24 幻想の町レジェンダ
ぽかぽかと暖かい日差しの中、俺は目を覚ます。
俺がいるのは少し古びた小さな部屋にあるベッドの上。
ここはどこなのだろう。
たしか、クリスタルドラゴンを倒した後に洞窟が崩れてそのまま生き埋めになったはずだ。
他の皆は無事だろうか。
「おはようー、気が付いた?」
一人の少女が部屋の扉を開けて入ってきてにっこりとほほ笑む。
よく知っている顔だった。
驚いた俺は、思わず声を上げる。
「ゆ、ユウナ!?」
「ナイト、久しぶりだね!」
隣の家に住んでいた幼馴染の水島優奈。
彼女が今、俺の目の前にいるのだ。
ここは、異世界。
こんなところにユウナがいるはずがないのに。
俺は、頭でも打ったのだろうか。
それとも夢でも見ているのか。
「ちょっと失礼」
「わっ! な、何すんのよ!」
俺がユウナの胸を揉むといつも通りに強烈なパンチが飛んできた。
この懐かしい感触、本物だ。本物の水島優奈だッ!
「しばらく見ないうちに大きくなったな」
「どっちの意味よ!」
「無論、両方だ」
そんなアホなやり取りをしつつ、外に出る。
しかし、そこは日本のソレとは程遠い幻想的な空間が広がっていた。
「なんだ、やっぱり夢だったのか」
俺が寂しそうに呟いた。
「うん? 何か言った?」
「いや、なんでもないよ」
夢でも幻でも良い。
またユウナに会えたなら、それは素敵なことじゃないか。
町を歩いていると、すれ違う人が俺を見て怯えている。
そそくさと立ち去ったり、逃げるかのように家に入ってしまうのだ。
なんだ、俺が何かしたか?
「俺、嫌われてるのかな」
「ふふ、そんなことないよ。少なくとも私はナイトのこと好きだよ?」
ユウナが照れたように笑う。
「はいはい、ありがとうよ。相変わらずだな、お前も」
「あ、本気にしてないでしょー?」
幼い時から、好き好き大好きって呪文のように繰り返してたからな。
残念なことに、好きは好きでも恋愛感情ではないのだ。
と、俺は思ってる。
実際のところどうなのかはわからない。
だって、わからないままユウナは三年前に――。
あ、あれ?
そうだ、俺は大事なことを忘れていた。
ユウナは、三年前に事故で死んでるんだ。
ということは、ここは天国ということだろうか。
「あのさ――」
「あ、あっちのほうが騒がしいね、ちょっと行ってみよう!」
俺が言いかけると、ユウナが俺の手を引っ張る。
「ちょっと、何なのよ! 私は勇者よ! 勇者に対してこの狼藉、絶対許さないんだからッ!」
「勇者さん、少しは落ち着いたらどうです? この町の人もきちんと説明すれば分かってくれますよ」
クレアとシャルノが町の人たちに捕まっている。
何かしたのだろうか。
「なんでしょう、怪しい二人組ですね。きっとこの町にある黄金プリンを狙ってきたのね!」
「え、あ、いや、どうだろうな?」
ユウナが不審な眼差しで二人を見る。
俺の知り合いだと言える雰囲気ではなくなってしまった。
それにしても、黄金プリンは本当に実在したらしい。
ということは、この町にミルフィもいるのだろうか。
「あの、どうかされたんですか?」
「泥棒よ、泥棒。家の中から金品と食料を盗み出したのよ。それなのに、勇者だって言い張ってるの」
こいつら……。
俺が目を離すとすぐこれだ。
非常識にもほどがある。
「あ、ナイト! ちょっと、何、素知らぬ顔で立ち去ろうとしてるのよ!」
去りたくもなるわ。
こんなやつが勇者だなんて、この世界は何かが間違っている。
「お知り合い、なのですね。私はユウナ、ナイトの彼女です!」
「おい、いつ彼女になった? ただの幼馴染だろうが」
「ちょっと、ナイト。こっちに来なさい!」
「いて、いてて、引っ張るなって、なんだよ」
なんとか事情を説明して、二人をユウナの家に連れてきたは良いものの、クレアの機嫌が悪い。
俺が無視して立ち去ろうとしたことを根に持っているのだろうか。
「なんだ? どうかしたのか?」
「どういことよ、あんた彼女なんていたわけ?」
「いや、だからあれは幼馴染で」
「なんで? 異世界から来たって言ってたじゃない。あれも嘘だったわけ?」
そんなこと言われましても。
俺も何故ユウナがここにいるか知らないし。
「あ、あの、ナイトに乱暴しないでくれません?」
「何よ、あんたには関係ないでしょう?」
「私は、ナイトの彼女なんだから関係大ありです! その薄汚い手を放してください!」
「薄汚いですってえええ、あんたこそ勝手に彼女を名乗るんじゃないわよ! 闇に葬るわよ!」
こ、こえええ。
なんでこの二人、こんなに怒ってるんですかね。
俺が呆気にとられていると、シャルノがちょいちょいと腕を引っ張っていく。
「あのあの、異世界ってどういうことですか? それに私というものがありながら彼女だなんて……」
「え、えっと、だからそれは……」
そんなことを言いながら俺を睨みつけてくるシャルノ。
何、その蔑むような冷たい目は。
俺が何をしたっていうんだよ。
「うおりゃあああ、てめえら少しは黙って人の話を聞きやがれええええっ!」




