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蝉鳴りのマリー  作者: あぐらまる
8/9

とうめいにんげん

また月曜日がやってきた。

同じような退屈な一週間が続くのかと思うと休み明けの月曜日は少なからず気が重くなる。

そんな心境の者は来るべき週末にしか気持ちは向かないものだ。

しかし本日の健雄はいつもとは違う理由で気が重く、この先の事を考えると憂鬱な思いが降り積もる。

そして先週末の事など忘れてしまいたいくらいだった。

当然それは一昨日の土曜日に我が身に起こった奇天列な出来事に端を発している。

あの退屈だった日々が今は少し懐かしい。

青春の悩みは数あれど、この自分の悩みを分かち合える者などなかなかいるものではないだろう。

どんな悩みでも結局同じ事が言えるのかもしるないけれど。

でもまさか、自分が幽霊にとり憑かれる事態がおとずれるなんて思いもよらない。

健雄なりに昨日は一日かけて解決策を探ったものの良い思案は何も浮かばなかった。

これから自分の身の上はどうなっていくのだろうか。

教室に着いてからも健雄は自分の机に突っ伏して軽く頭を抱えていた。

クラスメイト達がテレビ番組の話や新図書館の話に華を咲かせているのが耳に届いてくる。

いつもの日常的な光景と我が身に起こった非日常な出来事が混じりあわず日常を少し遠くに感じる。

そんな健雄の頭上に聞き慣れた海正の声が降り落ちてきた。


「よお。健雄、頭なんか抱えちゃって青春の悩みかい?若き健雄の悩みかい?」


月曜日だっていうのに、いつにもまして陽気な声だ。


「あぁ…。幽霊にとり憑かれちゃってな」


頭を上げて応えた健雄に


「そうか、そりゃあ大変だ」


と口の片方の端だけを上げて海正はニヤニヤと笑っている。

その表情から健雄の言葉を微塵も信じた様子はなく、さもつまらない冗談だなと思っているのが感じとられる。

それはそうだろう。

立場が逆なら健雄も多分、似たような反応をする。


「海正はやけに御機嫌みたいだけど?」


わかる?

そんな表情を示した後に海正は口を開いた。


「例の図書館だよ。いやーいい感じだよ。図書館自体もよかったけど、他にもね。」


自分はひどい目にあったというのに、楽しげな海正の様子に健雄は少しだけ苛立つを覚える。

そうか、そりゃあ良かった。

と、発し話を終わらせたい気持ちを飲み込み話を伺う。


「…他にも?」


「ま、またそのうち話すよ」


…やっぱり少し苛立つな。


自分の席に向かう海正の背中を見ながら健雄は考える。

海正は幽霊を信じるだろうか。

もし、自分が改めて真剣に先日に起きた出来事を話したら海正は信じてくれるだろうか。

それとも頭がおかしくなったのかと心配するのかな。

意外と妙案を教えてくれないだろうか。

そして海正はまだベースの練習を続けているのかな…。

そうしているうちに始業のチャイムが鳴った。







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