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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第八章 光と闇のデスティニー
69/73

67 前に進む力

 ライアンの放った突風により、なんとか迫りくる壁からの危機を脱した。



---



 俺は後ろを振り返る。

 漆黒の闇が広がり、不気味なくらい静かだ。


 心臓が激しく鼓動する。

 手足がガクガクと震える。

 怖い――。


 死ぬかもしれないという恐怖心。

 一人ぼっちの絶望感。

 今にも頭がどうにかなってしまいそうだ。


 ――でもここで、立ち止まるわけには行かない。

 頼れる仲間たちが俺を前へと導いてくれたのだから。


 勇気を振り絞り、前を向く。

 そして、一歩。

 また一歩と前に進み続ける。


 この先に何が待ち受けているのかわからない。

 それでも、前に進むしかないのだ。





 やがて、奥の部屋から赤い光りが見え始める。

 その光を頼りに進んでいく。


 すると、細い道が一気に開け地下とは思えないほどの広い空間に出た。

 そして、そこには赤い炎に焼かれて転がる無数の巨大モンスターの死骸。


「……!」


 勇者クレアが部屋の中心に倒れていた。

 俺は急いで駆け寄り、クレアを抱きかかえる。


「おい、大丈夫か! クレア、しっかりしろ!」

「ナイト……、ごめん、ごめんね……私が、魔王をいつまでも放置してたから、こんなことに……げほっ、ごほっ」


 今にも消えてしまいそうな弱々しい声。


「どうして、こんな無茶をしたんだ。ずっと一緒にいるって約束したじゃないか!」

「魔王を倒すのは、勇者の役目……。誰も巻き込みたくは、なかった……」

「バカヤロウ! 俺はお前の壁だッ! 誰が何と言おうと、俺はお前を守る。例え何があっても――だ!」

「だ、ダメ……だよ。もう、私、これ以上、誰も失いたくない――」


 勇者ファルスを失ったクレアは、誰かを失うことを極度に恐れている。


「ふっ、大丈夫だ! 俺は、そう簡単にやられたりしないっ! あのスライムの攻撃からも無事に生還したんだぜ? ちょっとは俺を頼ってくれてもいいじゃねえか」





 奥で目を閉じ微動だにしない魔王シャルノのほうへ向かう。

 シャルノの身体から魔力のオーラが溢れ出ている。


「シャルノ……、聞こえるか? ごめんな、お前がこんなにも苦しんでいたのに、俺は何もしてやれなかった。ありきたりな言葉だけで、励ましたつもりになっていた……」

「……ナイ、ト…………良かった、最後にあなたに会えて…………、もう、時間が、ありません……。早く私を、倒してください……。手遅れになる前に――」


 もう、迷わない――。

 もう、逃げない――。

 

 クレアだけに、この重荷を背負わせたりしない。

 覚悟を決めよう。

 誰かが犠牲にならなければ、この世界を救えないのなら――。


「勇者ファルスよ、再び俺に力をッ!」


 大丈夫、俺は一人じゃない。

 みんなが、俺を助けてくれた。


 だから、今度は――。


「ライトソードッ!」


 光の剣が魔王シャルノの身体を貫いた。

 その瞬間、光が闇に包まれる。


「なっ、なに!?」


 そして、部屋が闇にのまれていく。





「シャル……ノ?」


 禍々しい黒いドラゴンが姿を現した。

 こ、これが……魔王シャルノの真の姿だというのか!?


「ギャオオオオオオンッ!」


 ドラゴンの声が響き渡る。

 それと同時に、大気が震えるかのように振動する。

 俺は弾き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

 直接攻撃されたわけでもないのに、この威力……。

 桁が違いすぎるッ!


 ハハハ、デススコーピオンが可愛く思えるぜ。


 もはやこれまでだ。

 さすがに、こんな相手に勝ち目はない。

 近寄ることすらできやしないじゃないか。


「フレイムバーストォッ!」


 後ろから、巨大な炎が放たれる。

 しかし、当たる前に闇のオーラに吸い込まれ炎は消えてしまう。


「ハァハァ、何やってるの! 早く、早くアイツを止めなきゃ!」

「そんな、ボロボロの身体で何を言ってるんだ。今のアイツの攻撃を見ただろう? レベルが違いすぎる……。俺たちが敵う相手じゃないッ!」

「だから何? それで諦めるの? 私は勇者よ! この命に代えても、この世界を守るわ!」


 クレアは、まっすぐと前を向いて力強く言った。


 そうか、そうだよな。

 例え、敵わないと分かっていても、諦めたらそこでなにかも終わりだ。


 クレアは一人でも、諦めずに戦い続けていたのだ。

 それなのに、俺が諦めてどうする?

 

 戦うべき時は今なのだ!


「分かった、何としてもアイツを――、シャルノを止めるぞ!」


 今ならファルスの気持ちがよく分かる。

 俺には守るべきものがある!


 諦めてたまるかッ!

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