第3話 VS都市伝説編 第二夜『見ている…』
こんにちは、こんばんは!
勇者あいだ、活動再会しますよー。結構長いこと掛かってしまった。
今回はこの都市伝説編を一挙公開いたします~。
ギルティ隊本署
東京湾港区台場…『世界防衛機構』極東本部近くに置く建物。
今年初めて、世界防衛機構と世界的な大企業、『浅倉』の全面的な協力により、警察組織内に密かに設けた特殊事件捜査部隊…通称『ギルティ隊』の本署でもある。
特殊事件…警察や世界防衛機構が手におえない難解な事件…例えるなら幽霊や妖怪による『怪事件』を捜査し解決するのが目的の部隊。近年頻繁に起きる怪事件を、警察本部から世界防衛機構、更には一般の専門機関からの協力も得て、怪事件の捜査を行う。
相田亮太の居る事務所の木野も、この部隊の設立に大きく貢献した人間の一人であり、ギルティ隊の面々とは以前からの交流がある。ギルティ隊設立前は、警察が手におえない怪事件には木野に相談していたのだ。
しかし、公的にはギルティ隊という部隊は秘密にされてごく上層部の人間にしか彼らの情報は降りてこない。この港区台場の本署も世界防衛機構が所有する物と言われている。
木野は前回、ギルティ隊からの首無しライダーの事件依頼の報告と謎の虫型ロボット、『サイコバグ』についての関連を調べる為、しばらくギルティ隊に協力していた。
「……ふむ、それが防衛機構からの報告かいの?宮子ちゃん」
署長室で、ギルティ隊署長の『佐倉宮子』が木野に今回のサイコバグの事件の報告書を見せる。
「ええ、今回の捜査で解ったのはそこまでです」
「…北極に何があるというのじゃ?」
「後は世界防衛機構の報告待ちですね…何せ、私達でもこの件は深入りできない問題ですので…」
今回のサイコバグに関しては、あの首無しライダー事件の後は途中までギルティ隊の調査チームと木野とで調査を行っていたが、後のことを世界防衛機構に委託した…
首無しライダーと融合したサイコバグ…この二つに何か接点があるのではないかと睨んだ木野だったが、後に佐倉宮子の息子でもあり吸血鬼事件でも共に共闘した、魔術師であり部隊の潜入捜査員の雪菜による事後調査の結果得られた情報だ。彼は現在も現代妖怪の事件を担当している。
「ご隠居さん、そろそろ事務所に戻られるのですか?」
「うむ、あっちの仕事依頼はしばらく、ギルティ隊から送ってもらったのばかりじゃからの」
「すいません、そっちの新人さん…相田君かしら?その子ばかりに無理をさせて…」
「いや、奴にはいい経験になるじゃろうて、逆にすまんと思うてるのはこちらじゃよ」
「いえいえ、何時も助けられてるような感じですわ。今、ギルティ隊長も無理はできないし、息子だけに頼れませんから……あ、そうだ…ご隠居さんに一人、頼みたい人物がいるんですが…」
…
……
………
「おりゃぁぁーーーー!!」
バシュッ!
『ぅお!?』
「へっ、朱雀!焼き尽くせぇーーー!!」
振り下ろされた剣が人の顔をした犬を胴体と半分に断ち割った。そしてその後朱雀の札にライターで火をつけてそいつに投げつけた。
ドォーーーン!!
『!!!』
真っ二つになった人面犬が火達磨になり地面に落ちた。そして、しばらく青い炎となって燃え尽きた。
爺さんが居ない間にギルティ隊から定期的に来る依頼、これで何回目だ…突然、ギルティ隊からの電話が来ると思ったら、妖怪退治の依頼を何度か送ってくる。
今倒した人面犬もそうだ……
「もしもーし、ギルティ隊の人っすか?」
『はい、その調子ですと依頼を達成されたみたいですね?』
「ああ…事後処理頼むわ、えっと…場所は」
『把握しております…』
電話の向こうでとんでもない事務的な答えをするねーちゃんにイラっとする時が良くあるが…まあ気にしないでおくか、何度かで慣れた。
それにしても、爺さんは何処ほっつき歩いてんだ。
勇者あいだ
第3話 VS都市伝説編 第二夜『見ている…』
…
……
そして、事務所に帰宅した後…しばらくして…
「おせぇ…」
首無しライダーの事件以来、爺さんが変にしかめっ面をして一週間ほど事務所を空けるって言った後、どっか行っちまってほぼ三週間も経っちまってる。その間にも事務所にはギルティ隊から定期的に仕事の依頼がやってくる。首無しライダーの事も相まって、断る事もできずにやっているけど、一向にじじぃが戻ってこない。
あの、小さな虫ロボットの事なのか、首無しライダーの事か…とにかく、じいさんはそのどっちかを聞きに行ったに違いない。
何だったんだ?あの虫ロボ…
あの虫ロボが首無しライダーと合体した…素人目でもあんなのありえねぇって…しかもあんなぞろぞろと現れて、どっかに飛び去って行きやがった。
どこに行こうってんだろう、あの虫ロボット…宇宙人の差し金か何かか?
「あむ…」
因みに今俺は昼飯中だ…今日は豪華に、フライドチキンだ。さすが有名店であって、ここのチキンは美味いぜ。
ここの仕事をするようになって、かなり俺もこう言う美味いものが食えるようになった。ギルティ隊から来る依頼の収入は割りといい、首無しライダーの後…爺さんが居ない内に来る依頼もまた、『都市伝説系』の珍妙な物が多いが、割と弱い敵でも収入が20万以上ある。今回も人面犬だったり、その前はてけてけだったり、口裂け女だったりと現代の妖怪みたいなのが多い…何故か、そういうのが流行っていた時期のが多いのが気になる。
てけてけや口裂け…それに冒頭の人面犬の話はまた日を改めて、短く話すことにしようと思うが…まずは…
「帰ったぞ~…」
シュタ!
「いぃぃーーー!!」
爺さんが入ってきた事務所の扉の角に刃札を投げ、爺さんのはげ頭に当たりそうになる。
「あ、あぶないでは…」
ゴゴゴゴゴゴ……
「じぃじぃぃーーー!!」
三週間分に溜まった怒りを、火種に朱雀の札を取りだすと…爺さんに向けようとする。
「ま、待て…落ち着け、落ち着いて話せば解…」
「わかるかぁ!くそじじぃーーーーー!!」
ドォォーーーーーーン!
30分後
「それで、あの虫ロボットの事を聞きに…三週間もギルティ隊にいたと?」
「その間の対応等を含めて色々…すまんかった…」
煤で真っ黒になった爺さんが俺に謝罪をする。俺はチキンを口にしながら爺さんが聞いた事をとりあえず洗いざらい聞いてみた。
「うむ、あの時首無しライダーとの戦いで乱入をした虫型のロボットは…『サイコバグ』…と言ってのぉ。そいつらは世界各地に現れては消えるというわけの解らん連中でな、その正体や目的は一切解っていないらしいのじゃ。
わしは、そいつ等が介入したこの事件について、色々ギルティ隊と共に調査していたのじゃが、北極の方向に向かったと言う事を最後に消息は途絶えてしまったのじゃ」
「サイコ…バグ?」
名前からして、謎めいている妖しい奴等だな……
「ギルティ隊の調査では、サイコバグの能力は、外見は虫型ロボットじゃが…通常のメカとは違い…他の生物や無機物等に寄生して、自分の意のままに操る能力があるらしい」
「まじか…じゃあ、首無しライダーと融合したのも頷けるわ」
寄生…っていうか、あいつがそのまま首無しライダーに合体したとしか言いようの無い感じであったが…
「いいや…まさか、霊体との融合もしてしまうとは思いもよらなかった。じゃが、融合により実体を持った首無しライダーはソードランチャーでも十分倒せたじゃろう」
「ああ…って、ここまで聞いたまでは良いが、さっぱり解らん」
「解らん、これが解らんことだらけなのじゃ…三週間ずっと調査と研究をし続けたのに、全然じゃ」
最後にギルティ隊の回答としては、『首無しライダーは別の何者かによる差し金であり、サイコバグは二次的に発生し、偶然首無しライダーと融合をした。後サイコバグ郡は、北極にて消息を絶つ…後の調査は世界防衛機構第12研究部隊に委託する』だそうだ…
「解らない事ばかりで、防衛軍に任せて一件落着か…後味わりぃな」
「納得したくないだろうが、仕方ないぞ…わし等は首無しライダーを差し向けた輩を調査せよとの事じゃ」
「そいや、別の誰かが首無しライダーを送ってるって言ってたな…」
「うむ、それに関して言えば、心当たりにあたったが、そいつ等は既に潜伏先から消えていた」
「何だよ、その心当たりって…」
「妖怪の酋長…『ぬらりひょん』名前は聞いたことあるじゃろう?」
「……いいや、って…逃がしたのかよ、そいつだって解ってて」
「まあのぉ、随分と探したが奴等もサイコバグ同様に、雲隠れしているのじゃ。まあ、何れ決着は付けるがのぉ」
「なんだよ、ずいぶんと因縁めいてるじゃねえか」
「奴とはずいぶんと長い付き合いでの……」
「じゃあ、今までギルティ隊が送ってきた依頼の妖怪も、そいつが送り込んでるってか?」
人面犬、てけてけ、口裂け等ギルティ隊から来る依頼の数々もそのぬらりひょんが送ってくる奴らだってことか。
「十中八九そうじゃな、とはいえぬらりひょん自体は黒幕で、実行犯に当たる別の奴が亡霊を利用して怪談伝説にある、現代妖怪を再現しておるじゃろう。カラクリはさっぱりじゃが、現実に現代妖怪が現れるとしたら、その可能性は高い」
爺さんは、現代妖怪の空想の産物と言う持論はまげないようだが、俺はあいつ等が形を成しているのを見ているわけだ。首無しライダーにしても、それっぽい亡霊がそこら辺わんさといるなら…それはそれで嫌な話だ。
「この問題もあるが、この事件中に…またサイコバグがまた現れるやもしれん…」
「北極に向かって飛んでったって言ってたじゃねぇか」
「奴らは基本的に神出鬼没、北極に向かったのもその全てじゃないかもしれん…首無しライダーと融合したのなら、現代妖怪を狙って現れるかもしれんの」
ぬらりひょんってのが操る現代妖怪とそれと融合する神出鬼没のサイコバグか…
「で、これからどうするっす?」
「ほぼ、一般からの依頼を無視してきたからのぉ…ポストにあるはがきの依頼をかたづけなくてはな」
「誰のせいだ誰の……依頼という依頼って、これしかないからなあ」
ポストには、たくさん依頼が溜まっているという訳じゃなく…たった一枚のハガキが入っていただけだった。
「お?あったっす!あったっす!」
「んー…一枚だけか…なんじゃ、場所は意外と近いのぉ。三日前に届いたのじゃないか良く三日も無視できたの」
「あのなぁ、ギルティ隊からとってつけた依頼を、片付けててそれ所じゃなかったんだよ、更にうさんくせぇし…」
内容はこうだ……
“こんにちは、私は学生をしている者です。
最近私の家に奇妙な電話が掛かってくるのです。最初はいたずら電話かと思ったので気にもとめて居なかったのですが…最近になって『私、メリーさん』と名乗るようになったのです。その電話の後から妙な視線を感じるようになって…
それにおかしいのが、学校で不登校の生徒がでてきて、それが私と同じ名前の子ばかりです…私は気になって仕方がありません。もしよろしければ、捜査してくださいお願いします
嶋 朱美”
胡散臭いから、乗る気じゃないんだよなぁ。いたずら電話の可能性があるし…
「無視できないっすよ、怪しいと思ったら即行動っす!」
「そうじゃな、何か不穏な動きがあるのなら…調査せんとなぁ」
「だけどなぁ、で、お前…誰?」
さっきから、俺と爺さんの会話に混じって「っす」と語尾がついてる独特の喋り口調のやけにちっこくて頭が丸坊主のガキが居た。
「あ、申し送れたっす。自分、ギルティ隊から派遣されました…花城ジョーと申しますっす!」
「おお、言い忘れてたのぉ。ギルティ隊がわし等の事務所に研修生として派遣した者じゃ。一応、修行の身での…しばらくの間ここで共に行動をしてもらうぞ」
「おー、佐倉んとこの研修生か?…見た感じは坊さんか?」
「ういっす、自分まだ15なので一人前じゃないんすけど、懸命に役に立つようにがんばるっす。ちなみに僧侶の類じゃなくて格闘家っす!気合を入れるために頭を丸めてるっすよ!」
礼儀正しくお辞儀をする丸坊主…うーん、このつるつる頭が見事に撫で回してやりてぇ。
「毎日の頭の手入れはかかさないっす!」
「そ、そうかよ…で、お前何ができるよ。佐倉で言うすっげぇ魔術とか、でっけぇBRとか」
「ええーっと、先輩達のように凄い事はできないっすよ…拳法とか…うーん、BRはまだ用意されていませんので」
「へぇーっ、見た目と一緒で想像通り…俺ら妖怪や幽霊とかと戦う仕事だぞ、大丈夫なのか?」
「大丈夫っすよ!」
この根拠の無い自身はどっから来るんだろうか…俺も見習いたいもんだな。
「亮太よ、ジョー君を侮ってはいかんぞ。半人前と言っておるが、その腕や身体能力は佐倉君以上の物じゃ。今回の依頼は彼と一緒に行くがよい」
「ほんとかよ…」
「この依頼で、見せてやるっす!ご期待くださいっす!」
ぎゅっと拳を握り締めるジョー…まあ、佐倉もかなり腕力強いし、で、その後輩ときたら、大丈夫ならそれに越した事は無いと思うけど、まあ連れて行ってみっか。
……
…
プルルル…プルル…
カチャ…ピー
『こちらは嶋です、ただいま留守にしています。ピーと言う発信音の後でメッセージをお願いします』
部屋に設置してある電話の子機…留守電メッセージを告げる。既にこのメッセージはこの日で数件かかってきた。
しかし奇妙な事に、その電話のコードは抜かれていた。それだけじゃない、親機やパソコンのインターネット等線も抜いている。家に電話が掛かってくる事はほぼ不可能に近かった。
「ど、どうして…なんでよ…」
彼女は部屋のベッドの近くで蹲っていた。その傍らには半分に折られ、壊された携帯電話が転がっていた。にも拘らず……
ピロリロリ~♪ ピロリロリ~♪
彼女の壊れた携帯電話は、暢気な着信音が響いていた。かかるはずの無い家中の電話が、全て鳴っているのだ。
彼女は耳を塞いでいた…それを聞きたくない、電話機を取らずとも、着信ボタンを押さずともそれは、耳に聞こえてくる。頭に直接、それの声が聞こえてくる。まるで電話を掛けてるような声が……
『ふふ、私…メリーさん。今、あなたの家の前まで来てるの』
「!!」
少女のような……それでも、機械のような無機質な声。もういい加減にしてくれと言いたいくらい、何度も掛けてきたその声に彼女は恐怖した。
近づいてる……ずっと観察してる……そして、今、直ぐ近くまで来ている。一日ずつ掛かってくるその着信は、着実に自分に向かって歩いている事を示していた。
『メリーさん』…20世紀に確かそのような怪談伝説があった事は、この電話が掛かってきておかしく思い、それに詳しい友人から聞いた。その時はオカルト趣味のイタズラかと思った…そう、思いたかった。それも、眼前まで迫る『何か』は間違いなく彼女の精神に確かな恐怖を与えていた。彼女が徐々に迫る『何か』に恐怖していく様を今、その『何か』は人形で遊ぶように楽しんでいるのだろうか…信じたくないが、信じるしかない…その恐怖は本物で、彼女の精神は崩壊寸前まで追い込まれていた。
『私…メリーさん。今…あなたを見てるの』
彼女の頭に…またそれは直接話しかけてくる。ぞくりと、はっきりとした悪寒が彼女の背筋を駆け巡る。彼女は背に、確かな…人の気配を…視線を感じた。
「ひっ!助けて…助けて…」
彼女は幾つの機関にこの事で助けを求めただろう。しかし、どれも…間に合わなかった。この世には神も…仏も…勇者すらも居なかったのだ。
ほぼ諦めにも似ていた、恐怖を振り払い、それの正体を見るために振り返る……しかし、そこには箪笥…机と椅子、見慣れた自分の部屋があった。
「……え?」
確かにそこに、視線を感じた…しかしそこは住み慣れた自分の部屋、何も居ない。自分以外の誰も…転がった自分の壊れてる携帯電話。抜かれた電話のコード…改めて周りを見渡してもそこには何も無いし…他に誰も無い…
「…はぁ、ば…馬鹿みたい」
何もかも自分の被害妄想なのか、オカルト趣味の友達の言った事を真に受けすぎてこんな被害妄想で…今更ながら、自分が情けなくなってきた。
それでも、彼女は恐怖が抜けきって安堵感に包まれながら床にぺたんと腰を下ろす。と、視線は自然と自分の洋服箪笥に向けられた。
…………あなたを見てるの…ずっと……………
気づいた(気づきたくなかった)
そこにいた(見つけたくなかった)
見ていた(誰が?)
見ていた(いつから?)
見ていた(誰を…?)
見ていた(何処から?)
見ていた(……隙間から…)
手が伸びる…どこから? 箪笥の狭い、人の入らないような隙間から…青白い手が伸びる…それは彼女の顔面をがしっと鷲づかみにすると…
引きずりこんだ……
「!!!!!!!!」
声にならない叫びは…誰にも届かない…
…
……
……
「じゃあの、ここで依頼主が来る予定となっておるから」
と、爺さんに言われ…俺と研修生のジョーは爺さんの軽トラで、イタ電の調査依頼をよこしやがった、依頼主を待ち合わせ場所であるバス停で待っていた。
「……来ないなぁ」
「待ち合わせの時間もとっくに過ぎちゃってるっすよ」
10時にこの場所で待ち合わせてもう結構な時間が経つが、もう1時間と数十分経つけどそれらしき奴が来る気配すらない。爺さんは爺さんでなんか調べもんだって言ってどっか行っちまうし…
「あー、めんどくせぇ、連絡先に電話してみろ」
「ういっす!」
ジョーがケータイで連絡をするが…しばらくして、ジョーは首を横に振った。
「それ、依頼してきたやつの携帯番号だろ?なんででねぇんだ?」
「さぁ、それが解れば苦労しないっす」
ドタキャンなんて言うんじゃねぇんだろうな?今更ガセネタで連れてこられたって、冗談じゃねえぞ。爺さんに連絡してみるかな…
『なんじゃと?依頼主が何時まで経ってもこんとな?』
「ああ、待ち合わせ場所まちがえたんじゃねぇのか?」
携帯で爺さんを呼び出して、事情を説明したものの…
『ううむ……一応、向こうとも昨日の内に連絡したのじゃがのぉ』
と首を捻ってしまった。実際見えなかったけど…
「ううむ、じゃわかんねぇよ、どうするよ…そっちには連絡行ってねぇのか?」
『こちらには何の連絡もきてはおらん、仕方が無いのぉ。一度事務所に戻ってくるが良い、わしは、ギルティ隊に聞いてみよう』
これじゃあ、依頼どころじゃ無いな…ここまで出払った意味もないし。俺は携帯を切ってから、ジョーの方を向き直る。
「ジョー、帰るか?」
「待ってくださいっす、あいださん。まだ帰るには早いっすよ」
「そりゃ、どういうこった?」
ジョーが真剣な面持ちでそう言った意味がわかんねぇ。んまあ、警察の特殊部隊の研修生だしその辺の勘とか効くのかな?
「警察の勘とかか?」
「へ?か…勘とまではいかないんすけど…自分、先輩達と違ってそう言った事苦手で…」
「ほー、じゃあ…まだ帰るには早いって、その心は?」
「……ああ~(いがせんぱ…いや違った、ギルティ隊長の指示ってあいださんには言うなっていわれたんすけどね)」
なんか、釈然としない物を感じるんだが…この顔は何かかくしてんな…
「じゃあなにか?勘も何とかってわけでもなくて、ただ当てずっぽか!?」
「い、いやあ…そう言うわけじゃないんすけど…言ってはいけないと、先輩達から」
「ほー…そう言う事か、お前もまさか俺らに内緒の任務とやらで、俺たちの所に潜り込んだんじゃねぇだろうな?」
吸血鬼事件の時の佐倉の事もあるし、爺さんをずっとサイコなんたらってのの調査で三週間も連れ出した事もあるし、都市伝説系列の事件依頼もあれば…ジョーもギルティ隊になんか変な事吹き込まれてんじゃねぇだろうな。
「うう、すんませんっす…」
「話してみな」
「隠すつもりなんてなかったんす…先輩達は、依頼されたこの事件の裏に暗躍してる妖怪の正体を突き止めろと言われたっす」
「ほれみろ!ていうか、妖怪が裏で糸ひいてんなら、今までそっちで依頼してきた妙な都市伝説系の妖怪の依頼と関係あんのか?」
「これは本当に知らないんす…詳細についてはまだ知らされてないんす。とにかく…この依頼について調べてきてくれって言われたんす」
ギルティ隊も回りくどい命令を出しやがる…さすが、佐倉もいいかげんだが、隊自体もいいかげんだな…。
「んで、ギルティ隊はどうしろって?」
「とりあえず、相田さんの下に来る依頼主との話を詳しく知る必要があるっす。でも来ないとなると…」
「おい、まさか…俺のとこに来るって言う、依頼主が来なかった場合の事は知らされていねぇのか?」
ジョーは坊主頭を抱えながら、困った顔をして…ちょっと間を置いて、冷や汗垂らして。
「あは、ははは…」
「はぁ…佐倉に電話いれてみろよ」
『そっかぁ、うーん…どしよ…と言うよりジョー、入って早々ばれるなんて』
「面目ないっす…」
ジョーが自分の携帯で、佐倉に連絡を入れている…。
『ギルティは、ヴァンデッドとの傷を癒してるし…権限は署長持ちだから、戻るのは無理として、まあ聞いて見るよ……』
「おい、替われよ」
ジョーに携帯を借りて…耳に当てる。
「今回も潜入捜査目的でジョーを俺のところに送ったんじゃねぇだろうな」
『人聞きが悪いよ~、ジョーが研修で相田君の事務所に送ったのは本当さ、でも…ジョーにはそれ以外の目的もあってね』
「何だよそれって…」
『それこそが、今回の君に届いた依頼ってわけ』
「おい、前の吸血鬼の時とか、お前らに散々パシられた依頼みたいに、お前らが元々送ってきた依頼じゃねぇだろうな」
『それも違う…ギルティ隊はそこまで、用意周到じゃないよ…でも何度か君に送った依頼に類似点があると言えばそうだね。ジョーが送ってきた今回の依頼の詳細を元に、ギルティ隊で『予測』を立ててね…その予測に基づいて、ジョーと一緒に調査して欲しかったんだ』
「んー、もっと…解りやすく解説してくれるか?」
『うーん…解りやすく言えば、君たちの仕事をスムーズにする為に次の手、次の手を打ってるわけなのさ』
なんか、得意げに言ってるけど…とっても不安要素を拭えないのは何故だろうか?
「次の手ね…じゃあ、今依頼主が来ない事時の対処法とかあるのか?」
『実際、署長に指示を聞かないといけないけど…恐らくは、事件性を考慮に入れて、依頼主の行方を追うって事だよ…』
「次の行動は決まりってわけか……いいぜ、まずどんな事をすればいい?」
事件性か、何だか本当に警察みたいな事をしてるようだぜ。
『まず、依頼主が何処かに行く宛を知ってる人に話を聞くとか…捜査の基本ね』
「了解、なんかお前等に利用されてる感じで、いい感じはしねぇけど…」
『まあ…そう言わないでよ…僕等も、出来る限り協力するからさ。新しい情報が入ったらそっちに連絡するよ。あ、それとジョーをよろしくねぇ~』
「あいよ、解った…」
そう言うと、「じゃあね」っと何とも飄々とした声で電話を切りやがった。
「佐倉先輩はなんといったっす?」
「ああ、お前をよろしくとよ……それと、依頼主を知ってる人を当たれと」
「了解っす、じゃあ…そうしま?」
ジョーが何か言いかけて固まってしまって、ジョーの見ているほうに振り返ると…
「あ?ジョーどしたよ…」
「……あ」
ジョーの目線の先には俺をじっと見ている私服の女の子が立っていた。中々可愛い感じの女の子で、買い物袋を両手に持ってて俺をなんか幽霊を見るような感じの目で見ていた。
およ…この顔、どっかで?
「あーーーーー!!!」
「うわ!びっくりした!」
事態はここから急展開しようとは、俺はその時は全然知らなかった……。
続く
復活第一弾である為、短めに…
怖い話の表現って、どうやるんだろう。
メリーさんの話では、メリーさん的な電話と同時にもう一つの都市伝説の要素が入っています。
それでは次の回で!