27 治癒魔方陣
「……ッ!? お、お前は……」
俺が兵士に気を取られていると、後ろからライアンに槍で突き刺された。
「ら、ライアン……君が、どうして?」
「ふふ、や、やったぞ! 僕が、この僕が凶悪なモンスターを倒したんだッ! 僕が世界を救ったんだッ!!」
きょ、凶悪な……モンスター?
この俺が?
一体、何を言ってるんだ……。
「よくもナイトを殺してくれたわね、この変態仮面ッ!」
「ふ、やはり勇者もモンスターの仲間だったのか。他のやつらは騙せても、この正義の味方、グレート仮面の目は欺け……ぐはぁ!」
俺死んでねーし。
ライアンがポーズを決めようとしたが、クレアに殴られ宙を舞う。
「はっ、しまった! ついイラっとして一般市民を傷つけてしまったわ!」
「おま、いつも俺殴ってるじゃねえか、今更何言っちゃってんの!?」
とりあえずライアンを捕縛し、城の中を移動する。
「あ、あの、もうしませんから許してください、お願いします」
「信用できません」
「あ、今度、可愛い子紹介しますから、お願いします。縄をほどいてください」
「ほう」
「ちょっと、何を釣られてるのよ! バカなんじゃないの!」
城の中を歩きながら、そんな話をする。
しかし、城の中には大量の兵士が倒れているだけだった。
「おい、変態仮面!」
「あの、その呼び方やめてくれない?」
「おい、変態ライアン! この城で何が起こったんだ?」
「変わってねえ! 知らないよ。僕は、シャルノちゃんを追いかけてここまで来ただけなんだ。見失っちゃったけどね」
魔王を?
急に姿を消したと思ったら、カラリア王国に戻ってきていたのか。
「あー、もうわけがわかんねえ。一体、誰が敵で誰が味方なんだよ!」
「僕が、唯一の正義の味方さ。そして、他のやつらはみんな敵だ! どいつもこいつも嘘つきだの変態だの言いやがって……ぐすん」
「それは、自業自得だと思うが……ん?」
城の広間のようなところで、何やら怪しげな光を放つ魔方陣を発見する。
「うーむ、これは、なんだろうか」
「何かしらね。よし、そこの変態! ちょっと中に入ってみなさい!」
「え、ぼ、僕? そ、そんな。何かの罠だったらどうするの?」
「だからあんたが先に入って調べるんじゃないっ! さっさと入りなさいよね!」
クレアがライアンを蹴飛ばして魔方陣の中へと押しやる。
「うわああああああッ!」
「お、おい、なんかものすごい叫び声をあげてるぞ。早く助けてやれよ」
「イヤよ! きっと、私たちを殺そうとして巧妙に仕掛けられた罠ね! 危ないところだったわ!」
「いや、見るからに怪しかったと思うんだけど……」
そう言いながら、何事もなかったかのように進み始めるクレア。
「おい、酷いじゃないか。僕を見捨てて先に進むなんて。この悪魔の化身めっ!」
「何? 誰が悪魔の化身ですって? もう一度言ってみなさい!」
「いて、いててて、す、すみませんでした。僕を置いていかないでください、お願いします」
なんか飼い主とペットみたいな関係だな。
縄をつけてるから、ちょうどペットを散歩してるようにも見えなくもない。
「ところで、あの魔方陣はなんだったんだよ」
「ああ、あれですか。ただの治癒魔方陣でした」
「治癒? じゃあなんであんな叫んだりしたんだよ!」
「……? 治癒魔法なんだから痛くて叫んでしまうのは当然じゃないですか」
そういえばそうだった。
この世界の回復魔法はなぜか痛みを伴うのだ。
痛み無くして回復なしなのだ。
「きゃあああああっ!」
突如、クレアの叫び声が城中に響き渡る。
「く、クレア?! って何やってんだお前」
「い、痛いぃいい、痛いけど気持ちいいぃいい!」
「……置いてくぞ」
俺が驚いて振り返ると、治癒魔方陣の中で悶絶しながら息を荒げているクレア。
ライアンより、この勇者のほうが変態だったようだ。
「ナイトも槍で刺されてるんだから、中に入ったほうが良いんじゃないの?」
「いや、結構だ。大した怪我じゃないしな」
「ええっ!? 思いっきり貫通してたように見えたわよ?」
「いや、痛みは感じないから大丈夫だ。治療の痛みを耐えるくらいなら、このままのほうがマシ……バカ、何をする、やめ、うぎゃああああああっ!」
嫌がる俺を無理やり治癒魔方陣の中へと押しやる勇者。
激痛で意識が飛びそうになる。
「ぜえぜえ、酷い目にあった」
「怪我は治しておかないとダメでしょっ! きっと、この部屋の向こうにボスが待ちかまているはずだから!」
「それは言わないお約束だと思うんだ」
治癒魔方陣で傷を癒した俺たちは、さらに城の奥へと入っていった。




