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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第七章 平凡な日常
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58 記憶の中の過去

「い、いきなり何すんじゃあああ!」


 いきなり魔法をぶっ放してきたシャルノ。

 夢の中だっていうのに、普通に痛い、死んでしまう。

 まさか、最初から俺の命を狙って……?


「ひぃ、ごめんなさい。でも、ミルフィさんを見つけるにはこれが一番手っ取り早いんですよ」


 違ったようだ。

 そういう作戦なら最初からそう言えってんだ。

 いや、そんな作戦言われても却下したけどさ。


「大体、こんなことでミルフィさんが来るわけ……」

「あらあら、大丈夫ですか~?」


 来たよ、来ちゃったよ。

 夢の中とはいえ、どういう原理だコレ。


「さあ、ナイト! あとは任せましたよ!」

「えっ?」


 そう言い残して、シャルノが足早に去って行った。

 何を考えているんだアイツは。


「まあ、ひどい怪我、すぐに治療しますね~」

「え、い、いや、治療しなくても大丈夫だよ……ハハハ」


 ミルフィさんの鬼の形相治療はマジ勘弁。

 怪我は治っても心に深い傷を負ってしまう人が後を絶たないじゃないか。


「ダメよ~、怪我はちゃんと治しましょう~、ね?」

「本当に大丈夫だって、だ、だから……あ、あれ?」


 ミルフィさんが女神のような優しい笑顔で治療魔法を使ってる。

 ど、どうなってるんだ!?

 治療魔法は相変わらず痛いが、そんな痛みも吹き飛ばすような天使の微笑みだ。

 それに、ミルフィさんの太ももめっちゃ気持ちいい……。

 これなら、ずっと治療されてても良いくらいだ。


「はい、おしまい」

「え、もう? 残念……」


 だが、至福の時間もあっという間に終わってしまった。

 おっと、こんなことをしてる場合じゃないな。

 早いところミルフィさんを起こして、夢の中から脱出しなければならない。


 あれ?

 でも、どうやって起こせばいいんだ?

 まずはそのふざけた幻想をぶち壊す、とかなんとか叫んで殴れば良いのか?


 うーむ、わからん。

 シャルノにもっと詳しく聞いておけば良かったぜ。




「ミルフィさーん」


 どこか見覚えのある幼い少女がやってきた。


「た、大変なの、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!」

「まあまあ、クレアちゃんったら、そんなに慌ててどうしたの? まずは落ち着いて、ゆっくりとお話を聞かせて、ね?」


 この子がクレア?

 背も縮んでるし、胸もぺったんこだぞ?

 いや、胸は元からか……。

 って、そうじゃなくて、どうなってるんだ。

 若返りの魔法か何かか?


「クレ……ア? お前、何やってんだよ」

「えっ? あ、あれ? お兄ちゃん、無事だったのね! 良かったあ!」


 俺が話しかけると、クレアが勢いよく飛びついてきた。

 お兄ちゃんって、ファルスのことだよな。

 俺のことをファルスだと勘違いしてる?

 

「うふふ、クレアちゃんは本当にファルスのことが好きなのね」

「うん! 私、お兄ちゃん大好き!」


 ミルフィさんも俺のことをファルスだと思っているのか。

 そもそも、ファルスは死んでるはずなのに、どうして――?


 あ、そうか、そういうことか。

 ここはミルフィさんの夢の中。


 つまり、過去の記憶が夢となって表れているんだ。

 そう考えれば、クレアの背が小さいのも頷ける。

 ファルスが生きてることから、少なくとも三年以上前の記憶の世界というわけか。


「それよりクレア、お兄ちゃんが大変って言ってなかったっけ?」

「うん、大変なの! お兄ちゃんがスライムを倒しに行っちゃったの! あれ? でも、お兄ちゃんはここにいるし、不思議なの!」


 それってもしかして……。


「ファルス、どこへ行くの? ダメよ、スライムに手を出したら、ね?」


 ミルフィさんの制止を振り切り、俺はカラリア王国の城があるほうへと走り出した。

 ここが三年前の過去の世界だとしたら、勇者ファルスは――。


 止めなきゃ、このままだと勇者ファルスはアイゼン博士に殺されてしまう――。


 町は火の海と化している。

 逃げ惑う人々、そして巨大なスライム。


 立っている人が一人、その横で倒れている人がもう一人。

 状況から考えて、立ってるのがアイゼンで、倒れているのがファルスか?


「ファルス、私のことは放っておいてここから逃げるんだ、早くッ!」

「イヤだっ! 僕はもう、誰も死んでほしくないっ! この町は、この世界は僕が守るッ!」


 違った。立っているのがファルスだ。

 アイゼン博士は、瓦礫に挟まって身動きがとれないでいる。


「あ、危ないッ!」


 アイゼン博士を助け出そうとするファルスに向かって、スライムが火を吐いた。


「くっ、アイスシールドォ!」

 

 間一髪のところで、ファルスが左手で氷の盾を張る。

 それと同時に、巨大な瓦礫を右手だけで持ち上げた。


「アイゼン博士、さあ、早くここから逃げてください!」

「ぐ……、あ、足が動かない……。クク……どうやら、私はこれまでのようだ」

「大丈夫ですよ、傷なら僕がなんとかします。ダメージドレインッ!」

「な、ファルス、なんてバカなことを! 私の受けたダメージを肩代わりしようなど、そんなことをしたら……」


 勇者ファルスは、そのまま地面に倒れてしまう。


「な、なんとかしなければ、このままではファルスが……」

「さようなら、アイゼン博士……我が光りの祝福と共に、遠き世界へ誘わん! ライトムーブッ!」


 アイゼン博士の周りが光に包まれると、一瞬にして光と共に消え去ったのだった。

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