70 一筋の光
「スフィア、あんたは一人でここから逃げな」
「な、何を言っているのです! 私も、戦いますよ!」
「あたいが時間を稼ぐから、その隙にワープゲートを使うんだよ」
む、無茶ですよジェミンさん。
ジェミンさんだって、心の中では無理だって思ってるじゃないですか。
それなのに、どうして、どうして私なんて守ろうとするんですか!
『ずっと孤独で無口なあたいの心を開いてくれたこと、感謝してるよ。だから、友だちとして、仲間として、せめて、スフィアだけでも生き延びておくれ』
「だ、ダメです! 戻ってきてください! 私も、私も一緒に――」
ジェミンさんはブラックドラゴンに立ち向かっていった。
私は、ただただ泣き崩れるばかりで、どうすることもできなかった。
私はいつだってそうだ。
泣いてばかりで、何もできない――。
いつも怯えているだけだった私を、オリバーの皆はいつだって守ってくれた。
助けてくれた――。
それなのに、どうして私は何もできないの?
倒れていく仲間を見ていることしかできないなんて――。
無力な自分が恨めしい。
声が、聞こえなくなってしまう。
いつも、聞きたくなくても聞こえてしまう心の声。
それが一切聞こえない。
この広間には、もう生き残ってる人は誰もいないの?
もう、私に『声』を聞かせてくれる人はいないの?
あんなに嫌いだった自分の能力。
心が読める力。
それなのに、いざなにも聞こえなくなると――。
怖い。
恐ろしい。
私は、この世界で一人になってしまった。
絶対的な孤独感。
誰か、助けて。
誰でもいい――。
私を一人にしないで――ッ!
『――ッ!』
えっ?
何か聞こえた?
『スフィアさん、聞こえますか』
この声は、シャルノさん!?
魔王シャルノの心の声が、かすかに聞こえる。
消え入りそうな、奥の奥の奥。
その心の声が、私に届いたのだ。
『今、ソニアさんが私の魔法結界を解除してくれました。これがラストチャンスです。私を倒してください。それが、私を救うことにもなるのです』
うう、そんなこと言われても……。
私には、戦う力なんて――。
「ナイトさん……?」
目の前には、ナイトが立っていた。
心の声は聞こえない。
意識は戻っていないようだ。
それでもなお、私をドラゴンから守るために、立ち塞がる。
『あきらめない……、俺はッ、諦めないッ!!!』
力強い声が響きわたる。
ナイトの心の声が。
「う、うぅ、ナイトさん……」
でも、彼にはもう魔力は残されていない。
立ち上がったところで何も変わらない。
もう、私たちには、どうすることも…………。
「ナイト! これをっ!!」
「あ、あなたは――?」
「ふふ、ナイトのピンチを救うのは幼馴染である私の役目よね」
心の声が聞こえなかった……?
何故?
「そ、それは、黄金プリン? なぜあなたが……」
「詳しい説明は後! これでナイトの魔力は完全に回復したわ!」
ええっ!?
幻の黄金プリンにそんな効果があったなんて。
でも、ナイトの魔力が戻っても、意識は失ったまま。
これでは、いくら魔力が回復しても――。
いや、私にもできることがある。
アイゼン博士、お願い……力を貸して!
---
「う、ううん……」
「さあナイト、早くブラックドラゴンを倒しましょう!」
「き、君は、フライヤ?」
俺は寝ぼけているのだろうか。
博士が作ったゲーム世界の妖精フライヤが、俺の目の前にいる。
すぐ横には、スフィアが傷だらけで倒れていた。
「ナイトのダメージを肩代わりするなんて、彼女も無茶なことしますよね。ほら、彼女の頑張りを無駄にしちゃダメですよ?」
フライヤが優しく微笑む。
状況がいまいち掴めない。
――けれど、俺がやるべきことは一つ!
「左手からフレイムバースト、右手からサンダーボルト、合体魔法『フレイムボルト』ッ!」
究極の合体魔法をブラックドラゴンに放つ。
しかし、ブラックドラゴンもそれに応戦し魔法を使ってきた。
「あ、あれは、暗黒魔法『ダークトルネード』ッ!」
「うぐぐ、負けて、たまるかッ!」
ブラックドラゴンの放った魔法に押される。
くそう、ここで負けるわけにはいかないのにッ!
「……ッ!」
俺の合体魔法が闇に飲み込まれたッ!?
そ、そんな……。
闇の竜巻が俺を襲う。
俺の身体が無残にも切り裂かれていく。
強い、強すぎる……ッ!
――まだだッ!
まだ終われないッ!!
「ダークトルネードッ!!」
俺は瞬時に、ブラックドラゴンの放った魔法をコピーして撃ち返す。
同威力の闇の竜巻によって威力が相殺された。
「今だッ! ライトソードォ!」
聖なる光がブラックドラゴンの身体を貫いたッ!




