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とにかく変形

 野生動物ってすごいね。結構な高度から落ちたのに、スタッと華麗に着地してくれたよ。まあ角をパラシュート状に変形させて落下速度を多少なり遅くはしてたけどさ。

 そのパラシュート変化で分かったことなんだけど、角の変形はそれこそ紙粘土のごとく自由自在なんだけど、その大きさというか体積は元々の角の大きさ以上にはならないみたいだ。実に小さいパラシュートだった。


 つまり高さ15cm、直径5cmの円錐の体積内でやりくりしなければいけない訳だ。アルミラージさんが成長すると角も大きくなるのかしら?


 しかしあれだな。アルミラージってちょっと長いよな。よし、俺が素晴らしい名前をつけてあげよう。伝える手段がないから俺の中でだけの名前だけどさ。

 アルみん、っていうのはどうだろう? うーん、巨人に襲われそうだから止めとくか。この世界なら本当に居そうだし。じゃあアルミーにしよう! アルミニウムって軽くて白っぽくて固いからピッタリじゃないか……俺に。いやでも俺には名前なんて必要無いし、譲ってあげるよ。


 よろしくな、アルミー。


「みっ」


 返事……しただと? もしかして俺の声が聞こえているのか、アルミー!?


「……」


 アルミー!!!


 ガサッ、と草をかき分けてアルミー同種のウサギさん、アルミラージが現れた。お前じゃねーよ!!

 なんだよー。俺の声に反応したんじゃなくて、近くに何かいたからってだけかよー。なんだよー、ウサギ同士で仲良く挨拶なんかしちゃってさー。どーせ俺なんか、これから一生独り言ですよー。


「みー!」

「みぃ」

「みみーー!!」


 挨拶だと思ったら、威嚇だった。

 どうやら敵意を向けられているらしい。いや見た目には全然そんな風には見えない、ただの可愛いウサギさんだけど、まあ雰囲気的にね。たぶん飛ばされて別のアルミラージの縄張りに入ってしまったんだろう。

 ごめんねアルミラージ。すぐに出ていくから。


「み!」


 野生のアルミラージが現れた。アルミーの攻撃。つのでつく。

 ……ねえ、なんで攻撃してるの? 悪いのは俺達の方なんだぞ? これが縄張り争いというヤツか。野生は厳しいね。


 アルミーとアルミラージの角が衝突した。まるで侍のつばぜり合いのようだ。本体がフワフワモコモコだから迫力とかは無いが。

 ……仕方ない。アルミーが引かない以上、俺には戦うという選択肢しかない。だって普通のウサギ同士の争いならともかく、こいつら一撃必殺の武器持ってんだもん。わざと負けようものなら、追い出されるどころかグサッと逝っちゃいそうだ。


 悪く思うな。恨むなら、アルミーを恨め。変形!


 ぐにゃっと曲がって角の先端をアルミラージの頭に突き刺した。うっ、嫌な感触だ。

 短い悲鳴を上げてアルミラージが倒れる。くそ、あのイノシシが俺達を吹っ飛ばしたばかりに、こんな悲しい犠牲が! 許さないぞイノシシ!! そうだ、全部イノシシが悪い!!


 あれ? アルミー? どうしてヨダレを垂らしながらアルミラージの死体を見てるの? 君たち仲間だよね? 厳しい自然の掟で仕方なく戦うことになってしまったけど、君たち同族だよ? 見た目もまったく同じ、カワイイ森のなかまあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?







   Δ



 地球の動物では角が生えてる生き物は草食だって聞いていたのに、アルミーの角は身を守る為にものではなく、捕食のために獲物にロックオンして仕留めるための物だったみたいだ。。でも良く考えれば種族が魔物だもんね。今の食事シーンはまさに悪魔の所業だったよ。

 ……外見からは予想できないくらい狂暴な生物だったみたいだ。


 ところでふと気づいたんだけど、微妙にアルミーの毛がツヤツヤになってないか? 心なしか、一皮むけたおとこの顔になっているような。そもそもコイツってオスなのか?


 とにかく鑑定!

 あ、とにかくって言っちゃった。違うよ、俺じゃないよ。アルミーを鑑定するんだよ。


-----

 

アルミラージ(0歳) LV1⇒2

 種族 魔物


 体力 130⇒143

 魔力  60⇒66

 攻撃 170⇒187

 防御  80⇒88

 速度 720⇒792

 知能  50


スキル

 逃走 ニードルスピア スタンピング

-----


 おおおおおおお! レベル上がってる! ステータスも知能以外は軒並み上がってるぅ!! ……なぜ上がっていない知能っ。できれば上がって欲しかった。これ以上アホな突撃をされてはたまったもんじゃない。

 そうだ! 俺のレベルも上がってるんじゃないか? 喧嘩を吹っかけたのはアルミーだけど、実際にぶつかり合ってトドメを刺したのは俺なんだし。


 鑑定!!


-----

 ツノ LV1⇒3


  鋭さ 500⇒605

  固さ 200⇒242

 美しさ  80⇒ 97

 優しさ   5⇒  4

-----


 やった!! すげぇ、レベルが一気に2も上がってる! 

 ステータスも全部上がってて、優しさも……下がってんじゃねーかっ!!? ビックリする位そっと下げてんじゃねーよ!! 文字通り、上げて落としやがった! っていうかなんでだよ! 喧嘩売ったのも共食いしたのもアルミーじゃん!! そりゃ、トドメ刺したのは俺だけど、それは正当防衛じゃね!?   えー? アルミーに優しさの項目が無い分、全部こっちに来んのー? 生きるのに全く必要ないステータスだけど、気分的にヤダなぁ……。



 とにかくだ、例外はあるとしても敵を倒せば強くなっていけるみたいだな。まだ確証はないけど、見る限りではレベルが1上がればステータスが1割増しになるみたいだ。うーむ、生まれた瞬間のステータスに左右されるとは、厳しい世界だ。これ、アリなんかだとレベル999とかにしても弱いままなんだろうな。ということはアルミーも、頑張ったところで限界があるのかもしれない。

 いや、テンプレならレベルを上げていく内に進化する可能性もある。よぉし、やってやる。俺がお前を世界最強のウサギに育ててやるからな、アルミー!! そうすれば俺の命も安泰だし。


 目標は「獅子は兎を狩るのにも全力を出す」とかキメ顔で言ってるライオンを返り討ちにすることだ! ウサギなめんな!!


 行こう、アルミー!! ガンガン魔物を倒して、それこそドラゴンだってやっつけられるくらい強くなろうぜ!

 え? 寝るの? 寝ちゃうの? え? 今盛り上がってる所じゃん? これからだ、ってトコじゃん?




 あ、寝た。

 

 むむむ、本体アルミーが動かないと、途端に退屈になってしまうんだよな。なんといっても、俺は自力じゃ動けないもの。


 うねうね。


 やることが無いから変形して遊んでみた、もとい訓練してみた。いざという時にうまく変形できないなんて事になったら大変だからね。このスキルだけが頼りなんだ。特にMP的なものを消費するわけでもなさそうだし、ガンガン練習して手足のように動かせるようになりたい。あ、今の俺にとっては手足みたいなものか。


 ピーン!


 来たよ。ひらめいちゃったよ。手足のように動かすことが目標のこの角を、手足の代わりに使えばいいんじゃないか。そうすれば俺の意思で移動することができる。


 思い立ったが吉日と、どこかの誰かが言っていたはずだ。よし行くぞ、変形合体・TU☆NO!!

 ぐにゃりと歪んだ俺の体(角)を薄く伸ばして、起こさないようにゆっくりとアルミーの体の下へと滑り込む。そしてそれを支える4つの足を作ってやれば、角のベッドの出来上がりだ。

 そしてこのベッドの足は……動く。


 カサカサカサカサカサ……。


 ふははははは!! やったぞ! ついに自分の足で歩くことができた!! たとえ歩幅が3センチでも、疲れしらずのこのつの、どこまでだって歩いて行ける!!

 さあ行こうかアルミー。寝ている間にレべリングだ。起きた時にどんな反応が返ってくるのか、今から楽しみだぜ!


 カサカサカサカサカサカサカサ…………

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