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とにかく生存

 なんだ、そのスキルは! なんなんだよ、それはぁ!!

 復活? ふざけんなよ! どれだけ苦労して倒したと思ってる!? どれだけギリギリの中で、奇跡を掴み取ったと思ってるんだ!! それを、もう一回やれって言うのかよ!


 いや、もう一回じゃない。

 ガードゴブリンだと? 明らかに側近めいた名前だし、この村に向かっていた軍団の中にも組み込まれていたはずだ。奇襲で殺していったからウォーリアもウィザードもその力を発揮することなく、そうと気づかない内に倒してしまっていたけどガードゴブリンとやらがいたのなら話は別だ。


 殺して、そこから復活したゴブリンなんて、1匹もいなかった。

 つまり、この群れにいたガードゴブリンの「復活」は、全てクイーンに簒奪されていたということだ。奪われていたから、誰も復活できなかったんだ。


 ガードゴブリンは何匹いた? これがただのゴブリンなら、1回や2回復活した所で大して怖くもない。雑魚が持っていても価値の無いスキル。なら、ガードゴブリンというのは希少な種ということも無いだろう。10匹以上してもおかしくはない。

 1回使えば消滅するスキルだ。もし10匹いたのなら、クイーンはあと10回復活できるということになる。20匹いれば、20回。


 ひどい。ひどすぎる……。

 もう1回倒すことだって不可能だ。アルミーは起きる気配すらない。よしんば起きたとしても、もう動く力なんて残っていない。なのに、あと何回奇跡が起これば俺達は助かるって言うんだ。

 それでもオレは死にたくない。誰に馬鹿にされたって、どんなに無様だって、オレはもう死にたくないんだ。死にたくない。死にたくないっ。死にたく、ないっ!! ……けど。



 無理だ。不可能だ。

 足掻いてどうなるものじゃない。願って叶うものじゃない。人が歩いて月に行けないように、息を止めれば死ぬように、地面が無ければ立てないように、何がどう転んでも物理的にありえない「不可能」。


 オレは、クイーンゴブリンには、勝てない。



 それでも……それでもオレは死にたくないんだっ!!!


「ゴッブウウウウウウウウウウウウウ!!!」


 --簒奪スキル 砕撃(ウォーリアゴブリン)--

 あああああ! 角シールドッ!!











 あ










 


 終わった。

 終わってしまった。


 叩き込まれた瓦礫の隙間から、トドメを刺そうとクイーンが歩いてくる姿が見える。


 アルミーがなんの抵抗も回避もできない状態では、クイーンの一撃を抑えきれる訳がなかった。盾は砕け、アルミーの体は辛うじて命はあるものの、吹き飛ばされて半ば地面に埋まってしまっている。それでもアルミーの体は眠ったままピクリとも動かない。

 そして砕かれたオレもまた、薄れていく意識を繋ぎ止めるのが精一杯で、もはや抵抗らしい抵抗をする余力も無かった。


 あとできることといえば、オレ達の命を刈り取る一撃が叩き込まれるのを、この目で見届けることくらいか。


 ズシンズシンと響く足音。

 すまない女神様。ふざけた転生先ではあったが、せっかくもらった新しい命は、たったひと月ほどで終わってしまいそうだ。次もまた会えるのなら、文句と、そして心からの感謝を聞いてほしい。

 すまないアルミー。最初は不満しか無かったけど、大変なことばかりで、なんて頭の悪いケモノなんだと思っていたけど、お前のことは何だかんだで結構好きだったよ。


 ドゴォンッドゴォンッと足音が大きくなった。

 ……ちょっと待て。近づいてきて音が大きくなった感じじゃないぞ? もう根本的に音が違う。


「ゴ、ゴブゥッ!?」


 見るとクイーンゴブリンが狼狽えていた。え? なんで?

 最後の力を振り絞って角を動かし、アルミーにかぶっている土の中からかおを出す。そしてクイーンほ視線を追ってみると……


 なんじゃありゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!?


『ゴッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア--------!!!!』


 ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?

 デカい岩山がこっちに向かって突進してきてるぅぅ!!? 一歩進むごとに地震みたいに地面が揺れるんですけど、ナニアレ!!? なんか叫んでるんだけど、まさかアレ生き物なの!?


「ゴブウウウウウッ!!」

 --簒奪スキル メテオ(エンシェントゴブリン)--


 ふぁ!? そんな強そうなゴブリンまで配下にいたの!? ……いたっけ? ああ、魔法スキルを全部むしり取られたのか。響きだけならクイーンにも勝てそうなゴブリンだけど、勝てなかったから配下になったんだよな。それとも王のカリスマにひれ伏したのか。倒しておいてくれよ、エンシェントゴブリンさん。


 魔法の名前から想像できた通り、どこからともなく上空に隕石が現れて動く岩山に向かって落下し始める。たぶんあの隕石は魔力とかそういう不思議パワーで作られたんだろうな。魔法を使うたびに宇宙から岩を補給してるとは思えないし。

 しかし凄い魔法だ。本当に隕石を呼び出しちゃったよ。アルミーがウサギだからって、相当手を抜いてくれていたんだな。それとも大規模過ぎてアルミーの速度では避けられるから使わなかったのか?


 でも、これを喰らえば岩山だって一撃粉砕だな。結局なんだったのか。くそ、俺に余力があれば、今の隙に逃げられたかもしれないのに。


『ゴッッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!』


 岩山が吼える。そして岩山と隕石が衝突した。


 おっ……ほ!? 隕石が泥ダンゴか何かのように砕け散った!? 砕けた破片が周辺の地面を粉砕して燃え上がらせ、絨毯爆撃みたいになってるから威力は見た目通りだったと思うんだが? どんだけ固いんだ、あの岩山。


 隕石の炎が森に燃え移って、岩山の全容が照らし出される。



 ド、ドラゴン?

 岩みたいにゴツゴツとした重厚な甲殻のせいで一見すれば岩にしか見えないけど、その正面には異様に割けた大きな口と、大槌のような頭。スコップに似た巨大なアゴがある。目は……小さすぎるのか判別できない。どこだろ。

 羽は無いけど、間違いなくドラゴンだよな。陸上型か?


 しかしこれ、体長何メートルあるんだ? ちょっと尻尾が見えないんですけど? コイツに家をプレゼントしようと思ったら、東京ドームじゃ足りないぞ? 何個分とかいうありきたりな例えをすることになりそうだ。


「ゴブッゴブウウウウ!!」

 --簒奪スキル コキュートス(エンシェントゴブリン)--

 --簒奪スキル グラウンド・オーバー(エンシェントゴブリン)--

 --簒奪スキル エクストリーム・エア(エンシェントゴブリン)--


 クイーンが次々と魔法を放つが、子供が投げる小石ほども効いていない。その歩みはまるで揺るがない。


「ゴブゥ--ッ」

「ゴッバアアアァァァッ--」


 巨大なドラゴンが、そのスコップのようなアゴで地面を削り取り、大地ごとクイーンゴブリンに食らい付いた。

 遥か上に持ち上げられた先で、クイーンの体が巨岩を並べただけのような牙に噛み潰される。一瞬遅れて青い光を放って復活するが、咀嚼と共に再度死んだ。また光るが、そこから逃れない限りクイーンの死はすぐに訪れる。

 そしておよそ10数回の光を放った後、クイーンの抵抗が無くなったのかドラゴンはゴクリと喉を動かしてソレを飲み込んだ。


「み……?」


 かすかに聞こえた声に、慌てて角を変形させてアルミーの口をふさいだ。

 絶対に鳴くな、アルミー! 気づかれたら終わりだ。今度こそ本当に終わりだ。土に埋もれていて良かった。アイツから見えなくて本当に良かった……!


 さすがにあの巨体でアルミーのか細い声を聞きとることはできなかったのか、ドラゴンは満足げに森の奥へと帰って行った。

 あの方角は、アルミーの巣があった方角。そうか、オレ達が捨ててきたゴブリンの死体を辿って食べてる内にここまで来たのか。はは、何が幸いするか分からないもんだな。



 クイーンは死んだ。食われた。オレ達は助かったんだ。

 未だに信じられない。あんな絶望的な状況から生き残れたことも、あの無敵にも思えたクイーンゴブリンが呆気なく食われてしまったことも、あんな常軌を逸した怪物がこの世にいたことも。



 アルミー。オレ達はウサギじゃなくて、カエルだったみたいだ。井の中の蛙とはよく言ったもんだよ。大きな大きな世界の、大きな山の中の、ほんのわずかな森で生き抜いた程度でなにを誇っていたのやら。


 自分は強いと思ってたよ。女神に転生させられ、チート能力を貰ったオレは、今はちょっと弱めでも頑張ればいつかは世界最強になれるものだと信じて疑ってなかった。

 バカめ。こんな変形できる程度のカルシウムごときが、あの「力」を実体化させたような存在と、比較対象にすらなるもんか。


 世界は、広いな。オレ達は今、やっと井戸から出られたのか。


 そんなオレ達にも、誇れることはある。運は、いい方だよ。こうして命があるんだからな。


「み」


 アルミーがもぞもぞと動いて地面から這い出る。が、そこまでが限界だったのか、ペタリと地面にへたり込んでしまった。やれやれ、動けないなら地面の中にいた方が安全だったろうに。オレはしばらく動けそうにないんだぞ?

 とりあえず、角の破片は回収した。それでもまるで動ける気がしない。精も根も尽き果てた感じだ。


 なんだか周りが騒がしい。ああ、ダメだ、頭が働かない。アルミーもやっぱり眠いのか。うん、おやすみ……

なんかラノベだったらちょうど一巻が終わりそうな雰囲気になった。

まさかゴブリン編がこんな盛り上がりをみせるとはっ。当初の予定ではもっとサクッと終わるはずだったんだが。

もっと冒頭を掘り下げて、ここで12万文字くらいにしておけばよかったなぁ。一応1冊分くらいで終わる予定だったんだけど、あと5、6万文字で書ききれるかな?

もうちょっとだけ続くんじゃよ。

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