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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第七章 平凡な日常
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55 ドバイのお願い

「い、いきなり何を言い出すんですか!? クレアのことをよろしくだなんて……」


 ドバイ兵士長の発言に慌てる俺。


「あの子は、本当は臆病な子なんですよ。兄である勇者ファルスが死んでから彼女は、ずっと一人で頑張ってきた。勇者として、強くならなきゃならないと思っていたのでしょう。無理をして、気丈に振る舞ってきたのです。そのせいか、少し横暴さも目立ちますけどな」

「ハハ、少しどころじゃないかも……」

「勇者ファルスの婚約者だったミルフィ殿は、クレア殿の面倒をよく見てくれて、本当の姉妹のように仲が良かったのです。しかし、今回の結婚で、彼女はまた一人ぼっちになってしまった。だからこそ、ナイト殿には、彼女の支えになってもらいたいのですよ」

「そ、そんなこと急に言われても……」


 てか、み、ミルフィさんが勇者ファルスの婚約者!?

 衝撃の事実をさらっと言わないでほしい。


「私が、このようなことを言える立場ではないことは重々承知しているつもりです。ですが、どうか、クレア殿の力になってあげてほしいのです」

「か、顔を上げてください。俺には……無理です、できません。俺は勇者ファルスじゃないですし、クレアの力になれるかどうかなんてわかりません」

「ナイト殿……」 

「――けど、傍にいてやることならできます。これからもずっと、一緒にいるつもりです。だから、安心してください」


 




 とは言ったものの、クレアが俺のことをどう思ってるかもわからないしなあ。

 いくら俺がクレアの傍にいたいと思っていても、拒絶されたら何の意味もないわけで。

 ああもう、俺は一体どうしたら良いんだッ!?


「あらあら、ナイト君、こんなところでどうしたのかしら~?」

「み、ミルフィさんこそ、式の途中なのに何やってるんですか!」

「うふふ、クレアちゃんの姿が見えないから心配になっちゃったのよ~」

「あ……」


 クレアはまだ戻ってないのか。

 全く、どこで何してるんだか……。


「俺が探しておきますから、ミルフィさんは戻っててください」

「うふふ、それなら安心ね」


 笑顔で、その場を去っていくミルフィさん。

 勇者ファルスの婚約者……か。

 ビッツェさんはそのことを知ってるのかな?

 いや、知らないほうが良いこともあるか。

 俺が余計な口出しをするべきではないだろうし……。


 それにしても、クレアのやつどこへ行っちゃったんだろう。

 自分でミルフィさんの結婚式をやるって言い出したくせに途中でいなくなるなんて……。


「あ、あのあの、ナイトさん、ちょっと良いですか?」

「うわぁ、びっくりした。スフィアじゃないか。こんなところで一体何してるんだよ。お前は式に呼ばれてないだろう?」

「え、えっと、細かいことは良いじゃないですかー。それより、クレアさんの居場所、教えてあげましょうか?」


 まあ、どうせ、ソニアの地獄耳で結婚式のことを聞いたとかなんだろうけど……。


「それで、クレアはどこにいるんだ?」

「この先の中庭ですよ。ふふ、頑張ってくださいね。私も陰ながら応援してますから!」


 ……何を頑張るって言うんだ。

 スフィアに言われた通りに中庭へ向かう。


 そこには、寂しそうに空を見上げるクレアの姿。

 もしかして、泣いている――?


 どうしよう、なんて声をかけたら良いんだろう。

 ドバイさんやミルフィさんに頼まれた手前、ここで逃げ出すわけにもいかないし……。


 俺はかける言葉が見つからないまま、クレアの横にそっと立つ。

 クレアは俺に気付き、そっと涙を拭いて笑って見せた。


「ふふ、こんな時に、私何やってるんだろうね。ミルフィを祝福するつもりだったのに……」

「そうだな……」

「私ね、ミルフィの結婚に反対してたのは、自分が寂しいからなんだ。ミルフィがいなくなったら、私、一人ぼっちになっちゃうから……。酷いよね。自分勝手だよね。こんな私が勇者だなんて笑えるでしょう?」

「いや、そんなことないよ。クレアは誰よりも強くて優しい勇者さ。それに、一人ぼっちなんかじゃない……」

「えっ?」


 クレアを優しく抱き寄せる。


「俺が傍にいるから……」


 クレアは下を向き、押し黙っている。


「だから、俺と――、ぐはッ! いてええ、な、何しやがるんだ!」

「ふん! 何を言うかと思えば、壁のくせに調子乗ってんじゃないわよっ! 壁なんだから一緒にいるのは当然でしょ!」


 いきなり、腹を殴られ悶える俺。

 クレアは後ろを向いて、ギャーギャーと喚いている。


「な、殴ることはないだろうがああ!」

「ふん、一発で済んで良かったと思いなさいよね!」

「おい、どこ行くんだよ!」

「式に戻るのよ! あんたもそのつもりで私を呼びに来たんでしょ?」


 そう言って、早歩きでその場を去っていくクレア。

 ……な、なんだなんだ一体。

 俺、何か間違ったのかな……?

 ショックのあまり、茫然と立ち尽くす。


 すると、突然、クレアが振り返る。


「何やってんのよ。早く戻るわよ! まったくナイトは本当にトロイんだから!」

「え、あ、はい、す、すいません……」


 なんで俺が謝ってるんだろう……。

 まあいいか。

 少しは元気を取り戻したみたいだし。

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