49 アイゼン博士と七つの発明品
「おー、これはこれはナイト殿。またお会いしましたな」
「ど、ドバイさん! ってことはこの兵士はカラリア王国の……」
「そうです。三年前から行方不明だったアイゼン博士の目撃情報がありましてな、探しに来たのですよ」
俺を取り囲んでいたのは、カラリア王国の兵士だったようだ。
ドバイ兵士長が後からやってきて、俺の身柄を解放してくれた。
「ナイト殿もアイゼン博士に用があって来たのですか? いやはや、彼の発明品は全世界でもトップレベルの水準ですからな。カラリア王国としてものどから手が出るほど欲しい逸材なのですよ。この町の文明レベルが他の都市よりも格段に進んでいるのは、アイゼン博士のおかげなのでしょう」
「そ、そのことなんですが……」
俺は、アイゼン博士が勇者ファルスを殺害した真犯人だということを告げる。
それを聞いた兵士長が少し間を置くと、険しい顔をする。
「ふむ、あの優しいアイゼン博士がそのようなことをするとは思えませんな。何かの間違いなのでは?」
「えっ? そ、そんなはずは……」
「ああ、いやいや、別にナイト殿のことを疑っているわけではないのですがね」
そういって、ドバイさんは首を左右に振る。
まさか、ドバイさんはアイゼンのなんちゃら制御で洗脳されているのか?
ふむ、少し探りを入れてみるか。
「アイゼンは今どこにいる?」
「さあ、私たちが来た時にはすでに誰もいませんでしたから」
あれ?
兵士長は、アイゼンと会っていない?
だとすると、洗脳もされていないことになるが……。
わからねえ、何がどうなっているんだ。
「博士の発明品ってどんなものがあるんだ?」
「カラリア城の魔法結界や、治癒魔方陣なんかも博士の発明品ですな。他にもスライム警報装置、ワープゲート、体温を一定に保つ宝石など、生活には欠かせないものも多くありますぞ」
……!?
この世界にある、便利グッズの大半が博士の発明品なのか!?
そんな優れた発明家である博士が、何故あんな非道なことを……。
「博士は、固有の魔法やスキルをなんとか一般人にも使えるようにしてくれた偉大なお方なのですよ。彼のおかげで、スライムの犠牲者は減り、また復旧も短時間かつ迅速に行えるようになったりと、まさにこの世界の救世主と言っても過言ではありませんな」
ドバイさんは、そう言って席を立つ。
救世主……、俺が見てきたアイゼンとは似ても似つかない言葉だ。
「なので私はアイゼン博士が勇者ファルスを殺すなど考えられませんな。アイゼン博士は、全世界の希望。いずれ、食料を降らす機械をも発明してくれることでしょう」
沈み行く太陽を見つめながらアイゼンが優しく微笑んだ。
「ねー、ナイトー、ナイトってばー、人の話聞いてるのー?」
「え、ああ、聞いてるよ」
夜も更けてしまったので、俺はレジェンダの町に住むユウナの家へとやってきていた。
俺が事情を話すと快く泊めてくれることになった。
しかし、アイゼンやクレアがどこへ行ったのかはわからないままだ。
クレアは、無事なのだろうか。
アイゼンに変なことをされてなければいいのだが。
他のオリバーの連中は今頃どうしてるだろうか。
スフィアはそろそろ意識を取り戻した頃かな、ジェミンがついてるし大丈夫だとは思うけど。
飛び出してったソニアは……。
「ねー、ナイト、やっぱり聞いてないでしょ!」
「え、あ、ごめん。何の話だっけ?」
「もー! せっかくナイトと二人っきりの夜なのにつまんなーい!」
ユウナが頬をぷくーっと膨らませて、ベッドの上で駄々をこねる子どものように手足をばたつかせて暴れている。
成長したかと思えば、すぐこれだ。
「あれ? ベッドが一つしかないみたいだけど、俺はどこで寝ればいいんだ?」
「ここだよ、ここ! 一緒に寝るの! 幼馴染なんだから当然でしょう! えへへ、ナイトと一緒に寝るなんて昔を思い出しちゃうね!」
い、一緒に……寝る!?
平然ととんでもないことを言いだしたぞ、こいつ。
幼馴染関係ねーし!
「さ、さすがにそれはマズイだろ。俺たち、もう子どもじゃないんだぞ?」
「やだもう、ナイトったら子どもじゃないだなんて……!」
照れながら俺の肩をバシバシと叩いてくるユウナ。
「あ、あれあれ? ナイトー? 寝ちゃったの? ねえ? ねえってばー!」
俺は、いつまでもハイテンションなユウナをスルーして寝たふりをする。
「おはようさんニャア!」
「うぐあっ!?」
翌朝、建物を破壊して現れたるは、猫耳のレミエル。
「ど、どうしてここに!?」
「ニャハハッ! 魔王様もうちも今はレジェンダに住んでるからニャ! ナイトっちが来てるって聞いてすっ飛んできたニャ!」
すっ飛んでくるのはいいとして、家を壊すのはやめてほしい。
ユウナ、ごめん。
俺のせいで、お前の家が壊れてしまったよ。
「あ、あれ、ユウナは?」
「その本棚の下敷きになってるニャ!」
「うわあああああ、笑顔で言うな! 早く、早く助けないと!」
慌てて本棚をどかす。
「ユウナ、だ、大丈夫かっ!? だ、ダメだ! 意識がない! どどどうしよう!?」
「ニャニャ! それは大変ニャ! 誰がこんな酷いことを……」
「お前だ、お前!!」
「身体を無理に動かしてはダメニャ! 落ち着いて、まず外傷がないかを確認して……そして、これを食べさせるニャ!」
「おお、回復アイテムか……ってアホかあああッ! ポイズンフィッシュなんて食わせて殺す気かっ!」
てんやわんやしていると、誰かが部屋に入ってくる。
「ふふ、相変わらず、騒がしいですね。近所迷惑になりますよ?」
「しゃ、シャルノ!?」
魔王シャルノがひっそりと現れた。




