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勇者あいだ  作者: カイザ
7/12

第2話 魔王の腕編 最終話『勇者対魔王 決着の日の出』

おはようございます。一週二回連続投稿の後編。

ちょっと時間を起きました。

今回にて魔王の腕編は終了で、来週からまた新シリーズが始まります。


シュタ…


「はぁ…隠し扉から一階下に行けるとはね…上に行けば、間違いなく残りの吸血鬼も出てくるかと思ったら…完全に逃げられたな」

 腕の保管室への隠し扉を発見した佐倉は、もぬけの殻となった室内を見回す。

「彼ら…『死体置き場』もここにあったわけだ…」

 見ると保管室の壁には何かが飛び出したような大きな穴と、血の足跡のようなのが何人分かも続いていた。

「相田君が言っていたヴァンデッドの腕はここだってね?まだ気配はある…早い速度が異常だ…ここで何をしていたんだ」

 佐倉の感覚はヴァンデッドの再生が自分の予想を遥かに超えていることを察知していた。確かにここにあった時は、肩まであったが…もう上半身ぐらい出来上がってるだろう。保管室のようだが、ここで何かを研究していたようなそんな感じでもあった。

「……これは」

 保管室の隅々まで探すと、吸血鬼たちが自分達の主に何をしていたかと言う答えがそこにあった。

ピピピッピピピッ

「はい…佐倉で~す」

 携帯電話を取って耳に当てる。

『目当ての物は見つけたか?』

「ある場所は見つけたけど、行き先は知ってる…意外な物を見つけたから、専門チームを呼んで」

『意外な物?』

「再生のレベルが早い原因だよ…ばらして、その部分を投与してる…」

『了解だ、チームを送る…逃げ先には、私が向かおう』

「ここに来てるの?まだ修復…されてないんでしょ?」

『引き金を引けないわけじゃない…』

カチャ…プープープー

 佐倉の話し相手はそう言い、通信を切った。

「まったく、自分も重症ってのを解ってるのかな…」

 ため息をつきながら、部屋をくまなく探すと、ボタンを押すとそこが開く。

「隠しエレベーター…こっから逃げたな」

 現地に『隊長』が来ている。数ヶ月前のヴァンデッドとの戦いで重症であったが…その傷は癒えてない筈だ。彼の変わりに奴を追い続けて数ヶ月、相田亮太の協力でようやくここまで追い詰めた…


「さて、『決着』の時だ…」


 勇者あいだ

第2話 魔王の腕編 最終話『勇者対魔王 決着の日の出』



隠しエレベーター降り場


「急げ!あの男が時間を稼いでいる内に…主を安全にサイコタワーから脱出させるのだ」

 秘書官が数名の男達を引き連れて、このタワービルからの脱出を図っていた。彼らは大きく巨大な棺おけを台車で押しながら地下トラック駐車場を目指していた。そこから脱出すれば逃走可能なのだ。

 トラック駐車場に通ずるエレベーターの前で止まると、そこでエレベーターを呼び出す。

「あの男め、大口叩きおって…ここまで追い詰められるとは使えない奴だ!だが、このサイコタワーと街の住人と共に心中させてやる…」

 別の場所のコントロールパネルを使って、秘書官はこのタワービル全体を操作した。タワーに自爆装置が設置してあるようだ。

ビーッ

『アクセス拒否、装置が作動しません』

「…自爆装置が…作動しないだと、どう言う事だ」

 しかし、コントロールパネルで自爆装置が作動しなかった。

『おぉぉーーーーーん…うぅぅーーーーーーん…』

「主よ、解っております…もう少しの辛抱ですからね…仕方ない、証拠の消去よりも主を運び出す事を優先させよう…」

 自爆装置を諦め脱出を優先させる事にする。後数分で夜明け、しかも未だに主は復活前…『進化』を誘発する力を移植した主で、現に予想よりも早い復活を見せているが…その進化が信用できるかどうかも解らない。

 ギルティ隊の刺客…佐倉雪菜の潜入や、ルーキー勇者の意外な活躍…奴らのような連中から主を守る為に…あえて、主を滅する為に、別所から送り込まれた御堂を雇ったがそれも金を出しても巻き上げられる始末で、使い物にならない。

 吸血鬼の下っ端も相田と佐倉により殆ど滅され、今ここに居る者達しか生き残っていない。数ヶ月前のギルティ隊との戦いもここまでは追い込まれなかった。

「ですが、あなた様が生きて…そして復活した暁には…」

「…悪いけどそう簡単にはさせないよ…」

「なにっ!?」

「フリーズッ!」

バァンッ!

 秘書が振り返ろうとした時、台車を押していた一人の黒服が氷付けにされて粉砕する。

「ギルティ隊!?キィィッ…」

「ごめんね、牙むいてると美人が台無しだよぉ~…まあ、最初から見れた顔じゃなかったけどね」

 にこりと笑みを浮かべながら佐倉は杖に気を集中させる。

「だが、遅かったな…このエレベーターは防弾だ、氷の魔術でも通さん…貴様が何処まで追おうと…主さえ生きていれば、貴様ら人類など!お前ら、この男を押さえ込め!!」

 その指示と共に、周りの連中が佐倉の周りを取り囲む。その隙に秘書が台車を押してエレベーターに乗り込もうとしていた。

「街の住人をあんなにして…ただで逃がしてやると思うなよ…どこまでも追ってやるさ」

 その笑みが消えて、これまでのこの吸血鬼がして来た事への怒りが佐倉の表情には出ていた。

「それに、『ギルティ隊』は一人じゃない…でしょ?ギルティ隊長…」

バンバンバンッ!

「キッ!?」

 後ろから…エレベーターの内部からの銃撃が佐倉の周りを取り囲んでいた吸血鬼達の頭と心臓を正確に後ろから撃ち抜く。

 そして、全員が灰となって地面に落ちると…エレベーターから出てきた男は、持っていたハンドガンを秘書官に向ける。

「大丈夫なの?まだ傷治ってないのに…」

「……引き金を引くぐらいなら修復されていると言ったろ…この件は私の失態だ、私が始末をしなければ…」

「真面目だね…頼れる人間がいるってのに」

「お前はいい加減だから…信用できない」

 長身の男…隊長は銃を秘書に向けながら佐倉の方を向く。潜入捜査員の佐倉が隊ではどんな人間かは、長い付き合いの彼がよく知っていた。だから尚の事、ヴァンデッドを逃がした自分が追うつもりだったが、傷の静養の為に彼に任せたのだ。

「おのれぇぇ…『ギルティ』ぃーー、貴さ!…ブペッ!」

バァンッ!

「かぁぁ…」

「…だまれ」

バンバンッ!

 口の中を一発撃ってから、胸に二発の銃弾を打ち込むとそのまま灰になって秘書は消滅した。

「…相変わらず容赦ないね」

 ギルティと呼ばれた長身の男は弾が無くなったハンドガンの弾奏を取り出し、別の弾奏に取り替える。

「連中を一人逃がしたら街が飲み込まれる、現にこの街がそうだ…私の失態だよ…」

「気にする事ないよ、地下にいる大勢を救えたから…」

「……ふぅ…」

 ギルティは少し安心したように、ため息をつくと…少し体がぐらつく…

「辛そうだね…肩借りる?」

「それには及ばん…外で『田嶋達』を待機させてる……心配無用だよ、ユキ…」

「あ、あだ名で呼ばないでよ!」

 昔から使われてるあだ名で言われて、顔を真っ赤にさせる。元々、佐倉の母親が彼を呼ぶ時に使うあだ名で、古い付き合いの彼はそれを真似て呼ぶが、本人はあまりそのあだ名で呼んでほしくないのだ。

「……ふん、だが…お陰でヴァンデッドを追い詰められることができた…感謝しよう」

「完全に倒してから言ってよ…まだそこにいるし…」

 親指でそれが入っている棺おけの置かれた台車を指差すと、ギルティはハンドガンを構える。

ガタガタガタ…

 その棺おけは、ハンドガンを向けられた事に反応したのか、がたがたと激しく揺れている。

「そうだな、我が名は『有罪ギルティ』…二つの街の汚染とそこに住む住民の誘拐と殺害…歴史的重犯罪を犯した三大吸血鬼の一人、大吸血鬼ヴァンデッド…貴様を有罪としてこの場に置いて刑を執行する…」

ガチャッ!

 ギルティ隊には、超常現象や怪奇現象を起こし、人的被害を起こした存在に対しての『死刑執行』が許されている。ヴァンデッド程歴史的に長い年月、人を殺し…その血を啜って来た吸血鬼は…言うまでも無く、その場で執行される。

 だが、ギルティが引き金を引こうとした時…


『オォォォーーーーーーーーーーッッ!!』


バリィィーーンッ!!



1F…エレベーターホールに戻る。

「おい、御堂…起きれ!おい!!」

ぺちぺち!

「はぁ…おきねぇ…おりゃ!」

べちん!

 なんか嫌な予感が上からして急いで、うつ伏せで寝ている御堂の頬を叩いて起こそうとするが全く起きないから、思い切り引っぱたいてやる。

「い…いいかげんにしろぉ!貴様、人がせっかく負けを認めてやったというのに、静かに寝かせてもくれんのか!?」

「んな場合じゃねぇよ…ほら、お前の依頼主…相当怒ってんぞ…」

ゴゴゴゴゴゴ…

 御堂が飛び起きて直ぐに、天上を指差して現状を簡単に説明する。これはやっぱりあの気持ち悪い腕が怒ってる振動じゃねぇか?

「ほれ、お前の依頼人だろ…土下座して謝れば許してくれるぞ…」

「何を言う、もはやああなっては…一円も取れないだろう…それにこうなる前に報酬の方は先払いで受け取っている……」

「ドヤ顔で威張ってんじゃねえよ…まずい状況だろこれ…」

「これでは、私も貴様も助からんな…感じぬか?奴め、力もプレッシャーも以前より上がっている…対して我らは霊力の限りを尽くして戦って、満身創痍だ」

 御堂の言うとおり、1日1回が限度の式神を2回使っちまって…体のダメージも相当来ていて、体が痛い。でそんな状況で上から核弾頭が降ってくる勢いだから…

「どーしたもんかな…」

「おい、それで立ち上がってどうするのだ…」

「どうせ助からないってか?…諦めが早いんだな陰陽師は…」

「ふん、愚問だな…元より死に損ないの吸血鬼を退治せよと、依頼があった…その仕事を終わらせる時だ…」

 ぐらつく体だが俺たちは上から降ってくる奴を迎え撃つ為に立ち上がる。そいや、こいつは別の所で、吸血鬼を倒せって事でここに来たんだっけか…

「俺はいいが、お前はどうすんだよ…獲物は俺がぶった切っちまったんだぞ…」

「……書を書く為の筆なら何時でも携行している。ちなみに両手利きだ…」

 習字に使うような小さな筆を両手に持つ御堂。それよりも陰陽師って筆使いだったか?

「そういや、佐倉はどうした?」

「上の奴をどうにかするって言ってたは言ってたが……どうなったかまでは…」

 心配はしてなかったが、さっきなんかと戦った後どっかに消えちまっていたな。無事上に行っただろうか…

「死んだか」

「たぶん…ってぇ!縁起でもねぇ!」

「なら、上の状況をどう説明する…奴の詰めの甘さで死んだか、いい加減な所が出て逃げ出したかのどちらかだろう…」

 やべぇどっちも当てはまりそう、特に後者…

「…で、どする…作戦は?」

「私はもう帰りたいよ…」

「やる気出せよ!」

「うるさい、誰のせいだと……来るぞ!」

ドォォーーーンッ!!

 天上を突き破って何かが俺たちの前に落ちてくる。

バンッ!バンッ!

 地面に大きく地鳴りが起きるほどの足音を立てて、そいつは鎌首をもたげる。

『ぐぅぅ…コォォォーーーーーーーッ!!!』

「なっ!!」

「うわっ!!」

 耳に響く強烈な鳴き声と共に、体には熱風と重圧が一気に圧し掛かってきたような感覚に襲われる。

「何てプレッシャーだ…あの容姿、腕の状態のであった物がここまで再生して、いや…以前と姿が違う!…あの禍々しい姿…吸血鬼ども、奴に何をしおった!?」

 それは、あの気持ち悪い腕ではなくなり、上半身まで元通りになっていたが、原型よりもでかくなり、背中には蝙蝠の翼のようなのが生えている。吸血鬼の顔と言うよりは怪獣の顔っぽくなって…それらしく咆哮を上げる。

 でも下半身が無い…そこまでは再生していないようだ。

『オォォーーーーーーーーーッンッ!』

「既に言語能力すら失っているか…化け物め!」

「なら、ぶっ飛ばす!」

「妖気に当てられて、身動き取れない分際が…どうするというのだ…」

「とにかく、ぶっ飛ばす!!」

 怪獣吸血鬼のプレッシャーに当てられているが、俺は剣を杖にして立ち上がろうとする。だが、奴はそれを見て怒り心頭の様子で…

『くぁぁおぉぉーーーーーーっっ!!!』

ドォォンッ!

「ぐぅぅっ!」

「見ろ、更に怒らせたぞ…」

 また大きく吼えて俺たちに強いプレッシャー付きの熱風を吐きかけてきやがる。剣を盾にして防ぐが吹っ飛ばされる。

『カァァァーーーーーッ!!』

「ぐあぁ…このやろぉ!」

にゅるっ

 吸血怪獣の口から、また気持ちの悪い伸びる蛇のような舌が2本俺たちに伸びてくる、どっからどうみてもあれで、血を吸うっぽく無いか!?

「くいつかれたら…終わりだ…くそうめ!」

「んなろぉ、どーしようもねぇじゃねぇか…」

 二本の舌が俺たちにそれぞれ血を吸い取ろうと俺たち伸びてくる。


ドォォーーーンッ


『おっまたせー!』

 入り口の後ろの壁が突然爆発して何かでかいのが入ってくる。

「ん…なんだ!?」

ダダダダダダダッ!

 吸血怪獣に向けて入ってきたそれは砲撃を食らわせる。何かと思ったら、佐倉のBR『アイスコマンド』だ。両腕を固定式のレーザー砲のような物に換装して背面には巨大な2門のキャノン砲を装備している。

 弾切れで装備を換装したのか…

「さ、佐倉か!?」

「ぐっ!無茶苦茶にも程があるぞ…BRで室内に突っ込んでくるとは」

「だけど助かったぜ、よっしゃ!ぶっ放せ!」

「馬鹿か、この狭さでレーザーなどぶっ放せば黒焦げにされるぞ!」

『そう思うなら二人揃って放れてくれるかなぁ!?』

 スピーカーを通して俺たちにそう言いながら、両腕のレーザーキャノンを俺たち…正確にはその向こうに居る吸血怪獣に向ける。

「やべ!逃げんぞ!」

「お、おう!」

 何とか俺と御堂は、射撃される前にその場所から、離れると同時に…

ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!

 両腕のレーザーキャノンを2つ同時に吸血怪獣に向けて発射する。

「無茶苦茶だぁ!」

『キィィィッ…!?』

 吸血怪獣は連射されるレーザーを翼を広げて飛び回って避け、そして両腕の爪を使って天井に張り付くとヤモリのように壁を伝う。

ドォンッ!ドォン!

 壁を移動する奴を追撃するアイスコマンド。

「嘘、この距離で避ける!?」

 そして、アイスコマンドの射程の死角に入り込むとそのまま外へと向かって飛んで行ってしまった。

「逃がしたっ!早すぎるぜ、あいつ…」

『でも、あと少しで夜明けだ…今更外に出たってあの巨体じゃ隠れる事はできないよ』

 そうだった、奴は体をバラバラにされてあれだけ復活できるほどタフだ、教会出身で弱点っぽい物もない…だけど、唯一効きそうなのが日光だった。

「しかし、あ奴…外へと向かうほど理性を失っているのか…そうでなければ、余程の耐性が着いていると考えなければ…」

「まさか、あいつ日光の中でも生きられるってか?!」

 御堂は更に怖い想像を俺と佐倉にぶつけた。

「奴が復活する原理までは聞いていない。そこまでは私にも秘密にする何かをしていただろうが…ここで、『日の光への耐性』を考えていたのは事実…」

『本当なの?…って、何か和解してるっぽいけど…』

 吸血鬼側について、俺達を殺そうとしていた御堂が俺達にアドバイスをして居る所を見て、佐倉が疑問の声を投げかける。

「…たわけ、私は元々の依頼主の依頼である吸血鬼討伐をしているだけだ、奴らとの契約は既に終わってる」

『変わり身早っ!まあ、でも…やっぱり、誰かの差し金でヴァンデッドを追ってたんだ…』

「依頼主の情報は秘匿だ…話が脱線したが…」

 確かに、こう変わり身の早いのもどうかと思うが…御堂は構わず話を続ける。

「奴が、日の光に耐性が着いたとすると、その様な吸血鬼が街中に放たれてみろ…人間の時代は終わりを告げるぞ!」

「…まじかよ」

『想像する必要は無いよ、ギルティ隊がそれをさせない…もし耐性がついていても、細胞が残らないくらいに焼却するまでさ』

 アイスコマンドを反転させる佐倉、背中のでっかいレーザーキャノン砲はその時の為か。

「よし、そうと決まれば奴をぶっ倒しにいこうぜ!」

『二人とも、アイスコマンドに乗って!』


……

「確かに、乗れとは言ったけど…どっかに掴まってとか、掌に乗ってって意味だったのに、何でコックピットに乗ってんだよ!これ1人コックピットだよ!」

「むぅぅ、軍用BRのコックピットはこんなにも狭いのか…」

「悪かったね!市販と違って重要な機械が詰まってんの!」

「好きで野郎3人ギューギュー詰めに乗ってんじゃねぇよ!」

 アイスコマンドのコックピット内に強引に俺達は乗り込んで、一人乗りコックピットはギューギュー詰めになっていた。

「そんな事言ってる場合か、さっさとBRを出せ!」

「解ってるよ!まったく、さっきまで敵だったのに威張られてもなぁ…」

 佐倉は文句たらたらアイスコマンドを来た穴から引き返していく。

「相田君は自分のBRに乗って!途中で降ろすから」

「わかった、作戦は?」

「一斉射撃で焼却…」

「簡単だな…よし、野郎をブレイバーでぶっ飛ばしてやる!」

 そうと決まれば、早速アイスコマンドのコックピットハッチを開けて外に出る。

「うが、勝手に開けるなって!狭いんだからっ…もちょっとしたら降ろすからさ…」

「んな事してたら、まにあわねぇ!直接ブレイバーにとびの…てぇぇ~~…」

 なんか浮遊感と、視界がどっかに行ってしまう…気付いたらアイスコマンドから投げ出されていた。

べしゃ…


「…佐倉、貴様らの人選ミスではないのか…あれは…」

「言わないでよ、僕も後悔し始めてるんだから……まあ、丁度彼のBRの足元に落下したし何とかなるよ…」



「ってぇ…ん?おお、丁度ブレイバーの足先か」

 BR格納庫のブレイバーの足元落ちた俺は、先に行くアイスコマンドから…スピーカーを使って佐倉が声をかけてくる。

『丁度良く落ちたんだから、後は射出口から飛び出してって』

「わかった!」


 俺はブレイバーの脚をよじ登ってコックピットハッチを開けて中に入る。急いでブレイバーを起動させる。

『ふぁ~なんですかぁ?…何事ですか!?』

 モニター内で寝ぼけたように目を擦るハナコ…

「暇になったからって何寝ぼけてんだ!いいから、外に飛び出すぞ!射出口は、佐倉が動かしてくれたから使えるだろ!?」

『はい~?何が起こってるんですか?!』



……


「な、何だというのだ…これは」

「これ、すごすぎじゃない?」

 外に出たアイスコマンドのコックピット内で佐倉と御堂は、それを見上げていた。

「……ねえ、あれ…御堂のBRのパーツじゃない?」

「何!?…の、のぉぉーーーーっ!?」

 悲痛な叫びを上げる御堂…外で遭遇していた「それ」には明らかにBRパーツらしき金属っぽい部分があり、それが破損した御堂のセイメイMk-5である事を示唆していた。

「悲しむ所が小さいと平和だねぇ…まったく、何をどうしたらどうしてああなったんだか…?」

 佐倉の目の当たりにしたそれ…巨大化した上半身のヴァンデッドが外に出ると、外に放置してあった肉塊の死骸を吸収し始め体に取り込み始め、その際近くにあった御堂のBRの残骸も巻き込んで全てと融合し始め、更に大きく巨大化して行っている。

「どういう技術で、ああなったんだ…本当に『進化の力』って奴なのか?」

 まるで、黒い泥のような物がヴァンデッドの失った下半身から染み出して、肉塊を食い尽くして飲み込んで行ってるようだった。

「…あそこまで、改造するまでどれほど金がかかったと……数年の報酬をあれにつぎ込んでるのだぞ!?」

「諦めなよ…あれ、周囲の物体を飲み込みながらどんどん大きくなってる…」

「飲み込むって、奴は吸血鬼ではないのか?」

「大きくなりながら途中で遭遇した人を丸ごと吸収して行くつもりなんだよ、血も肉も丸ごと吸収するんだよ」

「…だが、もうあの巨体では、背中のレーザーキャノンは受け付けないぞ。戦艦の主砲でも持ってくるべきだったな…」

 だが、既に50m以上に成長したそれの巨大化は今も尚進み、街にその黒い泥のような物を落して広がっていく。

 竜の頭と羽を持った巨大怪獣のような井出達で吼え上がる。

『ぎゃぉぉぉーーーーーーっ!!!』

 それにもう、吸血鬼としての意思があるかどうか解らない。大元がヴァンヘルシングという人間だと言ったら冗談にしか聞こえないだろう。


「…ぐ、BRの機体内部でも解る程のプレッシャー……これじゃあ、本当に魔王だね」

 以前とは比べ物にならないくらいにパワーアップして、今や世界を破滅させる程にまで成長している。

『ぐ!?…おぉぉぉーーーっ!!?』

「え、なに??」

 ヴァンデッドの巨大化が突如止まり、苦しそうに頭を抱え始める。

「急に苦しみ始めた…だと?……佐倉、夜明けだ!奴め、結局は日の光への耐性は着いていなかった様だぞ!」

「…本当だ…」

 見ると、東の方の山から太陽が昇り始めている、日の光に晒されているヴァンデッドの部分からは煙があがっていた。

「ヴァンデッドは、日の光の耐性をつけたんじゃなかったのか?いや、あの様子を見る限り、耐性がついたと確信していたつもりだった…って言うの?」

 奴が手に入れた『進化の力』というのは、恐らく佐倉が保管室で発見した『あれ』の作用による物であり、日光を受け付けない体に進化させるつもりだったのだろう。それを知っていたから、外で周りの物を取り込みながら巨大化するつもりだったが…

 実際に日光はヴァンデッドの体を焼き、際限なく巨大化していた成長を止めている。

「何にしても、チャンスだ!…レーザーキャノン、起動」

『了解、背面L型2連レーザーキャノン展開。目標設定!……後方、タワーBR格納庫、射出口より…援軍です』

「相田君だ…」


バァァァーーーッ!

『ブレイバー、無事に射出完了しました。ってぇ、なんですか!?あの化け物は?!』

「なんじゃありゃ?!でっけぇ!?」

 射出口から飛び出したブレイバーのモニターに捕えたのは、巨大な黒いドラゴンのような化け物だ。

 だけど、でっかい化け物は何か苦しむように、もがいていた。

「あいつ、苦しんじゃいないか?」

『待ってください、通信地上からです!』

 下の方に、佐倉のアイスコマンドが見える。

「相田君、おーい」

「佐倉か?なんだあれ、あのでかいのが吸血鬼か?」

「そだよ、あれ…日光に耐性が出来上がっていたみたい…日の光で焼かれている今、BRの全武装で総攻撃してバラバラにできるよ!」

 アイスコマンドの背中と腕のレーザー砲を構えてあのでかい化け物に照準を向けている。

「よっしゃ、盛り上がってきたぜ!ハナコ、使える武器は!?」

『ソードランチャー残弾20、ミサイル残弾15発、ハイバズーカキャノンはまだ使っていません、スレイヤー、サーベル共にエネルギーはあります』

 よし、成仏するのは失敗する時だ…

「ハナコ、ブレイバーの武器全部叩き込んでやる、行くぜ!」

『はい、行きます!全武装リミッター解除!同じく、ブースターもオーバーロードさせます!』

 ソードランチャーを左手に持ち変えて、レーザースレイヤーを引き抜いてから、ブースターをオーバーロードさせて吸血怪獣に向かって飛ぶ。

バァァァーーーッ!

「いけぇぇーーっ!」

『きゃぁぁーー!もうやけくそですぅぅ、全ターゲットカーソル、レーザー、ミサイル同時発射!』

ビュー!ビューッン!ズドドドーン!!

 ミサイルを乱射しながら、左手のソードランチャーを連発させる。ミサイルが体全体に命中して爆発し、連射させたレーザーが体を貫く。

『敵巨大生物、反撃してきます!』

 吸血怪獣がブレイバーに向けて巨大な腕を振り下ろしてくる。

『きぇぇぇーーーっ!!』

 そのでかい腕を回避してミサイルを発射して、巨大な腕との距離を離す。

『ブースターエネルギーを考えてください!』

「いいや、全部を出し惜しみすんな!ソードランチャーもだ!10発分のレーザーだ!」

『は、はぁぁい!ソードランチャー、10発分エネルギー集約!』

キィーーンッ!

 スレイヤーを一旦背中に収納して、右手に持ち返るとソードランチャーのエネルギーが集中していく。

「ソードランチャー…いけぇい!」

バァァァーーーッ!!

 10発分のエネルギーの特大のレーザーが放たれ、長く伸びたレーザーによって吸血怪獣の腕が切り落とされる。

『ソードランチャー、残弾無し!パージ後、レーザースレイヤー装備!』

「ついで、左腕のサーベルもだ!」

ビィィッ!

 左腕の固定レーザーサーベルを起動させて、右手にレーザースレイヤーを持って急接近する。また巨大な腕が、迫ってくる。

『よ、よけきれましぇーんっ!』

「つらぬけぇ!」

バシュッ!ドッシュゥッ!!

 そのまま巨大な掌に突っ込んで、掌をサーベルとスレイヤーが貫通するが、そのまま突き刺さっただけで巨大な掌の指がブレイバーごと潰そうとする。

「げ、貫けねぇ!」

『あーーーもうだめだぁ』

ビーンッ!ビューンッ!

 下からレーザーの援護射撃で、指が閉じられる前に脱出して、そのまま手首を切り落としてやった。

「佐倉か?助かったぜ」

「貸しだよーっ!火力を、集中させるよ」

「よし、空からでかい一撃を食らわせてやるぜ!」

 両腕をなくした奴の頭より高いところまで飛び上がって、ブレイバーは背面の左側に装備されたキャノン砲を展開させる。

「ハイバズーカキャノン…展開、ってこれ1発のみかよ!」

『ハイバズーカキャノンは、爆発力の高い実弾炸裂砲です。着弾したら大爆発をおこしますので使用はある程度制限されてますっ!』

「まじかよ!?いや、今はこの一発が頼みの綱だ!」

『それでは、安全装置解除します!左の操縦桿を外して右の操縦桿と合わせて下さい』

「おう、こうか?」

 左の操縦桿が外れて、右の操縦桿に装着すると銃のような形になる。

『これで、左肩のキャノンの制御ができますぅ』



『背面L型レーザーキャノン、充填完了…発射体制整いました…』

「軍用BRの人工知能はここまで無愛想なのか…」

「ほっといて、彼女はいつもこうなの…相田くーん!こっちは準備できたよ!」

 背中のレーザー砲にエネルギーが充填されて、発射できる態勢に入ってブレイバーの準備を待っていた。

「何をしている、焼き払え!どうした魔術師!さっさと撃たんか!?」

「どっかの王国の姫様みたいに、威張らないでよ!照準が鈍るからさぁ!」

 佐倉の後ろでは相変わらず御堂が五月蝿い。

『ブースター、エネルギー残量あと僅かです、空中での行動ができなくなります』

「落ちる前にぶっ放す!佐倉、先に撃て!」


「解った、御堂掴まってて…舌噛むよ!」

カチャ

バァァァーーーーーーッ!!

 佐倉のアイスコマンドの背中のキャノン砲から極太のレーザーが放たれ下から上へと体を焼き払う。

「なんてやつだ、これは…戦艦にも用いられるL型(大型)レーザー砲だろ、それを掃射し続けていても焼き払えないとは…」

「相田君、早く!こっちはエネルギーが切れそうだよ!」

 アイスコマンドから佐倉の叫び声が聞こえてくる。ターゲットカーソルがあわねぇ!

「わかってらぁ!これで終わりだ、吸血鬼っ!ハイバズーカキャノン、いけぇ!」

ドォォーーーーッン!

 ターゲットカーソルが赤くなり、俺は操縦桿のトリガーを引くと、左肩のキャノン砲から火球が放たれて強い反動で大きく仰け反る、吸血怪獣に向かって飛び…着弾する。

ドゴォォォーーーーーーーンッ!!

 吸血怪獣に命中した砲弾が大爆発を起こして、熱風と爆風が吸血怪獣全体を飲み込んで行った。

『ガァァァーーーーーーーーッ!!!』

 爆炎の中で奴の断末魔が木霊した。


「すげぇ、とんでもない火力だぜ…」

ぷしゅぅ~

「あ、あれ?」

『あ、ブースターのオーバーヒートです』

 反動で空に投げ出されていた浮遊していたブレイバーのブースターが情けない音を立てて停止する。空の上に居たブレイバーが落下していく。

「またこれかよぉぉーーーーっ!!」

 最初にタワーを脱出した時と同じようにオーバーヒートでエンストして、ブレイバーは情けなく落下してしまった。


……

「あの叫び声は…」

 巨大な爆発音の後、断末魔のような叫び声が町外れで待機していた木野の所まで聞こえてくる。

 その後、爆風のような強風がここまで来る。

「爆発の衝撃波です!ご隠居、お気をつけて…」

 町外れでは、木野を始めに…ギルティ隊の隊員や捜査員数名が待機していた。

「亮太のBRに装備したバズーカ砲じゃ、あれを使ったのじゃろうな…」

「…なんて物を、ルーキーに持たせるんすか…ご隠居」

 ライフルを肩に担いだ金髪のひげを生やした男がため息交じりに言う。

「タワーに入ったギルティ隊長からの連絡は?」

「まだ、ないっすねぇ…あの爆発で電磁波が乱れて通信できないでいるから」

「副隊長、アイスコマンドから通信復活しました!」

 通信士らしき人物がアイスコマンドからの連絡を受ける。

「状況終了らしいっすよ、ご隠居」

「よし…佐倉君が手配した専門の救助隊をタワービルに送るのじゃ、地下には生き残った街の住民がこん睡状態にあるらしいからのぉ」

 二人が発見した地下にいた街の住民を救助する為に手配した専門チームを乗せたトラックがタワービルへと向かい、彼らもまた動き出す。

「了解、専門チーム出動っ、まだ生き残りが居る可能性がある。俺達が前進する!ご隠居は、あいつ等を迎えに行ってください」

「うむ、十分気をつけるのじゃぞ…」


……


「なんだこれ…」

 落下で倒れこんだブレイバーから何とか出ると、既にBRから降りていた佐倉達と合流する。

「くっせ、なんだこの匂い」

「…生物が死んだ死臭とはちょっと違うね、一応鼻と口を塞いだ方がいいよ……」

 ハイバズーカキャノンの爆発で、吸血怪獣は体には大穴が開いて黒いタールのような液体になって、街中に広がって消滅した。

 吸血怪獣の居た場所は破壊されて瓦礫になっていた。そこに黒い液体がへばりついている。それは鼻を突くくらいの匂い…毒ガスだったらやばいからと、佐倉の指示で口を塞ぐ。

「…毒物や細菌じゃない……」

「この黒いのは?」

「処理班が来なきゃ何とも言えないけど、ヴァンデッドの成れの果てって事は間違いないよ…死骸かな…」

「げ…」

 足を引っ込めると黒い液体はどろっとしていて、靴に張り付いてくる。

「踏んで大丈夫か?」

「害はないよ…でも靴は洗った方がいいよ…えーと、何処行った?」

 佐倉はそんな黒い液体で染まっている、瓦礫の中から何かを探していた。

「で、何探してんだ」

「おたから~」

 にかって笑って間延びした声でそう言う。

「…またいつもの調子だな…で、何なんだよそのお宝とやらは…」

「御堂に見つかると倒されるから、先に見つけないと…あっちに仕事をとられちゃう」

「そいや、あいつは…」

 色々俺達を引っ掻き回した御堂だったが、黒いタールだらけのBRの残骸っぽい物の前にいた…なんか暗い表情で落ち込んでるようだ。

「BRがあんな有様だから…すぐには探さないだろうし、ほっといた方がいいよ」

「それもそうだな…」

「相田君も手伝ってよ、おたから探すの…」

「だから、そのお宝って何なんだっての!」

 しぶしぶ俺も佐倉の『おたからさがし』とやらに付き合ってやる。何を探してるのかすら解らないってのに…剣でそこら辺をつつき、瓦礫をどけてとりあえず金目になりそうなのを探す。

「……おたからーでてきやがれー」

ごろっ…ぽろ

「お?なんだこれ…ジュースの缶か…」

 黒い液体でどろどろになったジュースの缶が瓦礫の下から出てくる以外、出てくるのはゴミばっかりだ。

「おーい、佐倉…何がお宝かさっぱりわかんねぇぞ!」

「えっとねぇ…相田君!避けて!」

 佐倉が突然叫んで、俺は振り返って回避するとあの吸血鬼の腕が飛び掛ってきていた。さっきみたいに吸血怪獣じゃなく、最初に見た時と同じ腕の状態だった。

べシャッ!

 避けるが爪で頬を少し切る。落ちた瞬間、その腕は五本の指で立ち上がる。

「まじかよ、まだ生きてやがる!」

『人間め…ゆるざんぞぉ……かぁぁ』

「こいつ喋ってやがる、腕のくせに…」

『ぎざまらぁ…人間風情めぇ…殺じでぐれるぅ…』

 指で立ち上がって、また俺に飛び掛ってくる。

「やらせるかよ!」

キィンッ!バシッ!

 飛び掛ってくる奴を剣で受け止めて、それから叩き落す。

『ぐぉ!…ガァァァーーッ!』

 叩き落した場所が丁度日の光が差し込む場所だったからか、そいつは焼かれてのた打ち回る。

「(何、相田君の気迫が上がった…)」

「…許さない?てめぇ…街の人を全部、飯のテーブルにしようとして…喰ったらその死体を操って……許さない?そりゃ、こっちの台詞だ!」

ザンッ!

 剣を突き立てて腕がその光の差す場所から動けないようにする。

『ぐああああ、我が体が…がらだがぁぁ…光に…光にやられるだとぉ…『進化の力』を手に入れ…たと、いうのにぃ…我は、われわぁぁ…だいようがぁぁ…』

「てめぇが今の今まで殺してきた奴の分…全部まとめてお前にくれてやらぁ!」

 日の光を受けた剣を引き抜いてそのまま奴に向かって振り下ろした。

『グガァァァーーーーッ!!』

 ざっくりと真っ二つに割れた腕は、他の奴と同じように灰になろうとしていた。

『きさまは…一体何なんだ…』

「覚えておきやがれ、俺は勇者…魔王をぶっ飛ばしに来たの名前を、冥土の土産に覚えて置きやがれ!俺は、勇者…相田亮太だ!」

『あ……あ…い…だ…』


「おっと、まだまだ消えないでよ…せっかくのお宝なんだから…」

 半分に切れた奴の腕を見て佐倉がるんるんでこっちにやってくると、杖をかざして冷凍させる。

「おったから♪おったから♪」

「お前、何してんだよ」

「お宝だよ、フリーズドライにして粉末にするんだ…」

「そんなもんをどうするつもりだよ…」

「吸血鬼のフリーズドライの粉末って、不老不死の力があるんだってよ?だから、オークションで高く売れるんだぁ。言ったよねぇ~逃がさないってさぁ~」

「だから、お宝か…ってなんか妖しくねぇかそのオークション…」

 警察がそんな闇オークションとかやってていいのかよ…そう思いながらも凍らせた腕をカプセルの中に放り込んだ。

「ちょっとまて…まさか、お前それが本当の目的でじゃねぇだろうな?」

「ぎくっ」

「……はぁ…なんだか、一気にどっと疲れたぜ」

 佐倉の趣味は置いといて、今のでどーっと疲れが襲ってきて、肩を落とす。

「ありがとう、これも相田君のおかげだよ」

「…あ、ああ…何でだ全然嬉しくねぇ」

 こいつの可愛げのある満面の笑みと裏腹に、手に持ってるオークション用の凍った吸血鬼の腕…なんだろう、色々な意味で振り回していたのはこいつじゃないのかと改めて思ってしまう。

「僕一人じゃ手に終えなかったし、相田君もデビュー直後だから大変だっただろうけど、こうして事件も解決できたし、僕も目当ての物を手に入れられたし、感謝したりないくらいだよ」

 俺の手を取って握手をしてくる佐倉。思いっきりひどいめにあったが、それでもなんかこいつとは長い付き合いになりそうな気がしてきた。悪い奴じゃないだろうし…たぶん…

「オークションで落札したら、相田君にも報酬の一部にして別けてあげるよ」

「お、おお…」

 まあ、報酬の一部になってくれるなら有難い事だ。この事件の報酬は警察が支払ってくれるんだろうな…

「相変わらず、闇オークション好きじゃのぉ…佐倉君や」

「ああ、木野のお爺さん」

 いつの間にか俺達の近くに爺さんがいて話しかけてくる、やっぱり顔見知りなのか。

「じいさん…今の今までどこ行ってたんだ…ってか、今回の依頼、本当は警察の依頼だったんじゃねぇか」

「最初から警察と言ったら、お前は動かんじゃろうが…」

 いや、警察から依頼をうけたって聞いても俺は行ったと思うが…

「お爺さん、今回もご協力ありがとうございます…隊長に代わってお礼を言います」

「いいんじゃよ、長い付き合いじゃしな…こうたろ…いや、ギルティ隊長はどうしておる…あの傷で潜入したと田嶋くんからきいたぞい」

「隊長は、ビル内で専門チームと街の人の救助を手伝ってます…」

「そうか……」

 爺さんに引き続きなんか白い防護服のような物を着た連中が回りにこびりついた、この黒い泥を洗浄し始めた。爺さんは後ろからそれを指揮していたのだと言い、タワーには既にギルティ隊の連中が街の連中を救助しているらしい。


「なぁ、それより…あいつはどうする?」

「御堂ね…元々どっかから討伐依頼を受けたって言うから、ちょっとその依頼主を聞かないと、吸血鬼の軍勢に加担した事で罪になる」

「だな、マジで俺達を殺しに掛かってきたしな」

「それが『勇者』の問題点でもあるわけだよ…悪魔の依頼でも受けてしまう人もいるから」

 でも、なんか今のあいつなら今後、そういう奴らからの依頼は受けないかもしれない…妖しいって言えばそうだけどな。

 そう思ってると御堂はすくっと立ち上がった。

「みどぉ~、ちょっといいかなぁ?」

「あ?何だ佐倉…見よ、私のBRの有様…これだけ作るのにどれだけの労力が…」

 佐倉と一緒に近づくと、ギャグマンガである滝のような涙を流しながら鬼気迫る形相で迫ってくる。

「べ、弁償しろっての!?」

「元より貴様らが壊したような物だからな…」

「……敵対して撃って来たくせによく言うぜ…」

 しかし、こうなったら本当逆にかわいそうに思える。金をかけただろうBRはソードランチャーで打ち抜かれ、ぶっ壊された後に吸血怪獣に吸収されあんな泥まみれにされちゃ。

「ま、まあまあ…色々君に聞いてからでないと、保障はできかねないよ…だって、君ヴァンデッド側に居たんだもん」

「…ふむ、それもそうだな……良かろう、その節で後日ギルティ隊の聴取をうける。私のほうの依頼主と連絡させて欲しい」

「わかったー、高飛びされるかと思ったけど意外にあっさりしてて良かった」


 その後、御堂は実家の迎えのヘリがやって来るとそれに乗り込む。陰陽師でどれだけ儲かっているかがこれでよく解った。

「相田亮太よ、貴様…私に勝った気でいるようだが、貴様の考えを認めた訳ではない。いずれまた再戦し、殺してやろう…せいぜい首でも洗っていろ」

「お、おおよ…何度だって相手になって、返り討ちにしてやらぁ」

「また会おう、ルーキー勇者!」

バタバタバタッ

「はっはっはっはっはっ!」

 高笑いをしながら御堂はヘリに乗り、遠くへ飛び去っていってしまった。

「…口が悪い奴だったけど、別段悪い奴でもなかったな…」

「拳を交えた相手同士の友情かのぉ?」

「こぶし…って、あいつ…陰陽師の癖にやたらパンチ力たけぇの…」

「若い頃はお主と同じように喧嘩に明け暮れた不良少年だと、奴の先代から聞いて居るわい…」

「そか……」

 なんか、近いうちに会いそうな気がする…けど、今回みたいに本気でやりあう事…ない気がしてきた。


「さてと、僕は処理班や救助隊に任せて撤収するよ…あ~つかれた…」

 一通り白服の連中に引き継いだ佐倉が戻ってきて、本当に疲れたように体を伸ばす…

「おう、世話になったな。でも、今回みたいな依頼はこれっきりにしてくれよ…」

「うん、今度はドッキリとかしかけないで直に依頼させてもらうよ」

「逆にそれが怖い気もするが…期待しないでおくよ」

「うんっ!」

 もう一度握手をしてから、そこに止めてあったアイスコマンドに乗り込むと…

「じゃ~ねぇ~」

 と手を振って、アイスコマンドで街の外に向かって行った。あいつとは長い付き合いになりそうだ…警察…『ギルティ隊』とも…。


「よし、わし等も帰るかのぉ、この後は彼ら処理班の仕事じゃ」

「俺も疲れたぜ…はぁ、力抜けたぜ…」

「式神は使ったのか?…ろくに説明も聞かずに持っていったじゃろ?」

「わりぃ…でも、裏面にそれっぽいのが書いてあったからそれに従った。でも1日2回つかっちまったよ…つかれたぁ…」

 俺も佐倉じゃないが、今回の事で体も心も疲れた感じがする。御堂との戦いで朱雀に白虎を使ったからな…ぎりぎりで、いっぱいいっぱいって感じだ。

「なんと、四聖獣の札は精神力を食って常人では1回以上だと生命力を食われ…意識を失ってもおかしくない…」

「…これが、台紙にコピったのだからじゃね?」

「……(それを理由にするのか…こやつは)」

「な、何だよ……」

「お主は本当に、わからんのぉ…」

「まさか、2回目の仕事で魔王にぶつけるなんて思っていなかったしな…」

 そして、爺さんが乗ってきたバズーカを背負った軽トラに乗り込む。ブレイバーは運送屋が送ってくれるらしく、俺は爺さんの軽トラで帰る事になった。

 魔王が居なくなり、日の光が暖かく街を指す…長い夜は終わった。


 後から聞いた話だけど、救出された街の人達は全員、今回の一件はさっぱり覚えていなかったらしい。吸血鬼の連中が彼らが気付く前に一斉に捕まえたか、意識を奪う時に使った薬の影響で、その時…その夜何が起こったのか解らないまま連れてかれたんだ。

 それで、意識を失ってる内に奴らの餌となって、知らずの内に家族や親類が居なくなったという連中が何人も居た。そりゃ、寝てる内に大切な人間が居なくなったらパニックにもなる…。

 そこで、この吸血鬼の事件を公じゃ、『サイコタワー』の地下から漏れた有毒ガスによる大災害。街一つ飲み込んで、全員が意識不明の重体…死者も出て、人によっては精密検査と入院を余儀なくされた(吸血鬼にされた人間の治療と療養)。…という事件にしたのだ。全く無理のある説得力がかける内容だが、これで原因となったタワービル周辺は立ち入り禁止になり、タワーは解体……そこ以外の街は再建される事になった。

ギルティ隊の佐倉の見解はこうだ。

「この嘘は何ればれる嘘だけど、それでも残った人達が街を再建して再出発するには十分な期間だよ……」

 と切なげに言っていた。知らないで幸せな事…それが一番の平和ってのもあるか…

 後々でこの街からタワーが消えて、それがあった頃より発展して活気のある街に戻った。彼らはまだあの頃の事を心のどこかで抱えているけど、それでもこの街で生きていく。そんな強さを感じさせた…

 多分と言っても、この街の連中は俺がその時吸血鬼と戦って助けた事なんて覚えていないだろう…いや、知る由も無いんだったな。でも、とりあえずエールを送らせてくれや…



……

「もう、大丈夫ですね…後遺症も見られませんし、近い内に退院できますよ」

 都内の大きな病院で、医者の検査を受ける少女がいた。…あの時、相田亮太、佐倉雪菜の二人が救った市長令嬢だった。

 吸血鬼に噛まれ、変異しかけていた彼女は佐倉の魔術により冷凍保存され、その後…長い治療を経て何とか吸血鬼化を止め、彼女は近い内に退院できる事となった。

「…ありがとうございます…」

 それでも、彼女の気持ちは晴れない。あの事件で市長である父親を失ったのだから…

「大丈夫ですか?」

 意識を取り戻した時は、パニックになって塞ぎこんだりもしたが、今は大分落ち着いた。

「ええ…今は、知らぬ間に父が死んだ事が信じられなくて」

「無理もない、タワービルにいて直下でガスの影響を受けたのですから…あなたも命があって良かった…」

「……そうですね」

「もう、あの夢は見ませんか?」

「…最近は少なくなりました…」

 彼女が意識を取り戻した後、頻繁に見る夢…牙を持った人のような化け物に襲われる夢だ…それに何日も魘されていた事もあった。だが…

「少なくなりました…けど、夢の内容が変わったんです…」

「内容が?それはどんな…」

 おそらく、彼女の見た夢は…潜在的に記憶にあった吸血鬼に襲われる所だろう。彼女はその時の恐怖を夢としてみていたのだ…だが…

「……剣、剣を持った人が、怪物を倒して…私を助けたんです…」

 何故か、彼女のイメージに…剣を持った人間…が登場し、そこから彼女は悪夢から解放されて行ったのだと言う……


 剣を持った人…彼女を助け、街を救ったその人物は…


……


「何々?…『拝啓、相田亮太様。先日の吸血鬼事件への協力ありがとうございます。少なからずですが、報酬の方を送らせて頂きます。ですが、殆ど街の再建費用にギルティ隊が使ってしまったので、本当少ないです…ほんのお詫びのつもりですが、オークションの儲けを少しだけ渡します…ただ、これもそんなに儲けなかったので…少ないよ…』」

 事件の後、事務所のパソコンで、ギルティ隊からのメール…佐倉からのメールを読み上げた。

あれだけ頑張って…命までかけて…疲れたって言うのに、振り回すだけ振り回しておいて…報酬が…たったこんだけか?!日雇いバイトより安いぞ!!


「だぁぁーーっ!こんな仕事やめてやるぅーーーっ!!」


魔王の腕編・完


次回に続く


ここまで魔王の腕編を長きに渡り読んでいただき、ありがとうございます。


この話から、佐倉君が所属するギルティ隊とその隊長さんらしき人が出てきましてそれから色々な謎を残しましたが、今後の伏せんって事で…

それでは、新しい章にご期待ください。

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