26 廃墟と化したカラリア王国
「いい加減そこをどきなさい! この泥棒猫ッ!」
「ニャンと言われようともどかないニャア」
かれこれ数十分、ずっとこの調子だ。
じゃれあってる場合ではないはずなのだが。
「あんたの仲間なんでしょ、なんとかしなさいよ」
「うーん、レミエルにはレミエルの考えがあるみたいだからなあ」
と言っても、いつまでものんびりしてるわけにはいかない、か。
「……? ところでさっきから何をしてるの?」
「ああ、ちょっとこの機械を調べてたんだ」
「この、四角い箱のこと? これがなんだっていうのよ」
「いやさ、魔道兵器や天候を操る魔法に関するデータがあるかと思ったんだけど、ロックされてて中を見ることができないんだ」
どうやらパスワードを入力しないと起動できないようだ。
スライムが魔道兵器ならば、それをなんとかする方法を知りたかったんだけどな。
まあ、見れないものは仕方がない。
とりあえず、ここから出る方法を……。
「そいやっ!」
「ちょ、おま、なにやってんだ!」
「え? この箱の中を見たかったんでしょ?」
「……ば、ばかやろう! そういう意味の中じゃねえよ! どうすんだよ、機械壊しちまって!」
目の前には、クレアのパンチで粉々に砕け散った機械の残骸。
あああ、貴重なデータがッ!
『緊急事態発生! 緊急事態発生!』
突然、警報が鳴り響くと同時にアナウンスが流れる。
「な、何よこれ?」
「お前が、機械を壊すからだろうがッ!」
機械を壊したせいで、防犯システムが作動したのかもしれない。
毒ガスとか出たりしないだろうな?
『カラリア王国に、スライム出現を確認! ただちに現場に急行せよ! 繰り返します! カラリア王国に――』
「えっ? なんだよこれ。スライムって魔道兵器なんだろ? だったら、どうして――」
スライムを意図的に町に出現させていたというわけではないのか?
この警報には一体、何の意味が……。
「ちょっと、ナイト何やってんの。早く行くわよ!」
「行くってどこに? あ、あれ? レミエルは?」
「知らないわよ! さっきの警報を聞いてどっかにすっ飛んで行ったわ!」
部屋の扉が開いており、そこにレミエルのは姿はなかった。
兵士長たちの行方も気になるところだが、今はそれどころではない。
カラリア王国はこの世界で一番の人口を誇る大都市だ。
そんなところでスライムなんかが暴れたら大変なことになる!
「お、王国が破壊されてる!? これもスライムがやったのか!?」
「……どうしてよ、どうして! なんで、スライムは私から何もかも奪うっていうのっ!?」
クレアの移動魔法でカラリア王国に戻る俺たち。
すでに町は廃墟と化し、見るも無残な姿となっていた。
「おい、しっかりし……」
「放してよ! あんたも、本当は最初から知ってたんでしょ? 私を……騙していたんでしょう?」
「何を言ってんだよ。俺が騙す? 何のことだかさっぱり……」
フーフーと荒い息遣いで俺に殴りかかってくるクレア。
その目は怒りと悲しみに満ちていた。
「おおーい、君たち!」
「か、から揚げのおっさん! 無事だったのかっ! 一体何があったんだ?」
「いやー、オレにもさっぱりだ。急に兵士が戻ってきたと思ったら料理が降り出したり、大量のモンスターが暴れだしたり、もう何が何やら……」
兵士が、帰ってきた?
勇者なしでどうやって帰ってきたっていうんだ。
「ナイト、話し込んでる場合じゃないわ。とにかく城に行ってみましょう!」
「お、おう。から揚げのおっさん、ありがとうな!」
少し冷静さを取り戻したクレアが言う。
俺たちは、カラリア王国の城を目指して走り出す。
「……ッ!? な、なんだこれはっ! 兵士たちがやられている……?」
「ちょっと、しっかりして! スライムね? スライムにやられたのね?」
「ち、違……兵士長が……」
「兵士長? 兵士長にやられたの? ねえ!」
城に到着した俺たちは驚愕の光景を目の当たりにする。
城の中にはあちこちにカラリア王国の兵士が倒れていた。
兵士長にやられたというのか。
一体、何故――?
「……ッ!? お、お前は……」
俺が兵士に気を取られていると、後ろから槍で突き刺されたのだった。




