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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第三章 幻の黄金プリンを目指して
23/73

22 兵士長ドバイ

「うーん…………」

「どうしたの、唸ったりして。お腹でも痛い?」


 俺が考え事をしていると、クレアが顔を覗き込んできた。

 心配してくれてるのか、はたまたバカにしようとしているのか。


「いやさ、あの兵士長のことなんだけど」

「凄かったわね、ペンギンの巣穴から一人で全員分の服を奪還してくるなんて」

「いくらなんでも強すぎないか?」

「そりゃあ、カラリア王国一の兵士だもん」


 そうは言っても、限度というものがある。

 あの固い大地をどうやって突き進んだというのだろうか。


 そして、俺たちは今、クリスタルが輝く幻想的な洞窟の中にいる。

 そこで出現する数々の恐ろしいモンスターたち。

 そのモンスターに怯むことなく一撃で薙ぎ払っていくドバイ兵士長。

 人間兵器と言っても過言ではないだろう。


「ナイトもあれくらい強かったら良かったんだけどねえ」

「なんだよ、それ。俺が弱いとでも言うのか?」

「弱いじゃない。頑丈なだけで、攻撃力が無に等しいわ!」


 気にしてることをはっきりと言ってくれるじゃないか。

 この勇者は遠慮という言葉を知らないらしい。


「まあ、兵士長は特別よ。歴代最強の勇者ファルスにも引けを取らないほどの達人なんだからッ!」


 クレアが鼻をフンと鳴らし得意げに言った。

 そんな強い兵士長がなぜ勇者のわがままを聞いて黄金プリン探しに付き合ってくれてるのだろうか。


「他にも勇者がいたのか」

「三年前、カラリア王国に現れたスライムに殺されちゃったけどね」


 クレアの表情から笑みが消える。

 どうやら俺は地雷を踏んでしまったらしい。

 まずいな、話を変えなければ。


「なんか怪しいんだよなあ、あの兵士長」

「何がよ?」

「強すぎるんです、強すぎるんですよあの兵士長は!」

「ははーん、分かったわ! 嫉妬してるんでしょ?」


 ち、ちがわいっ!

 いや、どうだろう?

 嫉妬なのかな。


「なあ、クレアもやっぱり強い男のほうが好きか?」

「……? どういう意味?」

「あ、いや、なんでもない。今のは忘れてくれ」


 うーむ。

 なんか腑に落ちないな。




 兵士たちに兵士長のことを聞いても


「尊敬してます!」

「憧れます!」

「兵士長、最高!」


 みたいな答えしか返ってこない。

 部下からの信頼は厚いらしい。




「ドバイさん、ちょっと良いですか?」

「何か用か? 要件は手短いに頼む」


 意を決して直接話しかけてみることにした。

 凛とした顔立ち、しかしその眼光は鋭く、俺はどうしても萎縮してしまう。

 まるで蛇に睨まれた蛙だ。


「見事な剣技ですね。その力があればスライムさえも切り伏せることができるのでは?」

「……どうでしょうな。生憎スライムとは対峙したことがないのでな」


 気さくに笑って見せるドバイ兵士長。

 やはり悪い人ではないのだろうか。


「スライムが現れた時に出撃したりしなかったんですか?」

「私は、カラリア王国の兵士だからね。王様の命令なしでは動けんよ」


 ……?

 今回の黄金プリン探しは勇者の独断なのかと思ってたけど、王様も承知してるのか。

 以前、食料の配給に行ったときに王様にも会ったが肥えた豚みたいな感じだった。

 グヘグヘと笑いながら料理を食べるその姿には驚かされたものだ。

 だから俺は、王様に対してあまり良いイメージを持っていない。


 と、そんなことを思ってると兵士長が慌ただしくその場を離れる。

 兵士長の向かう先には、岩のようにゴツゴツとしたモンスターが数匹。

 しかし、ドバイ兵士長が一瞬にして切り刻んでいく。

 あんな固そうなモンスターが真っ二つである。


 俺と話しているときでも常に周りに注意しているのだろうか。

 まあ、これ以上兵士長に話を聞くのも難しそうだ。

 というか俺、邪魔にしかなってねえ。





「私、あの人キライです」

「え?」


 シャルノがムッとした様子でそう言い放つ。

 そして、手にはなんだかよく分からないが鉱石のようなものを持っている。

 時折、それを口に運んではガリガリと凄い音をさせている。


「それ、食べ物なのか?」

「美味しいですよ、ナイトも食べ……」

「いらねーよっ!」


 魔王は常に何か食べてないと死んでしまうのだろうか。

 そういえば雪原でも、雪だか氷だかを頬張ってたな。


「あの兵士長、怖いですよね。いつも私を睨み付けてくるんですよ。まるでモンスターを見るかのような目なんです」

「へぇ、そりゃお前が魔王だからだろ」

「ち、違いますよ。今は仮面をつけてるんですから!」


 いや、だからそれは、魔王だってバレてるんだってば。

 本当にそんなへんてこりんな仮面一つで正体がバレないと思ってるのだろうか。


 うーん。

 魔王だと知っているなら何故何も言わずに同行させているのだろうか。

 なんか引っかかるなあ。


 そもそも、この世界の魔王って何なんだろう。

 大食いってだけで迫害されなきゃいけないってのもおかしいし。


「また唸っちゃって、やっぱりどこか具合でも悪いんじゃないの?」

「そんなに俺が心配か?」

「べ、別にそんなんじゃないわよっ!」


 クレアがまた俺の顔を覗き込んできた。

 どうせ俺は足手まといですよーだ。

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