならいける」

 ココロ先生から受け取った紙には、見慣れない文字が並んでおり、読めなかった。後から聞いた話だが、これは、イグ語と言い、この世界の言語らしい。だが、言葉は発音や意味は日本語と相違はなく、ただ文字だけが違うらしい。

 というわけで、俺は紙をマリアに渡す。その紙に目を落としたマリアは、しばらくしてからそう呟いた。

「いけそうか?」

「うん。これなら、全員で出場して勝てるかも……」

 希望に満ち溢れたような声で、マリアは目を輝かせながらこぼした。

 画して、クラスメイト全員が参加する前期魔術演武祭の準備は整った。あとは、勝つだけ。

 俺はぐっと拳を握りしめ、ぜってぇー勝つ。そう唱えた。


***


 その夜。俺はマリアと一時的に俺たちの部屋となっている222号室のそれぞれのベッドの上にいた。昨日と同じ、俺は転がりマリアは腰をかける。

 正確な時刻は分からないが、夕食を終え風呂も済ませてある。だから、大体ではあるが22時前くらいだろう。

「ねぇ。今日はありがとね」

 あの後もいくつか授業はあった。だが、魔術法規のような特殊なものではなく、イグ語──日本で言うところの国語と数学だ。

 しかし、このお礼の言葉が何に向けられたものかすぐに理解した。

「何の話だよ。俺、お礼言われるようなことしてねぇーぞ」

 無感情にそう言い放つ。目に映るのは、天井だけ。

「私やイグターを見て言ってくれたんでしょ? 本当に嬉しかった」

 確かにそうだ。でも……お礼を言われるような筋合いはない。それに、俺は日本にいた時、スス側の人間だったんだ。雑魚は出なくていい、そう思ってた。でも、今回それを言われる立場になって分かった。

 それがこんな屈辱的で腹立たしく思うなんて。そして、それを言われた人の顔があれほどまでに痛々しいものだったとは。

「関係ねぇーよ」

 瞳を伏せて、俺はそう答える。そして、それよりもと続ける。

「──俺らの部屋を襲った奴は誰だか予想できたか?」

 言ってから悩む。いま言うべきだったか? と。でも、向き合わなければならない問題なんだ。

 そう言い聞かせ、俺は体を起こす。

「うんん、全然……」

「そうか。……俺もだ」

 やはり手がかりはなしか……。


「まぁ、ゆっくりやるしかねぇーかな」

 両腕を頭の上にやる。やらなきゃいけないことは山ほどある。それらを一つずつ倒していくんだ。まずは、魔術、魔法だな。前期魔術演武祭もあるわけだし……。

「ねぇ、良かったの?」

 マリアは唐突にそう訊いてきた。

「何がだ?」

「前期魔術演武祭。カーミヤくん、魔法対戦でしょ?」

 そう。俺が出ることになったのは、魔術演武祭で一番盛り上がると言っても過言ではない魔法対戦なのだ。魔術も魔法もろくに使いこなすことの出来ない俺が出るのはおかしいと思うだろう。しかし、俺は転入生で皆と同じテストを受けておらず、情報がない。唯一あるのは、ススにデュエルで勝ったという事実のみ。だから、クラスメイトは満場一致で俺が魔法対戦に出るように推した。

「仕方ねぇーだろ。決まったんだから」

 そうだけど……。マリアは口の中でもごもごと言う。

「それにしても、どうして今日ススくんに勝てたの?」

 マリアは俯きかけた顔を持ち上げて俺に訊く。

「知らねぇーよ」

 俺だって不思議に思ってる。だって、魔法は当たったんだ。なのに、ダメージを受けてない。

「フフさんの時もそうだった。カーミヤくんは魔法を受けてたはずなのに、ダメージを受けた様子は無かった。それはどうして?」

「分かってたら苦労してなっつーの」

 苦笑を浮かべて答えると、マリアはそっか、と返す。それを聞いてから俺は、ベッドから腰をあげる。

「どうしたの?」

「ちょっとトイレだ」

「あ、ごめん」

 気にしてねぇ、と言わんばかりに手をはためかせ222号室を出る。


 はぁー、意外と会話ねぇーな。女子と話さなかった、という事はない。だが、ここまで長い間一緒にいるということはなかった。

「思ったより疲れるな……」

 独りごちながら、広間に一番近い部屋の向かいにあるトイレへと向かう。にしても、本当にただの強盗だったのか?

 なら得られる利益よりもリスクのが高いだろう。実際、俺らは何も盗られてないわけだ。残っているのは、強盗が入ったという事実のみ。やはり、何かあったのではないか?

 トイレにつくと、そこには赤い人と青い人のマークがあった。迷わず青の方へも入る。

「えっ……」

 思わず声を洩らす。同時に「きゃー」という悲鳴があがった。

 驚きのあまりかその声がそれほど大きくなかったことが不幸中の幸いだろう。

「す、すまん!」

 俺は慌てて背を向けてから早口で紡ぐ。幸い、その女子は手を洗っていたところだがやばいと思った。

「青のマークって男子じゃないのか?」

「はぁ!? な、何言ってるのよ!! 青が女子のマークに決まってるじゃん」

 聞いてねぇーよ……。

「俺らの世界じゃ、青が男子のマークだったんだよ。本当にすまん!」

「は? 何言ってるの!? と、とりあえず出るわよ」

 柔らかい手が俺の背に触れる。そのままグイグイと押され、そのままトイレの前へと出る。

 俺は振り返ってから両手を顔の前で合わせてから、再度謝罪を口にする。緋色の髪と猫目が特徴と言えるだろう。

「で、俺たちの世界ってどういう意味なの?」

「あぁ、俺──」

 別の世界から来たんだ、と言いかけて口をつぐむ。これは、言ってもいいことなのか?

 それとも言わない方がいい事なのか?

 紹介される時もそれが言われなかった。だから俺も敢えて言わなかった。なら、ここでも言うべきじゃないんじゃ……。

 そう思った瞬間──パリン、と何かが割れる音がした。

「何!?」

 戸惑いを隠せないその女子とは対照的には、俺はそれが何なのか予測できた。そして、その音の発信源までも予測出来ていた。

 嘘だろ!?

 それでも俺はそれを信じたくなかった。ゆえに、頭で考えるより先に足が動いていた。

 思い違いであってくれ……。そう願う一心で俺は、昨日襲撃された元俺とマリアの部屋に向かった。

「ちょ、ちょっと! どこ行くのよ!!」

 女子の声が微かだが耳に届く。だが、俺の足は止まらない。大広間へと繋がるドアを開け、そのまま走って大広間を抜け、100号室へと繋がるドアを蹴破るようにして開ける。

 瞬間、目に飛び込ん出来たのは、黄色いテープで封鎖された100号室だった。

 本当にフフは知り合いに連絡を取ってくれたんだ……。だが、そう思ったのも一瞬。部屋の中から物音がした。

「誰だ!」

 声を張り上げて、真っ暗な部屋の中へと目をやる。

「チッ」

 中から舌打ちをする音が聞こえた。

 やはり誰かいる!

「ねぇ、何なのよ!」

 その時、後ろから先ほどの女子の声が聞こえた。今それどころじゃねぇーって……。

 ドサッ。直後、草の生える地面に足がつく音がした。

 ──逃げられる!

 咄嗟にテープで封鎖された部屋に入り込む。が、一足遅く犯人の足取りを追うことは出来なかった。

 宵闇に溶け込み、目を凝らしてもどこにいるのか分からなかったのだ。

「くっそ!」

 声量は極めて小さい。だが、渾身の怒りを込めて吐き捨てた。

 その時だ。部屋の電気が付いた。

「何だったの?」

 俺の真後ろに華奢ではあるが、強い意志のある緋色の瞳の女子が立っていた。

「何でもねぇ」

 俺はその女子から視線を外し、部屋の外へと向かおうとした。

 ──ん?

 俺のベッドの下辺りに、小さな布の切れ端があるのが目に入った。

 あんなものあったっけ?

「悪い、先出といてくれ」

 トイレから一緒の女にそう言い、部屋から出す。それをしっかりと見送ってから、その何かが落ちている方へと向かう。

 やはり何かがあった。黒い布の切れ端で、一見するとゴミのように見える。だがそれは、昨日には無かったものである。

 俺はそれを拾ってからポケットに押し込み、部屋を出た。


「何だったの?」

「さぁな。でも、誰かいた」

 そう言い俺は、その女子に向かった。

「俺はカーミヤだ。さっきは本当に悪かった!」

 早くこいつと別れたい。そして、さっき拾った布を確認したい。

「な、何よ……。急に」

 女子は驚きからか、目を丸くしてポツリと言う。

 そんなことはどちらでもいい。早く……。早く……。

「べ、別にいいわ。次から気をつけてね」

 悪びれたようにこくん、と頷く。すると、女子は嬉しそうに笑い、手を差し伸べてきた。

「私はナナニス・ベール。困ったこととか、分からないことがあったら聞くのよ」

「おう。ありがとう、ナナニスさん」

 ここは誠意を見せてっと……。

「じゃあ、俺は──」

 そう言って100号室の前にあるトイレに向かう。今度は間違えずに赤いマークの方へと入る。

「私は先に戻ってるからねー」

「おう」

 急いでいるを表現するために、俺は小走りでトイレの中へと入っていった。


***


 男子便の中は日本のそれとあまり違わなかった。小便器があり、その向かいに幾つかの個室便所がある。

 俺は迷わず個室便所の一つに入り、鍵をかける。

 それからポケットの中に入れた布を取り出す。何度見ても黒い布だ。

「手がかりにはならねぇーかな……」

 小さく零し、それを裏返した瞬間──その考えは変わった。

 黒い布の端に刺繍があったのだ。それはあまりに不細工で何を象っているか分かりにくいが、恐らく魔法の杖と、鋭い目を持つ何かだ。

 しかし、その何かはわからない。でも──

「ようやくだ。ようやく……手がかりが手に入った」

 俺は再度ポケットに犯人への手がかりになるその黒い布を入れる。それから、いかにもトイレをしていたことを装う為に水を流す。ゴォォー、という轟音と共に便器の中に引き込まれる水を一瞥してからトイレを出る。


 とりあえず、これらが何か聞いてみねぇーとな。

 そう心に決めて、俺は222号室へと歩を進めた。

いかがでしたか?

いちおう新しい証拠を持ち出しつつ、前期魔術演武祭も始動していくというルートに進んでいます。

頑張ってます!笑


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