54 結婚式
「け、結婚式?」
「そうよ! この際だからパーッとやりましょうッ!」
クレアが拳を固く握りしめ元気いっぱいに言った。
「お、おう、俺は構わないけど……」
「よし、決まりね! フフ、思い出に残るような素敵な結婚式にするわよー!」
ドタバタと慌ただしく準備をし始めるクレア。
やれやれ、アイゼンの一件で落ち込んでいたかと思えばすぐこれだ。
まあ、こっちのほうがクレアらしいけどな。
――そして、結婚式当日となった。
「ほ、ほほほ、本日は、お、お、お忙しい中、お集ちゅまりいただきゅぃ……」
こういう場所でのスピーチは慣れていないのか、噛みまくっている新郎。
「あらあら、ビッツェさん、落ち着いてください。ね?」
「あ、ああ、すまない。こんな大勢の前で話すのは緊張してしまうな」
それを新婦が優しくフォローする。
結婚するなんて聞かされた時は驚かされたものだが、案外お似合いの夫婦なのかもしれない。
ミルフィさんと、ビッツェの結婚式。
当初は式を挙げる予定はなかったらしい。
理由は、ビッツェが天候を司る魔法使いのためだ。
なんでも争いの火種になるから、その存在は世に知られてはいけないらしい。
しかし、暴走した勇者クレアは誰にも止められなかった。
本来ならば、ステイシアにある大きな大聖堂で式を挙げるのが一般的らしいのだが、今回はカラリア王国の一室。
あくまでも内密に式を挙げることになった、というわけだ。
「しかし、ミルフィさんとビッツェの結婚には反対してたんじゃなかったっけ?」
「そうよ! でも、良いの。ミルフィが決めたことだもの。それなら、盛大に祝ってあげなきゃね!」
少し寂しそうに微笑むクレア。
仲の良かった親友の結婚、心境は複雑らしい。
「美味しいニャ! こんなにたくさんの料理が食べられるなんて最高に幸せニャア!」
「レミエル、あまりはしゃがないでくださいよ。他の方の視線が痛いです……」
「ハハ、レミエルは相変わらずだなあ」
式のために、ビッツェが特別に大量の料理を降らせたのだ。
その料理を前に、元気いっぱいのレミエル。
そして、その横には、きょろきょろと落ち着かない様子の魔王シャルノ。
「ん、どうした? シャルノも遠慮せずにいつも通りガンガン食べちゃっていいんだぞ?」
「あ、あの、本当に私が呼ばれちゃって良かったんでしょうか? わ、私、魔王なんですよ?」
俺が尋ねると、小声でそんなことを言うシャルノ。
そのシャルノの頭をぽんぽんと撫でる。
「まだそんなことを気にしてたのか。もう気にするなって言っただろ? いいか、こういう時は笑顔だ! 笑ってれば、悲しいことも全部忘れて元気になれる。ほら、シャルノも笑ってみろ」
「フフ、こう、ですか?」
「そうそう、そんな感じだ。ほら、元気、出ただろ?」
「はい。よーし、それじゃ、遠慮なく頂ますね!」
「おう、遠慮なんてするもんじゃないぞ。どうせビッツェがいくらでも降らせてくれるんだからな」
シャルノが元気を取り戻し、物凄い勢いで目の前の料理を次から次へと平らげていく。
大食い魔王とはいえ、あんな小さな身体のどこに入っていくんだろう。
やつの胃はブラックホールか何かか?
「い、良いなあ」
「ん? シャルノがどうかしたのか?」
ボーっとシャルノを見つめているライアン。
「あっ! いや、なんでもないぞ! 僕はロリコンじゃない。本当だぞ!」
「俺は何も言ってねーよ」
まあいいや、こいつは放っておこう。
「いいなー、結婚式! 私もナイトと結婚式挙げたいなー? チラチラ」
「ユウナ、すぐそうやって俺をからかうなよ。っていうかチラチラとか自分で言うな! アホの子だと思われるぞ」
「からかってないよー? 言ったでしょー、私はナイトのことが好きなんだって!」
「ぐぬぬ……そんな、真剣な顔で言われると、ちょっと恥ずかしいんだが」
「やだー、もう照れないでよー、うふふふー」
幼馴染のユウナが、いつになく上機嫌だ。
レミエルに家を壊され、放置プレイしたことはもう根に持ってないのかな。
と、そこでいきなり氷の刃が飛んできた。
「ぐはぁ! おい、クレア、いきなり何するんだ!」
「別に」
……?
いきなり不機嫌になるクレア。
席を立ち、どこかへ行ってしまう。
「なんだアイツ」
「ナイト殿、ちょっと良いですかな?」
「え? あ、はい、なんでしょう?」
俺は、ドバイさんに呼ばれ、そのまま奥の部屋へと連れて行かれる。
「え、えーっと、な、なんでしょうか?」
「なぜ、私が呼び止めたか分からないのか?」
うーん、なんだろう?
はっ! ま、まさかドバイさんは俺に気があるのか!?
いや、それは困る、困るぞ。
俺にそんな気はさらさらない。
なんとか断らなければ……。
断ったら、斬られるとかないよね? ね?
「ふむ、本当に分からないようだな」
「え、えっと……」
俺が返答に困っていると、ドバイさんがふうと溜息をついた。
「ナイト殿」
「は、ひゃい!?」
そして、片膝をつくドバイさん。
ま、まじでプロポーズ!?
「クレア殿のこと、よろしくお願いします」
「は、はい!?」
意表を突かれた俺は、ドバイさんを二度見してしまうのだった。




