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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第六章 悪の秘密組織オリバー
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44 バッドエンドをぶち壊せ

「これで、一件落着だな」

「そうですね、私たちは勝ち取ったんですよ。新しい未来を!」


 ハイタッチをして喜びを分かち合う。

 このために、何十回もの時間を繰り返してきたんだ。

 感動のあまり涙がでてくるよ。

 これで、クレアに魔法で焼かれる未来から解放されたというわけだ。


 ん? 待てよ?

 これで本当に解決したのだろうか。

 何かが引っ掛かる。

 大事なことを忘れているような、そんな気がする。


「な、なあ。これだと、俺、このままクレアに会えないんじゃないか?」

「は、はい、そうですね。発信機を破壊しただけなので、クレアさんに会ったら全てが無駄になってしまいますぅ」

「ええっ!? ちょっと待って、それじゃあ根本的な解決になってないじゃないか。なんだよ、ぬか喜びかよ。よーし、また時間を戻そうッ!」

「む、無茶言わないでくれよ。僕は意識的に時間を戻してるわけじゃないんだから」


 な、なんだと。

 待って、待ってよ。

 これが俺の望んだ未来なのか?

 俺が苦労して勝ち取った未来が、クレアに会うことができない未来だというのか?


「そんなのイヤだッ! 今すぐクレアに会いに行くッ!」

「待て、早まるな! お前だけ行っても時が戻るかどうかわからないんだぞ?」

「じゃあ、お前もついてこいよ! それで再び時間を元に戻してくれよッ!」

「あ、あのあの、まずは落ち着いて状況を確認しましょう」


 俺が部屋から飛び出そうとすると、ニースに腕を掴まれる。

 おっと、俺としたことが何をこんなに取り乱しているんだ?

 べ、別にクレアに会えなくたって……。


 ……。


「あ、あのあの、ナイトさんはクレアさんのことが……」

「言うな! それ以上言ったらお前の口を縫合して二度としゃべれなくしてやるッ!」

「ひいぃ、ごめんなさい、ごめんなさい。私ったらつい余計なことをッ!」


 あー、もう、どうしてこうなった。

 あんな乱暴者の勇者のどこが良いって言うんだよ。


「うぇいうぇーい、そう落ち込むなって。未来ってのはさ、どんな結末だろうとそれを受け入れるしかないのよさ! 時間をいくら捻じ曲げたって、自分の思い通りにはならないもんなのよさ。だから、あたいがナイトを……ってスルーかいッ!」

「なあ、ソニアー、勇者が今何してるか聞こえないか?」

「……」


 うるさいのは放っておいて、静かに体育座りをしているソニアに話しかける。

 相変わらず返事はないが、何か言いたげな表情をしている。


「あ、あのあの、勇者さんは、泣いているみたいですよ?」

「クレアが泣いてる? なんで?」

「え、えっと、好きな人を……また失ったから?」

「好きな人? それって……」

「あ、あのあの、やっぱりこれ以上は言えません、こういうのはやっぱり自分で確認したほうが良いっていうか……」


 クレアには、好きな人がいたのか。

 誰だろう?


 失ったっていうのはどういうことだ?

 ううむ、気になる。


「あ、あのあの、どこへ行くんです?」

「お、俺、やっぱりクレアのところへ行くよ。例え、クレアに焼かれる未来しか残されてなかったとしても、俺はそれでも構わない。このまま、クレアにずっと会えないなんて耐えられない。だから――」


 俺がそういうと、他の四人が立ち上がった。


「ふん、一般人だなんだって言い訳ばかりしてたくせに言うようになったじゃないのさ! あたいに任せな! とっておきの宴会芸を披露してあげようじゃないのさっ!」

「僕も行こう。やはり、未来は自分の手で切り開かねば意味がないからね」

「あ、あのあの、私も行きます。三年前の因縁はここで終わりにしましょう。この手でッ!」

「…………行こう、新しい未来へ」


 みんな……。


「ありがとう、俺なんかのわがままを聞いてくれて」

「なーに、良いってことよ! どうせバッドエンドになっても時間は戻るんだから。な?」

「……元も子もないこと言うなよ」


 けど――。

 タイムリセットはもうこれで終わりだッ!

 次があると思うから、いい加減な気持ちになるのだ。

 最後かもしれない、そう思って臨もう。


 これがラストチャンスだ――ッ!






 ソニアの『地獄耳』を頼りに、クレアの居る場所へと向かう。

 カラリア王国から少し離れた古びた民家のようなところに着いた。


「こんなところにクレアがいるのか?」

「……」

「あ、あのあの、ここで間違いないみたいです」


 無言のソニアの代わりにスフィアが答える。

 古びた民家の中へと入る。

 狭い小さな部屋で、クレアが机にうつ伏せとなってぐったりとしている。


「クレアッ!? 大丈夫か、どうしたんだっ!」


 俺は慌ててクレアに駆け寄る。

 すると、スースーと寝息が聞こえてきた。


「あ、あのあの、どうやら泣き疲れて眠ってしまったみたいですね」

「おお、チャンスじゃないかッ! 今こそ、こここの勇者を僕らの手で……イタァッ! じょ、冗談だよ、冗談。殴ることはないだろう」


 ギャーギャーと騒がしいニースを押さえつける。

 クレアはこんなところで一体、何をしていたのだろう。


「これは、写真……?」


 クレアが眠っている机の上には一枚の写真。

 幼いクレアと一緒に優しく微笑む男。

 お、俺……?


 いや、違うな。

 似てるけど別人だ。


 誰だろうか。

 クレアの、恋人?


「う、うーん……、お兄ちゃん……」

「うわ、びっくりした。なんだ寝言か。起きたのかと思ったぜ」


 お兄ちゃん?

 もしかして、この写真の人物って……。


「勇者ファルス、三年前に私たちを裏切り行方をくらました憎き仇です」

「えっ?」


 ラクダのぬいぐるみを握りつぶさんばかりに力を込めながらスフィアが言う。


「ナイトさんにも全てお話しましょう。私たちとカラリア王国との因縁を……」

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