53 ニースの行方
「お前ら、どうしてここが?」
「あ、あのあの、ソニアの地獄耳のおかげです。アイゼン先生とナイトの声を聞いて……」
「なるほど、そうか……」
俺は、ボロボロの身体を引きずり、スフィアに話しかけた。
良かった、三人とも無事だったんだな。
あ、あれ……?
三人?
「ニース、ニースはどこだ!?」
「え? 一緒じゃなかったのですか?」
……!?
そういえば、昨日から姿を見かけていない。
アイゼン博士に聞いても、ニースがどこへ行ったかは知らないらしい。
「ええ? ニースがいない!? どういうことなのよさ! ソニア、早く地獄耳でニースを探しておくれよ」
「……」
「だ、ダメです。ニースの声は聞こえてこないみたいです。どどどうしましょう?」
「よし、クレアの移動魔法でもう一度レジェンダに行ってニースを探そう!」
しかし、クレアは眠ったまま目を覚まさない。
「すまない、永久睡眠の魔法だ。二度と目覚めることはないだろう……こうなったら私が死んでお詫びをおおお!」
「わー、誰かアイゼン先生を止めてくださいー」
永久睡眠の魔法……、どこかで聞いたような?
「ヌッヘッヘー、眠ってる勇者を起こす方法はただ一つ、キスだ!」
「またお前はこんな時に、そういうことを……ん、待てよ? 確かあの時は――、そうか! ミルフィさんだ、急いでミルフィさんを連れてくるんだ!」
ありとあらゆる状態異常を回復させることができるミルフィさんなら目覚めさせることができるはずだ。
「あ、あのあの、移動魔法が使える勇者さんが眠っているのでレジェンダには行けませんよ?」
そういえばそうだな。
魔王やレミエルも眠っちゃってるし、戦力的にあの危険地帯を抜けるのは厳しい。
「よし、ゴンタ! お前も悪魔なら移動魔法の一つや二つ使えるだろう? ここはお前の力を見せてくれ!」
「あ、用事を思い出したヌー! ナイト、また今度遊ぼうな、さらばだヌー!」
「お、おい、ゴンタアアアッ! あの野郎、逃げやがったな!?」
ゴンタが再び魔道書の中へと帰って行った。
なんて使えない悪魔なんだ。
「ククク……、安心したまえ。私がレジェンダへ行けるワープゲートを持っている」
「わ、ワープゲート!? そんな便利なものがあるなら早く出してくれよ!」
アイゼンが指をパチリと鳴らすと、目の前に扉が出現した。
「クク、勇者の移動魔法を参考に私が発明したものだ。残念ながら、行き先は一つしか設定できないが、それでも私の発明品の中ではかなり優れた代物で……」
アイテムを売り込むセールスマンのごとくしゃべり続けるアイゼンを無視して、俺はゲートに飛び込んだ。
レジェンダに飛んだ俺は、すぐさまプリムレアにある天候を司る魔法使いビッツェの家へとやってきた。
「ミルフィさん、大変なんだっ! クレアたちが眠っちまって……」
「あらあら、ビッツェさんったら、こんな真昼間からダメよ~……あら、ナイト君、どうしたの?」
「……あ、あの、取り込み中のところすみません、緊急事態なので助けてもらえませんでしょうか」
俺は、これまでの経緯をミルフィさんに説明する。
話の途中でミルフィさんが何かを思い立ったように席を立った。
「どうしたんです?」
「ふふ、まあ、ついてらっしゃい。ね?」
言われるがまま、ミルフィさんの後についていく。
「に、ニース! 無事だったのかっ!」
「ふ、ふにゃあ……僕はもうだめかもしれない……」
「おい、どうした、しっかりしろおおおお!」
案内された部屋のベッドに、やせ細り青白い顔をしたニースがいた。
まるで何か恐ろしいことでもあったかのように目はうつろで今にも死にそうだ。
「ミルフィさん、ニースを早く治してあげてください!」
「あらあら、治療なら昨日たっぷりしましたよ~? ね?」
「ひ、ひぃいい、も、もう治療はやめてえええ、なんでもしますから……あれだけは勘弁してええええ」
ミルフィさんの顔を見るなり、布団に潜り込みガタガタと震えだすニース。
どうやら、ミルフィさんの鬼の形相による治療がトラウマになったようだ。
その後、ミルフィさんを連れ魔道図書館へ戻り、クレアたちを起こす。
こうして、無事に悪の秘密組織オリバーとアイゼン博士が引き起こした事件は無事に解決したのだった。
「おい、ライアン。これはどういうことだ」
「ハハ、今から片付けようと思っていたところなのだよ」
俺が疲れて家に帰ると、のんびりとゲームをしていたライアンに掴みかかる。
部屋は散らかり放題。
俺やクレアを心配した様子は微塵も感じられなかった。
「嘘つけ! 大変なときに、自分だけ人の家でのんびりとゲームなんてやりやがってええええ!」
「な、何言ってんだよ! 勇者を追いかけて行ったから今まで仲良くやってたんだろ? うらやましいじゃねえかこのやろう!」
「そんなことしてねえええ! いいからさっさと部屋を片付けろ! いい加減追い出すぞ! この変態仮面っ!」




