48 デスゲーム
「おい、こっから出しやがれ!」
「ククク……、ゲームがクリアできたら出してやろう。ククク、君も知ってのとおり、痛みもリアルに再現されている。つまりゲーム内の死は、現実世界の死を意味している。どうだい、スリリングだろう? ククク、精々頑張ってくれたまえ」
アイゼンは、そう言って姿を消した。
くそ、こんなゲームで遊んでる場合じゃないっていうのに……。
「ピギィッ!」
「おっと、危ないっ!」
背後からモンスターが襲い掛かってくる。
よし、魔法で迎撃だ。
……。
あ、あれ?
魔法が打てない。
「おかしいな、このゲーム、前にプレイしたときには強力な魔法が打てたはずなのに……」
「それは当然ですよ? あなたのスキルは現実世界と同じものに設定されていますからね」
「だ、誰だお前はっ!」
「このゲームの案内を任されたフライヤです。よろしくお願いしますね」
小さい妖精が現れ、くるくると俺の周りを飛び回りながら挨拶をしてくる。
デスゲームの割に随分と親切設計だな。
「現実世界と同じスキル……」
「どうかしましたか?」
「なあ、俺って何のスキルが使えるんだろう?」
「えっ!? 何を言ってるんです? 自分のスキルを把握されていないのですか?」
「え、えっと、うん、まあ、そうだな」
確か俺は魔力のない普通の人間だったはずだ。
アイゼンを殴ったときは無我夢中だっただけだし……。
「とにかく、このゲームをクリアしないとここから脱出することは不可能です。早くラスボスのジャイアントパンダを倒してください」
「え、ラスボスってジャイアントパンダなの? あの愛らしい動物を倒すのは気が引けるなあ」
とはいえ、ここでのんびりと雑談しているわけにはいかないな。
「ぴ、ぴぎぃ……」
後ろから襲い掛かってきたモンスターが暇そうに待ち構えている。
あ、そういえばこのゲーム、ターン制だった。
「なるほど、つまり俺が何の行動もしなければやられなくて済むというわけだ」
「せこっ!」
ふむ。
このまま何もしないと、ゲームもクリアできないか。
「よーし、右手からフレイムバースト、左手からサンダーボルト、合体魔法フレイムボルトッ!」
しかし、何も起こらなかった。
「……何をされているんですか?」
「ゲーム世界なら使える気がしたんだ」
こんなことなら、古の図書館で異世界の魔法のことを調べておけばよかった。
悪魔のゴンちゃんなんかと戯れていたせいだな、うん。
「ピギィッ!」
「痛えッ! このやろう、俺はまだ何の攻撃もしてないだろうがッ!」
「いや、効果のない魔法を使ったじゃないですか」
「ええええ、あれはギャグだよ、ギャグ。あんなのを攻撃と見なさないでくれよ」
所詮は、ゲームの世界か。
俺の渾身のギャグが通用しないなんて。
かくなるうえは……。
「逃げるッ!」
「ええ!? 逃げちゃうんですか?」
ふー、なんとか逃げ切れたようだ。
「何やってるんですか。こんなんじゃゲームクリアなんてできませんよ? 経験値も獲得できないじゃないですか」
「ん? 経験値とかあるのか」
「もちろんですよ。スキル以外は以前のゲーム仕様のままですからね!」
なるほど、つまり……。
「あっ! そこは、博士のデバッグルームじゃないですか! そんなところで何を……」
「何って、ちょっとレベルを調整しようかと」
「そ、そんなずるいです、せこいです! 正々堂々とクリアしてくださいよ!」
「こんなところに勝手に連れてきた博士の作ったゲームなんてまともにやってられるかってんだ」
ふふ、ゲーマーのナイトさんにゲームで勝負を挑もうなんて百万年早いわ!
こんな、一朝一夕で作ったようなゲームは俺の手にかかれば……。
さてと、レベルもカンストしたことだしさっさとラスボスを倒すとするか。
ラスボスのジャイアントパンダを召喚する。
「ほわー、ほわほわーっ!」
「ちげえ! これパンダじゃねえ! どっからどう見てもニワトリじゃねえか! つーか鳴き声がきめえ!」
「いえ、正真正銘のジャイアントパンダですよ」
「そ、そんなバカなッ!」
これは、博士のセンスなのだろうか……。
「うりゃっ!」
「ほ、ほわーッ……」
レベルを調整したとはいえ、通常攻撃を一発当てただけで倒しちまった。
「よっしゃ、ラスボス討伐完了!」
「……ど、どうしよう。博士に怒られちゃうよぅう」
「だいじょーぶ、博士は俺が倒すからッ!」
フライヤが落胆しているが、適当に励ましておく。
しばらくすると、辺りが暗くなり歪んでいく。
どうやら元の世界へと切り替わったようだ。
「ふー、なんとか戻ってこれたぜ」
アイゼンやクレアの姿が見えない。
ま、まさか、俺をゲーム世界に閉じ込めてクレアと……ッ!?
あのクソ野郎ッ!
どこへ行きやがった!?
俺の実験とやらを放棄して、クレアとイチャつくなんていい度胸じゃねえか!
レベルがカンストした俺の力を見せてやるぜ!
おっと、それはゲーム世界だけの話か。
と、そこで多くの足音が聞こえてきた。
どうやらこっちへ向かってきているようだ。
「怪しい人物を発見しましたっ!」
「えっ?」
突然現れた、大量の兵士に取り囲まれてしまうのだった。




