42 タイムリセット
「わぁ、これ、面白いですね!」
「フッ、そそそんな玩具で喜ぶなんてスフィアもまだまだ子どもだな」
「あ、あのあの、ニースさんもやりたかったんですね。気付かなくて、ごめんなさい。どうぞやってください」
「べべべ別にそいうわけではないんだがな。ま、まあスフィアがどうしてもって言うならやってみるかな」
あ、あれ……?
目の前にはゴーグル型ゲーム機を囲んでワイワイと盛り上がっているスフィアたち。
どうなっているんだ?
デジャブ……?
いや、違う、俺は確かにクレアに炎の魔法で焼かれたはずなんだが……。
一体、何がどうなってやがる。
「あ、あのあの、どうかしましたか?」
「いや、ちょっと不思議な事が起こってな。夢でも見てたのかな……。この光景、さっきも見たような気がするんだ」
「そうですか。うーん……」
スフィアが首を少し傾け、顎に手を置き何やら考え事をしている。
「ハハハ、ごめんごめん、スフィアを困らせる気はなかったんだ。忘れてくれ、きっと俺の思い過ごしだろう」
「ぐわああああっ!」
突然、ゲームをプレイしていたニースの叫び声が響き渡る。
慌てて、駆け寄る俺たち。
「あ、あのあの、どうしました? 大丈夫ですか?」
「うぐぐ、こ、これはゲーム機に見せかけたトラップだったようだ。僕としたことが迂闊だったぜ……ぐふ」
そう言い残して、その場に倒れるニース。
やっぱりおかしい。
この光景、前にどこかで……。
確かこの後、ジェミンが祭りから帰って……。
「ただいまなのさ! あれ? あたいが出かけてる間に何があったんだい?」
本当に帰ってきた。
いったい、何がどうなってやがるんだ!
同じことを繰り返している?
わからない。
何がどうなっているんだ。
そのあとも、前と同じやり取りを延々と繰り返していく。
俺は混乱しながらも、その状況を見守ることしかできなかった。
そうこうしているうちに再びクレアがやってきてしまう。
「パンパカパーン、お待たせしましたー。勇者様の登場ですよー! ちゃっちゃと終わらすわよ! 全てを灰に! フレイムバーストッ!」
「ぬわーっ!」
俺はクレアの炎の直撃を受けるのだった。
「わぁ、これ、面白いですね!」
「フッ、そそそんな玩具で喜ぶなん……」
「ちょっと待てええええ!」
「……? どうしたんですか、ナイトさん、突然大声を上げて」
「ちょ、ちょっとゲーム機で遊んでただけじゃないか、そ、そんなに怒るなよな」
何これ、どうなってるの?
無限ループって怖くね?
一体、何が起こってるんだよ。
まるで時間が巻き戻って……。
――時間!?
そうか、時間が戻ってるんだ。
「おい、ニース。お前だろ、お前が何かしてるんだろ?」
「ななな、なんだよいきなり。僕が一体何をしたというんだ!」
「時間だ! 時間を戻してるだろ!」
「……そうか、また時間を戻してしまったのか」
「そうかって、覚えていないのか?」
俺が尋ねるとニースは暗い表情でふぅとため息をついた。
「すまないね。僕のスキルは不完全なんだ。術者である僕はもちろん、時間とともに記憶も全てリセットされるんだよ」
「な、なんだって!? それじゃあ全く役に立たないスキルじゃないか! このままずっと同じやり取りを繰り返すっていうのかよ!」
「それはちょっと違うな。『タイムリセット』の原因となる人物の記憶は保持される。つまり、君が未来を変えれば無限ループから抜け出すことができる、というわけさ」
な、何を言ってるんだ。
俺が、変える?
未来を?
そんな、どうやって!?
「あ、あのあの、詳しいことは分かりませんが、もしニースさんのタイムリセット現象が起きているならば、解決方法は一つだけです」
「なんだ? どうすればいいんだ?」
「バッドエンドを回避する、それだけです」
バッドエンドを……回避するだって?
話を整理するとこうだ。
ようは、ニースにとってバッドエンドとなるような出来事が起きた場合、数時間ほど時間が強制的に巻き戻る。
それを回避するには、未来を変えるしかない。
もし、回避することができなければ、同じやり取りを繰り返し続ける。
そして、未来を変えられるのは、唯一記憶を保持している俺だけ。
「うわあああああ、なんだよ、なんなんだよこれ! 完全に詰んでるじゃねーか! 俺に未来を変えろだって? そんなの無理に決まってるじゃねーか! 俺はただの一般人なんだぞッ!」
「まあ落ち着けよ。大丈夫、何も君一人で全てを解決させなければいけないわけじゃない。教えてくれ、君の見た未来を! これから起きる出来事を!」
ニースが声を震わせながら、俺の肩をポンと叩いてきた。
「わ、分かった。これから起きることを全て話そう――」
俺は、これから起きる出来事をニースたちに話すことにしたのだった。




