50 真の目的
「ありがとう、シャルノが来てくれて助かったよ。一時はどうなることかと」
「いえ、私にできることがあればいくらでも力を貸しますよ。ナイトは私の命の恩人ですから」
レミエルの空間圧縮移動の被害にあったユウナはシャルノの早急な回復魔法のおかげでなんとか一命を取り留めた。
治療の後遺症のせいかベッドでうなされているが見なかったことにしよう。
「魔王様は、命の恩人とか関係なしにナイトっちの力になりたいのニャア!」
「ふふ、レミエルは余計なことを言わなくていいですよ?」
シャルノの笑顔が怖い。
「そうですか、アイゼン博士と勇者の行方を知りたいわけですね。わかりました。私がなんとかしましょう」
何やらカードのようなものを取り出し、徐にテーブルの上に並べ始める。
これで居場所がわかるのだろうか?
「……! 勇者は東の方角にいるようです!」
「なるほど、東の方角にー、ってアホか! そんなんじゃアバウトすぎてわからんわ! しかも、指をさしてる方向は西じゃねーか!」
「うう、わ、私ナイトの役に立ちたくて……。勇者の居場所が分からないなんて言えなかったんです、ぐすん」
がっくりと肩を落とすシャルノ。
無理なら無理って言おうね、魔王様?
「困りましたね、レミエルならサカナをぶら下げておけばすぐに見つかるのですが……」
「ニャニャ? サカナあるニャ? サカナ食べたいニャア!」
「例え話ですよ、レミエル」
再びアイゼン博士の研究所にやってくるも、手がかりは残されていなかった。
昨日から調査しているカラリア王国の兵士たちに聞いても行方はわからないままだそうな。
アイゼンは一体どこへ消えたというのだろうか。
俺の力を見るって言ってゲーム世界に放り込んで放置プレー?
最初から時間を稼ぐつもりだった?
一体何故……?
考えろ、やつの取った行動を――。
きっと、どこかにヒントが隠されているはずだ。
どんな些細なことでもいい。
彼の言葉の裏に隠された真実を見つけ出すんだ。
三年前までは、評判がよくオリバーの幹部からも慕われていたアイゼン。
そのアイゼンが、勇者ファルスを殺しレジェンダの町に移り住み密かに実験を進めてきた。
何故、オリバーの連中から離れなければならなかった?
実験をするだけなら、ニースたちを拘束したほうが手っ取り早かったはずだ。
何故、嘘の芝居をしてまで、自分が死んだと思わせなければならなかったのだろう。
人の心や身体を操れるなら、そんなまどろっこしいことをする必要がない。
もしかして、アイゼン博士の真の目的って――。
「シャルノ! ミニドラゴンを出してくれ! カラリア王国に戻るぞッ!」
「一体、どうしたというんですか? あ、ナイトもあのドラゴンの風の心地よさが癖になったんですね?」
「ちげーよ! 分かったんだ。アイゼンの居場所が! そして、これからやろうとしてることが!」
シャルノが召喚したミニドラゴンの風に乗り、カラリア王国へと舞い戻る。
「おお、ナイトっち凄いニャ! 今回は着地に成功ニャ!」
「いててて、どこがだよ! 思いっきり頭から突っ込んだじゃねーか!」
「絵的に成功なのニャ!」
笑いを取るために体を張ってるお笑い芸人か俺は!
「魔道図書館……? こんなところで何をするのニャ? あ、もしかして、探索魔法を習得する気なのニャ?」
「いや、クレアを連れ戻しにきた。そして、アイゼンをぶっ倒す」
「ニャニャ? やっぱり、アイゼンは悪者さんニャ? 懲らしめるニャ?」
「レミエル、いいから少し黙ってなさい。ナイトにはきっと全てまるっとお見通しなのですよ」
そ、そんな目を輝かせて言われると困るな。
可能性はゼロじゃないというだけで、確証はない。
アイゼンがここにいる確率はおそらく一割にも満たない。
でも俺はその可能性に、賭ける!
「……よくここが分かったね。君は本当に恐ろしいよ」
「アイゼン、クレアを解放しろっ! もうこんなことはやめるんだッ! こんなことをしても何も変わらない。失った時間はもう戻ってこない!」
魔道図書館の最深部、悪魔の書物と言われる禁書が封印されている場所にアイゼンはいた。
「ククク……、時間は取り戻せるよ。私の『時間制御』の力があればね。君がいくら足掻いたところで何も変わらない。神である私の力の前では、人の力など無に等しいのだ!」
「また、強がりを言って自分を偽ろうとするんですね、アイゼン博士。ドバイさんから聞きましたよ、あなたは、こんなことをするような人じゃない。本当は弱い人間である自分の無力さを嘆いている、そうでしょう?」
「ククク、クハハ、ハーッハッハ! おかしなことをいう小僧だ! 貴様に何がわかるッ! 私の何がわかるというのだッ! そんなに死にたいならば見せてやろう。私の本当の力を!」
アイゼンが、空間移動で俺の後ろへと回り込む。
「クク、これ以上、邪魔をするならば容赦はしない。神の力の前にひれ伏すが良いッ!」




