No.3とNo.5
「えぇーっ⁉
おまっ、お前、オカルト部ー⁉」
「マジで⁉お前何者だよっ‼」
席で仰け反る三浦とずいっと近づいてくる内藤。
三浦は出席番号的に俺の前。
内藤は三浦の中学からの友達らしい。
入学式は寝てしまい、その次の日は部活に強制連行され、普通の友好関係を築くヒマがなかった俺にもやっと普通の友だちができた。
2人曰く、俺はツワモノらしい。
1.入学早々寝こけてたこと。
2.みんなの憧れ生徒会長様が直々に名前をお呼びになったこと。
3.正体不明のオカルト部に所属していること。
うん…。最初はともかく、残り二つは完全に不可抗力だ。
しかも、2の所為で俺は生徒会長ファンの女子から睨まれるハメになった。
俺の青春がっ…‼
ちなみに同じように生徒会長様と近い焔は基本、女子に好かれるタイプらしい。
今朝も一緒に歩いてて数人の子ににこにこと声をかけていた。
くそぅ、羨ましいぞ‼
「…っおい。キリっ!」
「おわっ!何?」
おっと、完全にトリップしてた。
「だからぁ、オカルト部って結局なんなんだよ。メンバーだってなぜかスカウト制だしさぁ。」
「はははー、なんだろうねー。
ホントはオニ対策支部で、活動内容はオニを倒すことだよっ、
なんて言えるわけない。
「それはっ!ヒ・ミ・ツ!」
指を口に当てているのは焔だ。
今トイレから帰還した。
「お前もオカルト部か。
そういや中学はKON部だったよな?」
「そーそー、あれも意味不だった。」
「昆布…?」
どっちだ?ネーミングセンスない方は。
てかオカルト部の前身が茶色い海の藻ってどうよ。
キーンコーンカーンコーン…
「おら、席つけー。」
ここでタイミングよくチャイムがなって体育教師(俺認定)五十嵐が教室に入ってきた。
席に着く前に何かを書いていた焔が生徒帳の紙をちぎって丸めて俺の机に置いて行った。
しわしわになった紙を広げる。
『
海の藻じゃなくて
K 今日も
O オニを
N なくそう
部だよ?
NPOみたいでカッコいいっしょー⁇
ホムラ 』
お前か、名付け親は。
NPO法人に謝れ。
俺はその紙のまずそうな部分を再起不能なまでにペンで塗りつぶすと紙ヒコーキにして窓からさりげなく飛ばした。
放課後…。
「おじゃま、しまーす…。」
俺は恐る恐るオカルト部部室に足を踏み入れた。
HR後、焔に連れられ速攻来たから社長イスには誰もいなかった。
「おじゃましますとか、他人行儀ー。ただいまでいいよー、ただいまで。」
一緒に入ってきた焔が俺の横を通り抜け、ソファにダイブした。
「あー、もう俺完全にここの一員なんだ?」
「違うのか?」
「ひゃい⁉」
背後からの声に振り返ると生徒会長様が立っていた。
固まった俺の横をするりと抜けると、やかんに水をいれる。
火にかけると社長イスに座り、コンピュータを立ち上げる。
「…本当は別にやらなくてもいい。オニの討伐は危険を伴うしな。」
それは昨日ので充分わかった。
死ぬかもしれない恐怖で胃がきゅっとなったのなんて初めてだった。
「しかし、俺たちにはお前の力が必要だ。
力を貸してくれないか。」
「…うぅ。」
「俺も仲間が増えたら凄いうれしーしねっ!」
「…。」
ああ、期待の目がぐさぐさ刺さる。
この状況で俺が出せる答えなんて一択だ。
「頼む。」
「…わかりました。やります…。」
あー、俺終わった。
なに承諾してんだ。俺ぇぇえ!
これが俺がお人好しって言われる所以なんだろうけど。
「…不束者ですがよろしくお願いします…。」
「よろしくぅ。」
「ああ。」
確かに、今でもわからないことはたくさんあるが、このまま無かったことにして生活するのも難しいしな。
自分のなかでそんな理由付けをして俺は取り敢えず右ソファ(俺の席らしいし)に座った。
それから、生徒会長様の方を向く。
「あのー。」
「ん?」
生徒会長様がコンピュータから視線をずらした。
「昨日から思ってたんですけど、なんで俺、no.4なんですか?三人しかいないのに。」
生徒会長様はメガネをくいっと上げた。
「答えは簡単だ。御堂麒里。
この部には5人部員がいるからだ。」
この力を持った人が俺の他に4人…⁉
あ、でもよく考えたら五行だから当たり前か。
「そっかぁ、キリは他の部員に会ったことないんだぁ。」
焔は楽しそうに戸棚からポテチを出していた。
なんでもあるんだな、ここ。
「じゃ、他の部員と顔合わせするか?あいつらはここにはこないだろうから此方から出向くしかないが。」
焔がそれを聞きながらバリッとポテチの袋を開けた。
「確かにぃ。たっつんはともかく、たまはねぇ?」
「なら昼間のうちに行ったらどうだ?焔、御堂麒里を案内しろ。」
「いいよぉ。あ、このポテチ食べ終わったらねぇ?」
焔は袋に手を突っ込むと相当な量を一気に口の中に突っ込む。
バリバリと派手な音をたててカスがこぼれた。
「…あの、生徒会長、その御堂麒里って呼び方、落ち着かないんでやめて欲しいんですけど…。キリとかでいいんで…。」
俺は一番気になってたことを言ってみた。
生徒会長様はこちらを向くとふっと笑った。
「わかった。
じゃぁ、俺の事も生徒会長と呼ぶな。俺の事は玄でいい。」
「いや、ムリですっ‼」
おれは首をふるふると振った。
そんな度胸はない。
「…じゃあ、碓氷でもいい。」
いや、余計ムリですから、それ。
生徒会長様が宜しくても俺が女子どもに殺られる。間違いなく。
「…玄先輩でどうですか?」
「俺は別になんでもいい。」
生徒会長様…ならぬ玄先輩の呼び方が決まったところで焔が立ち上がって膝に落ちたポテチのカスを払った。
そんな焔を玄先輩が後ろから睨んでいる。
怖えー。
「おい、其処に食べカスを散らすなと何度行ったら」
「さっ、行こうか!キリ!俺、準備万端だよぉ!」
…こいつ、わざとだろうな。
相変わらず荷物も持たず廊下にでた焔に俺は慌ててついて行った。
玄先輩の鋭い視線を浴びながら。
「どこ行くんだ?」
焔は人差し指をぴんと立てて腕を伸ばした。
「屋上ー!」