30 ドバイ VS ビッツェ
「……!?」
俺が奥の部屋に入る。
部屋の中では、ビッツェとドバイが小さな木製の台を挟んで向かい合って座っていた。
そして、その周囲をクレア、ライアン、ミルフィの三人が取り囲んでいる。
誰も一言も発することなく真剣な表情をしている。
「お、おい、一体何を……」
「しっ! 静かに……! 今いいところなんだからっ!」
「……?」
俺が近付いて何をしているのかを訪ねようとするとクレアに黙るように促される。
いつもいつも人一倍騒いでいるクレアに静かにしろと言われるのは心外だ。
とはいえ、きっとこれは重要な話し合いの最中か何かなのだろう。
ここで、俺が騒いでこじれさせるわけにはいかないな。
俺は、黙って二人の近くへ歩み寄る。
そこで見たものは、予想すらしてない出来事だった――ッ!
「王手!」
「ああああ、待って! 待ってください。今のナシで!」
「待ったは三回までと言っただろう」
自信たっぷりな顔をするドバイに泣きそうになっているビッツェ。
「おい、待つのはお前らだ! こんな時に何を悠長に将棋なんてやってるんだよ!!」
「おお、ナイト殿。随分と遅かったですな」
ドバイに爽やかな笑顔で言われ拍子抜けしてしまう。
あれれ?
こいつが、全ての黒幕だったんじゃなかったのか?
「いやはや、急に城の中にスライムが現れましてな。身動きが取れずに困っていたんだよ」
「あれ? ドバイさんはずっと閉じ込められていたんですか?」
「ああ、そうだ。あまりにも暇だったので、こうしてビッツェ殿と将棋を……」
この世界に何故将棋があるのかとか細かいところは置いておくとしても……。
「じゃあ、兵士を倒したのは?」
「!? 兵士たちに何かあったのか?」
俺が言いかけると、ドバイは少し取り乱したかのように声を荒げる。
もしかして、知らなかったのか?
だとすると、一体誰がこんなことを……。
「うひょひょ、やっと、邪魔なスライムがいなくなったワイ! これでワシも自由なんだワイ!」
「お、王様? いつからここに!?」
現れたのはカラリア王国の国王アリラカ。
中にいたことに気付いていなかったのか、ドバイはかなり驚いた様子で王様のほうを見つめている。
「全く、ドイツもコイツも役立たずなんだワイ! おい、そこのお前! さっさとワシに料理を出すんだワイ! 腹が減って死んでしまうんだワイ! そうだ、幻の黄金プリンをさっさと出すんだワイ!」
アリラカがビッツェに向かってそんなことを言う。
「ああもう、ワイワイうっせえなあ! お前のせいで負けちゃったじゃないかッ!」
「ひょっ!? 王様に向かってなんて口の聞き方なんだワイ! 兵士長よ、こいつを早く処刑するんだワイ!」
「王様、この者を殺せば食料が確保できなくなってしまいますがよろしいのですか?」
「ぐぬぬ……」
なんか頭の悪そうな王様だなあ。
食べることしか頭にないのだろうか。
「あの、ミルフィさん。さっき兵士長に縛られたって言ってませんでしたっけ?」
「ええ、私は兵士長さんに縛られたのよ~」
「うん? 私は、そんなことをした覚えはないぞ?」
あれ、おかしいな。
話が噛み合ってないぞ?
「うぇいうぇーい、何をしけた顔してんだい? ここは一つ、あたいの宴会芸で盛り上げてやろうかね?
そりゃそりゃ、猫祭りだよ~!」
突如現れたハイテンションな女。
ピエロのような派手な衣装に身を包み、何もない空間から猫を大量に降らしている。
この魔法、以前どこかで見たような?
いや、今はそんなことよりも……。
「誰だお前はっ!」
「イヒヒッ! よくぞ聞いてくれました! あたいは悪の秘密組織オリバーの幹部ジェミン! そこの魔法使いをこっちに渡してもらおうか! おっと、逆らうなよ? 逆らったら貴様ら全員血祭りにあげちゃうからさ~?」
スルーされなかったのがよほど嬉しかったのか、かなり上機嫌に全部話してくれた。
「ライアン、あいつはお前の知り合いなのか? オリバーがどうとかって言ってるけど」
「いや、知らないですよ。僕が悪の秘密組織の一員っていうのは嘘ですし」
「だよな。じゃあアイツは本物のオリバーのメンバーってことか」
「そうみたいですね。実際にオリバーが存在していたことに驚きを隠せません」
ライアンに聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
「ちょいと、あんたたち! あたいを無視するとはいい度胸じゃないのさ! 見せてやろう、あたいの本当の恐ろしさを……ッ!」
「あ、今、そういうの良いですから。こっちはちょっとカラリア王国を破壊したのが誰なのかをはっきりとさせなきゃならないんで」
「ひょっ!? カラリア王国が破壊ってどういうことなんだワイ? ワシの国に何が起こってるんだワイ? あ、黄金プリンはまだなんだワイ?」
ワイワイうるさい王様を抑えていると、苛立ちを抑えきれなくなったジェミンが思いもよらない行動にでるのだった。




