64 孤独な戦い
慟哭の砂漠の地下に広がる謎の遺跡。
そこで遭遇した巨大なサソリから逃げようとするも足を痛めて動けなくなってしまう。
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うぐぐ、ライアンのやつ本当に俺を見捨てて逃げやがった。
どうする、どうすれば良いんだ?
このままだと逃げることもできない。
戦わなきゃ殺されてしまう――。
サソリがすぐ俺の目の前までやってくる。
引きずっていた尻尾を振りかざし、俺を突き刺そうとしてきた。
「おっと、危ない」
空間圧縮の魔法道具で移動する。
しかし、レミエルのオリジナルと違い移動距離は割と短いようだ。
これでは、またすぐに捕まってしまう。
なんとかしなければ――。
俺はやればできる子。
今までだって熾烈な戦いを潜り抜けてきたじゃないか。
今、ここで死ぬわけには行かない!
手の震えがなくなった。
心が妙に落ち着いている。
「うおおおお、サンダーボルトッ!」
魔法道具を使い、サソリに強力な魔法を放つ。
その反動で思いっきり後ろに弾き飛ばされ、壁に思い切り頭をぶつけてしまった。
「いててて。な、何だ今のは……?」
おかしいな、アイゼン博士やライアンが使ってた時はこんなに桁外れな威力じゃなかったはずなんだが。
それに今、道具を使う前に魔法が発動したような……。
でもまあいい。
これで、あのサソリも跡形もなく消し飛んだだろう。
何故か足の痛みもすっかり消えていた俺は、その場に立ち上がる。
ふー、ライアンたちはどこへ行ってしまったのだろうか。
急いで合流しなければ――。
ズルズル、ピチャ。
背後から、不気味な音が聞こえてくる。
ま、まさか――。
「おいおい、冗談だろ? このサソリ、不死身かよっ!」
かなり手応えがあったのに、傷一つない巨大なサソリが俺に襲い掛かる。
「うぐあ……」
避ける間もなく、サソリの尻尾が俺の身体を突き刺した。
腹に激痛が走る。
全身から血とともに力が抜けていく。
だ、ダメだ、力が入らない。
意識が朦朧としてきた……。
クレア、ごめん。
ずっと一緒だって約束したのに――。
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ここは、どこだろう。
気付くと俺は、光り輝く謎の空間に立っていた。
死後の世界?
いや、以前来た場所とは違うな。
何だか、心が安らぐような場所だ。
「ここはまだ君の来るべきところじゃないよ」
「あ、あれ? 俺?」
目の前に、俺によく似た男が現れる。
優しく微笑み、俺の手を握りしめてきた。
「ハハハ、残念ハズレ。僕は、ファルスさ」
「ああ、クレアのお兄さんの……ってことはやっぱり俺は死んじゃったんだな」
「君はまだ死んでいない。まあ、このままだとちょっと危険かな? でも、大丈夫、僕が君に力を分け与えよう」
……?
どういうことだろう。
「ちょっと手荒いけど、許してくれよ? ライトソードォ!」
「え、ちょ、待って、うわあああッ!」
勇者ファルスに光の剣で切り裂かれる。
それと同時に、再び意識が遠のいた。
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「ハァハァ、な、なんだったんだ今のは……」
「ナイト君、良かったわ~。死んでしまったのかと思って心配したのよ~? ね?」
俺が飛び起きると、目の前にミルフィさんがいた。
そのすぐ横に、心配そうに俺を見つめるライアンとビッツェ。
そして、少し離れたところに、巨大サソリの死体が転がっている。
「ライアンがオレたちに教えてくれたんだ。ナイトが巨大サソリに襲われてるってな。それで慌てて引き返してきたってわけさ」
ビッツェが申し訳なさそうに言った。
なるほど、ライアンは逃げたわけではなく助けを呼びに行っていたのか。
そして、瀕死の重傷で倒れていた俺を見つけミルフィさんが治療してくれたと。
「でも、さすがですね。あの凶悪なサソリをいとも簡単に倒してしまうなんて……」
「ん、何を言ってるんだ? サソリを倒したのはお前だろう?」
ビッツェさんから思いもよらない言葉が返ってくる。
俺がサソリを倒した?
どういうことだ?
「うふふ、ナイト君、凄いわ~。伝説のモンスター『デススコーピオン』を倒しちゃうんだもの」
「デススコーピオン?」
「そうなのよ~。あの巨大サソリは、はるか昔にカラリア王国で最も恐れられたモンスターだったの。誰も倒すことができずに、どこかの遺跡に封印したらしいのよ~。まさかここがその遺跡だったなんて~、ね?」
ただの巨大モンスターの生き残りではなかったのか。
サンダーボルトをくらってもピンピンしてるわけだ。
でも何故だろう、サソリを倒したのが俺?
一体、何があったというんだッ!?




