43 未来を変える力
「つまり、あと数時間したらここに勇者が現れ超強力な炎の魔法で焼き尽くされるというわけだな?」
「はい、大体そんな感じです」
俺は未来に起こる出来事を話した。
ニースたちがあれこれと対策を考え始める。
すると、すぐにニースがぽんと手を叩く。
「そういうことなら話は簡単だ。勇者が来る前にここから逃げ出そう」
「そんなに上手くいくかなあ?」
「まあ、失敗してもまた時間が戻るだけだから気楽に行こうぜ! な?」
時間が戻ったら、また一から説明しなきゃいけないのは俺なんですけど?
まあ、他に良い方法も思いつかないし、まずはそれでいくか。
「パンパカパーン! 勇者様の登場ですよー! 行けッ! フレイムバーストォ!」
無理でした。
勇者からは逃げられなかった。
再び炎で焼き尽くされ時間はまた元に戻る。
「あ、あのあの、ジェミンさんが勇者さんを操ってしまうというのはどうでしょう?」
「おお、それだっ!」
ジェミンの宴会芸ならば勇者クレアを操ることができる。
いける、いけるぞ――ッ!
これなら、バッドエンドにならずに済むはずだ。
「ふん、一度見た攻撃が私に効くと思ったの? 灰になりなさいッ! フレイムバーストッ!」
ダメでした。
宴会芸に気を取られることなく、焼き尽くされ再びリセット。
「良い案が思いついたのよさ! ナイトが裸になって勇者の気を引くってのはどうだい?」
「却下」
「なんでだい? これなら絶対に未来を変えられるはずじゃないのよさ!」
「そんな未来なら、俺はこのまま無限ループしてたほうがマシだ!」
その後も色々な意見が出されるが、全て失敗に終わる。
俺は一体、何度勇者に焼かれれば良いんだ。
「ダメだ、もうどうすることもできないよ。やっぱり俺なんかに未来を変える力なんてなかったんだ……」
「あ、あのあの、諦めたらダメです! ナイトさんが諦めてしまったら、この世界はずっと同じ時間を繰り返し続けるんですよ!」
そうは言っても、もう打つ手がないよ。
俺以外は毎回記憶がリセットされるから良いよな。
もう数十回も同じことを繰り返してるとさすがに心が折れるってもんだぜ。
「……」
俺の目の前には、相変わらず指をくるくると回しているソニア。
「おい、ソニアも指なんて回してないで何か良い案を出してくれよ」
「……ッ! …………」
俺が話しかけたことに驚き、下を向いてガタガタと震えだしてしまう。
「あ、あのあの、ソニアにはあまり話しかけないほうが良いですよ? 意見なら私が代弁しますからッ!」
「そ、そうか」
俺は、ゆっくりとソニアから離れる。
ソニアは少しこちらを気にしながらも、再び指をくるくるとまわし始めた。
「あ、あのあの、勇者さんはどうして私たちの居場所が分かるんでしょう?」
「えっ?」
スフィアがラクダのぬいぐるみをギュッと抱きながら言う。
「あ、変なこといってごめんなさい。ちょっと気になったものですから……」
確かにそうだ。
勇者は移動魔法を使えるが、誰がどこにいるかまでは分からないはず。
それにもかかわらず、場所を移動してもすぐに見つかってしまう。
一体、何故――?
ま、まさか……ッ!
「この中に裏切り者がいるぅ!?」
「あ、いや、そういうわけではなく、勇者に居場所を伝えている人がいるんじゃないかなーと」
俺は、そういいながらチラチラとソニアのほうを見る。
「あ、あのあの、ソニアは『地獄耳』のスキルを所持してますけど、こちらから何かを発信することはできませんよ?」
「そ、そうか」
心を読まれたか。
いや、でも他に勇者がここに来る理由がわからないんだよ。
「……」
「ん? どうしたソニア」
俺が疑いの目を向けてると、ソニアが俺をじっと見つめて何かを訴えかけてくる。
「あ! なるほど、そういうことだったのですね。ソニア、お手柄ですよ!」
ソニアの心を読んだのか、スフィアがラクダのぬいぐるみを放り投げてソニアに抱き着く。
「……や、やめて、恥ずかしいよ」
「ソニアがしゃべったッ! って今はそんなことより、早く教えてくれ。なぜここがバレるんだ!」
「あ、あのあの、原因はソレです!」
ビシッと指を指すその先にはニースの姿。
「ぼ、僕? そそそんな濡れ衣だ。僕は何もしていない! 無罪を主張する。弁護士を、弁護士を呼んでくれえええ」
「あ、あのあの、違います。その手に持っているものです」
「へ?」
ニースが持っていたもの、それは――。
「よっしゃ、時間になってもクレアが現れないな! 勝った! 未来を変えることに成功したぞッ!」
「やりましたね! これでタイムリセットから解放されますよっ!」
なんとゴーグル型ゲーム機に発信機が取り付けられていたのだ。
ゲーム機を破壊することで、俺たちは未来を変えることに成功したのだった。




