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蝉鳴りのマリー  作者: あぐらまる
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いつもの自分の部屋の扉なのに、なんだか廃墟化した洋館の錆び付いた扉を開けようとしている気分だ。

後ろを振り向くとやはり彼女は憑いてきていた。

扉を開けた先は漆黒の闇が、広がってるはずもなく音楽のCDが溢れていること以外はごく普通の健雄の部屋があった。


「入ってもいいの…?」


許可を得る常識的な幽霊。

健雄はなんだかもうヤケクソにも似た開き直りの気持ちが芽生えてきた。

言葉にはださず、容認の意思を頷きで示した。

部屋に入るなり彼女は溢れているCDに興味を持った様子だ。


「わー。すごいCDがいっぱい。しかも私が知ってる年代の洋楽もいっぱい」


健雄そっちのけで子供のように瞳を輝かせて飛び回っていた。

そして部屋の隅に目をやると


「君もギターやるんだね!」


と、健雄のギターをみつけて言った。

健雄もギターをやっている。

と言っても最近放置気味のギターなのだけれども。

健雄は女の子の言葉になにも応答せず、ベットに腰掛けたまま彼女を凝視していた。


「そんなことより」


健雄が口火をきる。


「君は…何?」


女の子は一人ではしゃいでいた事を恥じらい申し訳なさそうに


「私は…マリー」


と応えた。


「名前はともかく…。君は、その、幽霊ってやつなの?」


健雄の言葉にマリーはなぜか叱られた子供のように


「はい。多分、幽霊というやつです」


とコクリと頷いて言った。

多分?

多分ってなんだよ?

的を得ない返答に健雄は少なからず苛立ちを覚える。

それにしても聞きたいことがありすぎた。

最小限にまとめるなら、君は何者で、なぜ俺にとり憑くのか、何が目的なのか、ということだ。

そんな健雄の質問にマリーは


「その前に、あなたのお名前聞いてもいい?」


と尋ねる。


「…健雄。空閑健雄」


「空閑健雄君。私も何から話せばいいのか難しいんだけど…」


と少し間をおきマリーは続けて


「あぁ!そういえば私、男の子の部屋に入るのって初めて。なんだか緊張しちゃうね」


と間の抜けた事を言った。

健雄は先程まで感じていた恐怖や不安が馬鹿馬鹿しく思えてきた。


「…俺も幽霊を部屋に入れるのは初めてだよ」


その言葉を聞いたマリーは本当に面白そうに笑った。

アハハハ。確かにそうだろうねって、屈託なく笑うマリーの笑顔を見ていると、どうやらこれから始まるかもしれない物語は恐怖のホラー話ではないなと健雄は感じていた。














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