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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第三章 幻の黄金プリンを目指して
21/73

20 森を抜けると雪国でした

「――ストロベリープレッシャーッ!」


 突然、聞き覚えのある声が森に響き渡る。

 そして、声と共に勇者クレアを襲っていた巨大な豹がずしんと音を立てて倒れる。


「いやー、危ないところでしたね。勇者ともあろうお方が一体何をされているのです?」

「あ、あんたこそこんな森の中で一体何をやってんのよ!」

「私? 私は、ちょっと小腹がすいたのでキノコ狩りに……」


 仮面をつけた少女が、何やら勇者と口論をしている。

 キノコ狩りとか言ってるが、本当は俺たちのことが心配でついてきてくれたに違いない。

 勇者を倒すのは私の役目なんだから、こんなところでやられないでください的な。

 魔王なのに、根は優しい良い子なんだよなあ。


 それはともかく、俺はどうしてもシャルノに聞きたいことがあるので尋ねてみる。


「その仮面は何だ? 新しい遊び?」

「ふふ、よくぞ聞いてくれました。私は、正義の味方、グレート仮面二号! よろしくなのです!」


 びしっとポーズを決めておかしなことを言う魔王。

 えっと、ライアンだっけか?

 あのおかしな仮面野郎に何か吹き込まれたのだろうか。


「……城の兵士の前で魔王とは名乗れないでしょう?」

「そ、そっか……」


 俺が不思議に思ってると、シャルノが小声で補足をしてきた。

 カラリア王国の兵士、勇者側の勢力だろうし魔王とは仲が悪いのだろうか。

 しかし、こんな仮面つけたところで魔王であることはバレバレなんじゃなかろうか。


「これは、グレート仮面二号殿。この度は、勇者の危機を救っていただき何とお礼を申し上げていいのやら……」


 そんなことを思っていると、兵士長ドバイが片膝を地につけながら頭を下げている。

 あれ? 気付いてないのか?

 いや、そもそも魔王の存在を知らないとか?

 

 うーん、よく分からん。

 まあ、無理にあれこれしゃべる必要もないだろう。


「ここから先は危険だから、変態仮面二号さんはお家に帰ってなさい!」

「私も一緒に行きますよ。黄金プリン、探すのでしょう? ぜひお手伝いさせてください!」


 クレアが助けてもらったにもかかわらず高圧的な態度で魔王シャルノに言う。

 しかし、シャルノは平然と、そして嬉しそうに飛び跳ねながら手伝うと言って聞かなかった。


 どうやら、俺たちを助けるというよりも黄金プリンが目当てのようだ。

 さすがは大食い魔王、食べることに命をかけてやがる。


 まあ、魔王が一緒にいたほうが何かと心強い。

 強いし、回復魔法も使えるからな。

 

 というわけで、魔王シャルノが仲間に加わりました。





「あ、このキノコすっごい美味しいです! ナイトも食べてみませんか?」

「いらんわっ! これ、どっからどう見ても毒だよな?」

「えー、美味しいのに……」


 辺りにある巨大キノコを引っこ抜いてはもぐもぐと頬張りながら歩く魔王。

 そんなんじゃ魔王であることがバレそうなものだが、誰も何も言わない。


 兵士長のほうを見ても、周りのモンスター退治に奔走していてこっちには目もくれない。

 実に仕事熱心である。頼れる先輩ランキングで堂々の第一位を獲得できそうだ。


 対照的に俺は、全くもって役に立っていない。

 モンスターが出ては声を上げて助けを求めるくらいしかできない。

 なんとも情けない。仲間にしたくないランキングで第一位になってしまいそうな無能っぷりだ。


「ナイト、元気ないわね! もう疲れたの? これだから最近の若い者は!」

「お前のほうが若いだろうが!」


 少し俺が落ち込んでたら、クレアがクスクスと笑いながら俺に話しかけてきた。

 俺を笑い飛ばすために連れてきたのだろうか。

 だとしたら、やっぱりこの勇者性格が悪い。





 森を抜けると、そこは雪国でした。

 何を言ってるか分からないだろう。

 俺にも分かりません。


「さ、さむい寒いサムイ。何だよ、これ! 氷河期かよ! ツンドラかよ!」

「ツンドラ? ドラゴンの仲間か何かですか?」


 いきなり気候が激変するのはこの世界では当たり前なのだろうか。

 誰も驚いてる人はいない。

 食料の配給時に、似たような村や町にも行ったが移動魔法で一瞬だったからなー。

 

「そ、そんなことより上着持ってない? こ、このままじゃ凍え死んじゃうよう」

「情けないわねー。そんなんじゃ私の壁失格よ!?」


 俺がガチガチと震えていると、クレアは平然としている。

 その手には何やらカイロのようなものが握られていた。


「その手に持っているものはなんだっ!」

「あ、バレた? 仕方ないから、ナイトにも一個あげるよ!」


 なんて恩着せがましいやつ。

 手に持ってみると、不思議とポカポカしてきた。

 火魔法の力がこめられているようで、持っているだけで温かい優れものだ。


 クレアが俺以外の兵士や魔王にも同様のものを配り歩いている。

 こういう気候も予定通りなのだろうか。


「おや、なんか地面がもこもこと動いているような?」

「――ッ!? ナイト、離れてッ!」


 俺はクレアに弾き飛ばされると同時に、地面から何かが飛び出してきたのだった。


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