21 服剥ぎペンギン
「――ッ!? ナイト、離れてッ!」
俺はクレアに弾き飛ばされると同時に、地面から何かが飛び出してきた。
「……ぺ、ペンギン!?」
目の前には、見るからに弱そうなモンスター。
なんだかよちよちと危なっかしく歩いている。
これなら俺にも倒せそうだ。
ここは一つ、俺も役に立ってみるか。
「よっしゃ、俺に任せとけえっ!」
「ちょ、ダメよ。あのモンスターはッ!」
俺がペンギンに向かっていこうとするとクレアが制止してきた。
なんだ? 見た目に騙されてはならないってことか?
こんな可愛らしくても実は最強クラスのモンスターなのだろうか。
そんなことを考えていると、もこもこと辺りの地面が動き出す。
そして、大量のペンギンが姿を現した。
「いやああああッ! こっちにこないでえええッ!」
クレアがペンギンに追われ全力で逃げ回ってる。
あの勇者が逃げるなんて……!
これはやっぱり超強いモンスターに違いないッ!
助けてドバイさーん!
「ひぃぃッ!」
あれ!?
ドバイさんまでも敵前逃亡!?
そ、そんな強いモンスターなのかよ。
ていうか、この場にいる全員が必死で逃げ回ってる。
なにこの光景。
勇者を含む最強パーティのメンツが逃げ惑うって何がどうなってるのよ。
「あ……」
ひたひたと、歩み寄るベンギンが俺の前で歩みを止める。
や、やられる……ッ!
「…………あ、あれ?」
無事だった。
良かった。
なんだ、勇者たちが全力ダッシュで逃げるからどんな凶悪モンスターかと。
「ん? なんか、風がスースーするなあ? っておいいいい、俺の服が盗られてるッ!?」
無事じゃなかった。
最悪だ。
こんな氷の大地で全裸ってどんなイジメだよ。
手に持っていたカイロのおかげで寒くはないが。
そして、俺の服を盗んだペンギンは満足そうに地中に潜っていく。
「お、おい、待て。この泥棒ッ! あっ!」
くそう。
なんなんだこのペンギンは。
俺の周りで次から次へと脱がされていく兵士たち。
そして、服を持って穴に潜っていくペンギン。
それを茫然と眺める俺と兵士たち。
穴に潜られてはどうすることもできない。
掘ろうとしても永久凍土と思しき氷の大地は固すぎる。
あのペンギンは、一体どうやって掘ってるんだろうか。
「いやあああ、誰か、誰か助けてえええッ!」
未だに逃げ切っているのはクレアとシャルノとドバイの三人だけ。
さすがは、実力者。
華麗な身のこなしで敵の攻撃をかわし続けている。
仕方ない、俺にどうにかできるとは思えないけど助けに……。
いや、待てよ?
服を脱がすペンギン……だと!?
こ、これはもしや神モンスターなんじゃなかろうか。
そして、俺と脱がされた兵士たちは一致団結した。
「頑張れ、ペンギン! そこだっ! いいぞいいぞ!」
「ぺンギン! ペンギン!」
巻き起こるペンギンコール。
声援に応えるかのように、大量のペンギンたちがクレアを取り囲む。
「ああ、惜しいっ! もうちょっとだったのにっ!」
しかし、あとわずかのところでクレアは飛び上がり窮地を脱する。
それと、同時に俺に攻撃魔法がとんできた。
「ごはぁ、なにしやがんだっ!」
「バカなんじゃないのっ! なんで敵を応援してんのよっ! さっさとなんとかしなさいよ!」
なんで、って言われても。
それが男のロマンだからだ!
さて、冗談はこれくらいにしてそろそろなんとかしないとマズイな。
「ひゃぅ、やめて、やめてくださいぃ……」
その声に反応して後ろを見ると、ペンギンにつかまる魔王シャルノの姿が!
「お、おおっ! って、お前、なんで仮面を守ってるんだよ。守るべきところはそこなのかっ!」
「えぇっ!? だって、これがないと、魔王だってバレ……いやああああっ!」
仮面に気を取られてるせいで、衣服をはぎ取られていくシャルノ。
他のペンギンたちもつかまったシャルノに一斉に群がっていく。
「よ、よっしゃ、今助けに行くぞっ!」
「こ、来ないでええええっ!」
俺は、シャルノを助けるべく猛ダッシュする。
「……サンダーボルトォッ!!」
突如として、ペンギンもろとも強烈な雷が降り注いだ。
「う、うごご、一体……何が…………」
「ふふ、一ヶ所に集まったのが運のツキね! 最大出力の雷をぶちかましてやったわっ!」
ただ逃げ回ってるだけかと思ってたが、さすがは勇者といったところか。
躊躇することなく俺やシャルノも巻き添えにする辺りが特に。
「全く、揃いも揃って役立たずばっかりね! しばらくはその格好で反省したら?」
上から目線で俺たちをあざ笑う勇者。
ぶん殴りてえ。
「あっ」
「え、何、どうした……のっ!? あ、ちょっと、ふざけんじゃないわよっ! 待ちなさーい!」
勇者が涙目になりながら穴に潜っていくペンギンを追いかけて行った。
ペンギン、グッジョブッ!




