65 ナイトのスキル
砂漠の遺跡でなんとかデススコーピオンを倒した俺。
しかし、自分は倒した記憶がないという不思議な状況に陥っていた。
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「え、えっと、本当に俺が倒したんですか?」
「ええ、そうよ~。ファルスみたいで格好良かったわ~、ね?」
ミルフィさんが目を輝かせながら俺の腕に抱き着いてくる。
「ふ、ふん。オレだってあんなサソリの一匹や二匹、倒せたんだがな」
その様子を見たビッツェが不機嫌そうに言い放つ。
「でもナイト君、どうしてライトソードが使えたのかしら~? ひょっとして、本当にナイト君がファルスだったりして~、ね?」
「ち、違いますよ。俺はファルスじゃないですって」
だから離れてください。
ビッツェの嫉妬が爆発しそうで怖いです。
「ハハハ、どうせアイゼン博士の魔法道具かなんかっしょー? ナイトは僕と同じく魔力がないんだからさ」
「そ、そうですよ。ライアンの言う通り、博士の魔法道具を使っただけですってば」
よく覚えてないけどな。
でもこれ以上、変な誤解されても困るし。
「ちょっと、ごめんなさいね~」
そう言って、いきなり俺の服を脱がし始めるミルフィさん。
「なっ!? ちょ、何やってんすか。マズイですって! こ、こんなところで……」
俺が慌てて止めようとするも、ミルフィさんの力は思いのほか強くてそのまま脱がされてしまう。
ダメだよ、ビッツェが恐ろしい顔で俺のことを見てるじゃないか!
「おい、いいから大人しくしてろよ? ああん? 今から魔力検査してやっからよ! わかったな?」
「え、あ、はい……わかりました」
突然、ミルフィさんが魔法モードになってビビる俺。
隣で、今にも殴りかからんとしていたビッツェも急に大人しくなった。
この状態のミルフィさんには誰も逆らえないらしい。
それにしても、何故今更魔力検査なんだ!?
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しばらくしてようやく魔力検査が終わる。
「ハァハァ、死ぬかと思った……それで、何か分かったんですか?」
ミルフィさんが驚いた様子で俺のほうを見ている。
「おかしい、何この魔力量……。あなた、本当に何者なの?」
「えっ?」
ミルフィさんがおかしなことを言い始める。
「俺は魔力がなかったのでは?」
「ええ、最初に調べた時は、魔力は一切なかったはずよ~。でも、今調べてみたら、クレアちゃんの十倍、いや百倍以上かしら? とにかくあり得ない量の魔力だったわ~」
「つまり、どういうことなんでしょう?」
「私にも分からないわ~。魔力の量が変化することはよくあるけれど、魔力の無い人に魔力が宿るなんて話聞いたことないもの」
さっぱりわからない。
つまり、俺は魔法が使えるようになったのか?
「えいっ! フレイムバーストォ!」
しかし、何も起こらなかった。
「ププ、ナイト、何やってんの?」
「うるさい、笑うな! 魔力が宿ったっていうから使えるのかと思っただけじゃないか!」
結局、俺が魔法を使うことはできなかった。
いや、待てよ?
何か、魔法を使うためのスイッチがあるのかもしれないな。
例えば――。
俺が命の危機にさらされたとき、とか。
「そうね~、感情の高ぶりによってスキルが発動するというのはあり得ないことではないわ~。ほら、例のタイムリセッターさんのように、ね?」
ニースのことか。
確かに、ニースのスキルは深い悲しみからくる感情の変化が引き金となっていたな。
だとすると、俺のスキルは――。
「そういえば聞いたことあるな。死の極限に達した時に、相手のスキルを『模写』する能力」
「コピー、ですか?」
「ああ、そうだ。例えどんなスキルだろうと、そっくりそのまま自分のものにしてしまうんだよ」
「なにそれ凄い」
「まあ、コピー条件が死にかけた時限定だから、普通のやつじゃその能力に気付くことはないだろうけどな」
ビッツェがそんなことを言い始める。
「なるほど、それだわ~。だから、ナイト君はあの時、『スライム』に変化したのね~」
「え? 俺がスライムに変化ってどういうことですか?」
「あ、ごめんなさい~。このことはクレアちゃんから口止めされていたのよ~。でも、魔道兵器の新事実のこともあるし、ちゃんと話しておいたほうが良いのかしら~?」
俺が、スライムに変化!?
そういえば、ライアンも同じようなことを言ってたな。
魔道兵器の新事実ってのも気になる。
それになにより、俺自身の能力を知っておく必要があるだろう。
「ぜひ教えてください、お願いします」




