32 幼馴染ユウナ
戦いから一夜明け、カラリア王国では復興作業が急ピッチで行われている。
事件の詳細は極秘事項とされ、天候を司る魔法使いの存在は闇に葬られることとなった。
俺は今、ステーキ祭りで有名な若者の町ステイシアに来ている。
幻想の町レジェンダで再会した幼馴染のユウナも一緒だ。
「わぁ、凄いね~! 日本を思い出しちゃうよ。私、三年間ずっとレジェンダに居たから、この世界にもこんな賑やかな町があるなんて知らなかったよ~」
そう言いながら、くるくると回転しながら両手を広げておどけて見せるユウナ。
人にぶつかるぞ、と注意を促す。
「もう、あれから三年も経ったんだからいつまでも子ども扱いしないでよ」
「はいはい、悪かったよ」
頬をぷーっと膨らませて怒った振りをするユウナ。
三年経って、見た目は成長してるようだが無邪気にはしゃぐその姿は昔のままだった。
「そういえば、レジェンダの町の人って食料はどうしてるの? クレアの食料配給作業を手伝ったときには立ち寄らなかったはずなんだけど」
「ああ、そのことなら、レジェンダは特別でね。ビッツェさんが特別にあの町は毎日食料が降るように設定してるんだよ」
「ん、そんなことができるなら、なんで他の町もそうしないんだろう」
「んー、私もあまり詳しくは知らないんだけどね。なんでもあまり料理を降らせすぎるとモンスターが寄ってくるんだって!」
そんな話をしながら、当てもなく町をぶらぶらとする。
「えへへ、こうやって一緒に歩いてると昔を思い出しちゃうね」
「ああ、いつも俺の後をくっついて歩いてたもんな」
「ええ? ナイトが私についてきたんでしょ!」
「あれ、そうだったけー?」
そんな風に笑いながら歩く。
何もかもが懐かしい、そして、何よりも落ち着く瞬間だった。
と、そこで何やら背後から物凄い殺気を感じて振り返る。
「何やってんだ、お前。送り届けたあと帰ったんじゃなかったのかよ」
「ギクッ! べ、べ、別にナイトのことが気になったってわけじゃないんだからね!」
俺とユウナを送り届けたクレアが、なぜか俺たちの後を尾行してきたようだ。
趣味の悪い帽子とサングラスをつけていかにも怪しい人物である。
どう考えても逆に目立っていると思う。
「じゃあ、何やってんだよ。こんなところで」
「え、えっと、買い物? そうよ、買い物よ!」
「いつも他人の家から盗んでるのに?」
「そ、そんなことしてないわよ! ……たまにしか」
「してるんじゃねえか」
取ってつけたような言い訳を始めるクレア。
うーん、勇者っていうより盗賊のほうが合ってる気がする。
「ちょっと、クレアさん? ナイトは私とデートしてるんだから邪魔しないでくれません?」
「ふん、何がデートよ! 他の町も見てみたい~って言うから連れてきてあげたっていうのに! 言っておくけど、ナイトは私の壁なの。勝手にちょっかい出さないでちょうだいッ!」
俺の腕を掴んで引っ張るユウナ。
それに対抗して逆側の腕を引っ張り始めるクレア。
腕が痛い、もげる、折れる、潰れるッ!
「おいおい、こんな町のど真ん中でケンカはやめろよ。他の人が見てるぞ? なんか写真みたいなものを撮られてるぞ?」
痛みに耐えながら、なんとか冷静になるように促す俺。
勇者であるクレアはこの町でも有名人のようだ。
変装しててもやはりバレバレらしく、周りの若者がニヤニヤしながら俺たちを取り囲んでいる。
ちょっと、恥ずかしい。
「もう、しょうがないわね、帰ればいいんでしょ。帰れば! あ、ナイト。今日の祭りは三時間後だからね。その時にまた迎えに来るからそのつもりで!」
「へいへい、わかりましたよー」
クレアは、そう言い残して今回は本当に移動魔法で帰っていく。
すると、突然、掴んでいた腕に寄りかかるように頭を預けてくるユウナ。
「お、おい。まだ皆見てるんだしそういうのやめろよ」
「えへへ、良いじゃない。このほうがデートって感じだしッ!」
「あのなぁ、俺をあまりからかうんじゃねえよ。もう子どもじゃないんだろう?」
本当、いつまで経っても、昔と変わらないやつだ。
「からかってなんかないよ。言ったでしょ、私はナイトのことが好きだって」
「はいはい、もうそれは聞き飽き……」
俺が言いかけると、その口を塞がれてしまう。
「ちょ、な、な、な、何やってんだお前」
「ふふ、いつまでもそんな意地悪ばかり言うからよ?」
少し照れながら笑うユウナの顔がなんとも愛おしく思えたのだった。




