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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第五章 それぞれの想い Part2
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38 神隠し

「あーあ、勇者さん、怒って行っちゃったよ? 追いかけなくていいの?」

「分かってるよ」


 はー、さすがにやりすぎたかなあ。

 まさかあのゲーム機を俺のために作ってくれていたなんて……。


 窓から放り投げたゴーグル型ゲーム機を拾い、周囲を見渡す。

 クレアはどこへ行ったのだろうか。

 家の周りを探してみたが見つからない。


「ここにもいない、か」


 クレアの家に行っても誰もいなかった。

 まだ帰ってはいないようだ。


 もし移動魔法を使われていたら、カラリア王国を探しても見つかることはないだろう。

 それなのに、なぜか俺は必死になってクレアを探し回っていた。





「おお、これはナイト殿。今日はどういったご用件で?」

「あ、あの、クレア……勇者を見かけませんでした?」

「いいや、見かけてないよ」

「そ、そうですか……」

「どうかしたのかね」

「い、いえ、何でもないです」


 気付いたらカラリア王国の城までやってきていた。

 ドバイ兵士長が優しく出迎えてくれたが、クレアの姿はなかった。

 城でもない、か。

 本当に、移動魔法でどこか行っちゃったのかな。

 プリムレアのミルフィのところとか。


「ところで、なんだか兵士たちが慌ただしく走り回ってますが何かあったのですか?」

「恥ずかしい話なんだが、逃げられてしまったのだよ」

「逃げられたって誰にです?」

「ジェミンさ」


 城の牢屋で幽閉されていた悪の秘密組織の幹部ジェミンが突然行方をくらましたらしい。

 魔法が使えない牢屋で一体どうやって逃げ出したのだろう。

 といっても、レミエルみたいに特殊なスキルを使えるやつなら魔法結界なんて飾りにしかならないだろうけど。


「というわけだから、ナイト殿も十分お気を付けください」

「いや、俺はあの宴会芸が効かないから大丈夫だと思いますよ」


 むしろ気を付けるべきなのは、何度も操られている兵士長だろう。

 ジェミンの動向も気になるところだが、今はクレア探しを優先しないとな。

 城から出て、再び当てもなくカラリア王国を歩き回る。


 



 クレアの居場所が分からないまま、時間だけが過ぎていく。


「そろそろ家に帰るか、何をこんな必死になってたんだろう」


 来た道を戻ろう振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。

 慌てて視線を逸らそうとするミステリアスな美女。

 どこかで会ったような気がするけども思い出せない。

 おかしいな、こんな美しい女性を覚えていないはずはないんだが。


 女性は気まずそうに俺と地面を交互に見ながら、手をこまねいている。


「あ、あの、どうかしましたか?」

「……」


 俺が問いかけても返事はない。

 ――気まずい。


 うーむ、困った。

 そういえば、俺はエビル村でスライムに踏みつぶされた後、半日くらい記憶がない。

 もしかしたら、この女性と知らず知らずのうちにイケナイ関係になったとか。


 ――ないな。


 じゃあ、なんだろう。

 明らかに、俺に何か用があるといった感じで立ち尽くす謎の女性。

 身動きが取れないまま、時間だけが過ぎていく。


 一分が果てしなく長い。

 このまま、無視して家に帰るか?


 いや、もしかしたら、ドラマチックな運命の出会いではなかろうか。

 こんなにも美しい女性となら一晩のアバンチュールがあってもいいかもしれない。


「あ、あの、俺に何か用があるんじゃないんですか?」

「……」


 再び、俺が口を開く。

 謎の女性が、俺の言葉でビクッと体を震わせ、顔上げる。


 ……。


 再び沈黙。


 ダメだ、この重たい空気耐えられねえ。

 俺が軽く一礼して、女性の横を通り過ぎようとすると、驚いたことに腕を掴まれた。


「あ、あの、痛いです、手を放してください」

「……」


 無言で、俺を睨み付けてくる謎の女性。

 俺の腕を強い力でがっしりと掴んで放そうとしない。

 なにこれ怖い。


 逃げないとマズイ。

 そう直感した。


 だが、足がすくんで動けない。

 全身から冷や汗が噴出してくる。


 すると、女性がポケットに手を入れる。

 何かを取り出そうとしているようだ。


 ま、まさか……包丁?

 あの恋愛ゲームがまさか現実になるとでもいうのか?





 と、思いきや、女性が取り出したのはハトだった。

 しかも次から次へと出てくる。


「えっ?」


 俺が驚き戸惑っていると、女性がフッと笑い出す。


「うぇいうぇーい、どうだいあたいの宴会芸は!」

「そ、その声は……まさか……」

「まったく、全然気づかないからどうしようかと思ったじゃないのよさ!」


 まさかのジェミン。

 雰囲気が全然違うから気付かなかったようだ。

 まさか化粧を落としたらこんな美人だったなんて。


「……こんなところで何をしているんですか? ハッ! まさか、この前の仕返しに俺を殺す気なんですか? そうなんですか?」

「そうだと言ったらどうするのよさ?」

「や、やめてください。俺は名もなき一般人なんです。魔法も使えなければ、特別な力もないし、殺したって何の得にもなりませんよ」


 俺は、必死に命乞いをする。

 すると、ジェミンが腹を抱えて笑い出した。


「イーヒッヒッヒ。やっぱりあんたは面白いねい! さすがはあたいが見込んだだけのことはあるよ。一緒に付いてきな。あんたを悪の秘密組織オリバーの一員に加えてあげようじゃないのよさ!」

「は、はい!?」


 ジェミンが指をパチンと鳴らすと、目の前に扉が現れた。

 なにこれ、ドコでもドア?


「あ、ちょっと待って。俺、悪に手を染める気なんてないんですけど! おーい!」


 俺はジェミンに引っ張られ謎の扉の中へと吸い込まれていくのだった。

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