61 巨大モンスター
「ふわああ、よく寝た。おーい、クレア、クレアー?」
昼過ぎまで寝ていた俺は、階段を下りていく。
「あれえ、クレアのやつ、どこに行ったんだろう?」
祭りの時間か?
いや、それなら俺も叩き起こされるだろうし。
そんなことを思ってると、突然、家の扉が勢いよく開く。
「ナイト、大変だよっ!」
「なんだ、ライアンか。一人暮らしが寂しくなったのか?」
「ち、違うよっ! 町にモンスターが溢れかえってるんだ! ドバイさんがなんとか食い止めてるけど、数が多すぎるんだ!」
クレアかと思ったらライアンだった。
また、寂しさを紛らわすためにつまらない嘘を言いやがって……。
せっかく俺がライアンに家を譲ってやったのに、こう毎日来られたんじゃ意味がない。
「あ、ナイト、さては信じてないな? 今回ばかりは本当なんだよっ! とにかく、ここは危険だ! すぐに避難しよう」
「え、おい、ちょっと引っ張るなって」
ライアンに引っ張られ、家の外へ出る。
「お、おい、これは何かの夢か?」
「だから、言ったじゃないか! 早く、逃げよう!」
巨大スライムに匹敵するくらいの大型モンスターが町を襲っている。
地獄のような光景が目の前に広がっていた。
「クレアは、クレアはどこだっ?」
「知らないよっ! ナイトと一緒に居ると思ってたし」
アイツなら、このモンスターたちと戦おうとするに決まってる。
「チィッ!」
「あ、ちょっと、そっちは危険だってばー」
無意識のうちにモンスターがいるほうへと走り出していた。
なんだよ、クレアのやつ、一人で勝手に突き進みやがって。
約束しただろうが、俺が壁になってやるって。
「ドバイさん、大丈夫ですか?」
「おお、これはナイト殿。いやはや、さすがの私もこれほどの量のモンスター相手だと腰にきますな」
割と余裕な表情で、次々と巨大モンスターを薙ぎ払っていくドバイ兵士長。
この人、本当に人間か?
「クレアを見かけませんでしたか?」
「はて、見かけてないですな」
ここにもいない?
じゃあ、一体どこへ行ったというんだ。
「ハァハァ、やっと追いついた。もう何やってんだよぉ! 早く逃げようよー」
「逃げたきゃ一人で逃げろよ……」
ライアンが文句を言いながら追いかけてきた。
「ナイト殿、城には多くの人々が避難しているはずです。そちらに向かわれてはいかがですかな。私は、この場から離れることができませんので」
俺とライアンは、カラリア城へと向かうことにした。
なんとかモンスターの攻撃をすり抜け、カラリア城へと到達する。
城の中に入ると、想像以上に人でごった返していた。
魔法結界が張られているため、ちょっとやそっとの攻撃では壊れることがないためだろう。
時折、中に侵入しようとするモンスターも、カラリア王国の兵士たちが速やかに退治していく。
さすがだ、ドバイさんには遠く及ばないがかなり強いな。
こんな状況の中で、宴会芸を披露していたジェミンに話しかける。
「うぇいうぇーい、一体、何がどうなってるのよさ! こんな大量のモンスターが町を襲うなんて前代未聞じゃないのよさ! あたいの宴会芸が見たくて世界中からモンスターが集まってるのかねえ?」
「んなわけあるか! それよりもお前、こんな時に一体何をやってるんだ」
「イーヒッヒ。こういう時だからこそだよ。不安ってのはね、時として人の心を暴走させるもんなのよさ。だからこうして、少しでも場の空気を和ませてるってわけさね!」
なるほど、ジェミンも色々と考えて行動してたのだな。
「あ、あのあの、ナイトさん」
「おう、スフィア、お前もここにいたか」
奥のほうからスフィアがやってきて、俺の腕をそっと掴む。
「大丈夫ですよ、ナイトさん。クレアさんは無事です。さっき、南にある『慟哭の砂漠』に向かうところをニースが見ていましたから。ですよね?」
「ああ、やけに慌てた様子だったぜ? この町の異変といい、一体何が起きてるんだ?」
慟哭の砂漠、最初に俺がクレアと出会った場所の近くだ。
あんなところで一体何を……?
「あ、あのあの、砂漠には行かないほうが良いみたいですよ。大量のモンスターと共に、地獄より魔王が蘇ったとか……」
「……? 地獄より、魔王が蘇るってどういうことだ?」
「さあ、私に聞かれても……ねえ、ソニア、あなたは一体何を聞いたというの?」
「う、うう……この、世界は……もう、終わりだ…………みんな、みんな死んでしまうンダアアッ!!」
突然、頭を抱えて暴れだすソニア。
ソニアの背中を優しく撫でながら、スフィアが言う。
「あ、あのあの、ごめんなさい。ソニアはさっきからずっとこの調子で……。とにかく、何か良くないことが起こっているのは確かです。それでも、ナイトさんは行くのですか? ふふ、愚問でしたね。どうかこれを持って行ってください。何かの役に立つかもしれません」
スフィアが、アイゼン博士の発明品が大量に入った袋を手渡してきた。
その中の一つを使い、慟哭の砂漠へワープする。
「おい、ライアン、なんでお前までついてくるんだ。スフィアの話を聞いてただろう?」
「ふ、ふふふ……、ぼ、僕だって正義の味方グレート仮面なんだよ? 僕が、世界を救って見せる。この手で!」
「めっちゃ足震えてるじゃねえか!」
「う、うるさい! ナイトだって、似たようなもんじゃないか!」
そ、そりゃあ、こんな巨大モンスターに囲まれてたら震えるだろうよ!
ああもういきなり絶対絶命の大ピンチってやつじゃねえか。




