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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第一章 俺の知ってる異世界と違う
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01 今日の天気は晴れ時々ネコ

「うわぁあああああああああッ!」


 落ちる。

 落ちる。

 落ちていく。


 雲の上から真っ逆さまに俺は落ちていく。


 落ちながら俺は考える。

 なんで俺落とされてるんだろう?


 これって、もしかして地獄に落とされてるのか?


 あのヒゲジジイ。

 俺を騙しやがったなああああッ!?






 地響きとともに俺は地面にめり込んだ。


「いってええええ。死ぬかと思った。てか既に死んでるんだっけ? ようわからん」


 俺は、服の汚れを落としながら立ち上がる。

 てか、なんで今ので怪我一つしてないんだろう?


 辺りに目新しいものはない。

 ここが地球だ、と言われてもそうだろう、と思えるような何の変哲もない荒野。

 地獄ではなさそうで一安心だ。


 しかし、そんな荒れた大地に相応しくない光景があった。

 レジャーシートを広げ、おにぎりを頬張る少女が口を広げたまま固まっている。

 そりゃ、空から男の子が降ってきたんだから当然だ。

 飛行石の存在を疑っちまうね。


 明らかに不審そうな眼差しでこっちを見ている。

 仲間に入れてあげますか?


「あ、あの、すみません」


 とりあえず、俺はその子に声をかけた。

 うん、色々聞いておきたいこともあるしな。


 俺が近付くと、その少女は食べかけのおにぎりを急いで食べ終えた。

 そして、立ち上がり両手と片足をあげて不思議なポーズをとる。


 なんだろう。

 この世界の挨拶か何かかな?


 次の瞬間、彼女は俺に向かって勢いよく飛び掛かってきた。

 おう、最近の肉食系女子は随分、大胆なのですねー。


「ぎゃあああああああッ!」


 痛い。

 痛いです。


 なんか小刀みたいなのでいきなり斬りつけられたとです。


「なにしやがんだテメー!」


 涙目になりながら、少女に向かって叫ぶ。


「なっ、何者だ! 私の攻撃をくらっても平然としていられるなんてあり得ない!」


 少女が驚いた顔で、そんなことを叫ぶ。

 良かった、言葉は通じるみたいだ。


 話しかけたのにいきなり攻撃されたから、もしかして意思疎通できてないのかと思っちまったぜ。

 俺は、事の顛末を彼女に話すことにした。


「ぷっ。神様ァ? 異世界ィ? もうちょっとマシな嘘をついて欲しいものね」


 俺は真剣そのものだったのに、思いっきり笑われた。

 殴っていいですかね?

 さっき斬られた仕返しも兼ねて。


 いや、あまり揉め事は起こしたくない。

 ここは笑顔で紳士的にいこう、そうしよう。


「お、俺も信じられないんだけどね。まあ、それよりさ、この世界のこと教えてよ。地獄ではないんだよね?」


 雲の上から落とされたときは地獄行きなのかと疑ったりもしたが、どう見てもそういう感じではない。

 血の池とかもないし、鬼とかいないし、一言で言うなら平和って感じの世界なのだ。


 そう、平和なのだ。

 良かった、この世界なら俺の第二の人生を謳歌できそうだ。


「イヤよ。私、空から降ってきたり剣で斬られても平然と笑ってられる不気味な男なんて信用できないもの」


 いや、それはまあ俺にも分からないけどさ。

 まあ、異世界だからあれじゃね? 異世界補正ってやつだよ、きっと。


 話は平行線のまま、少女は俺に警戒して何も話してくれない。

 いつしか、雲行きが怪しくなってきた。


 雨でも降るのだろうか。

 そう思っていた矢先の出来事。


 突然、空から何かが降ってきた。


「ニャーッ!」


 え?

 えっ?

 えええええええええッ!?


「ネコが大量に降ってきたァアアアアアアッ!」


 物凄い勢いで、ネコが降り注いでくる。

 俺は、一瞬にして大量のネコの下敷きとなってしまった。

 そして、顔や背中などを思いっきり引っかかれた。


「ぷ、あはははっ! あんたバカなの? 何やってんの? ぷーくすくす」


 そんな俺を助けようともせずに、指をさして笑う少女。

 なんだこいつ、悪魔か何かか?

 きっと、そうだ。

 見た目は可愛い女の子だからって油断したぜ。


 ここは異世界なんだからな。

 信用できないのは俺じゃなくて、こいつのほうじゃねーか。

 こんな大量に降ってきたネコを傘一本で凌ぐなんてどう考えてもおかしいし。

 

 いや、今はそんなことはどうでもいい。


「あの、すみませんが助けてくれませんかね」


 俺は、感情を押し殺し、笑顔を作って彼女にお願いした。


「んー、どうしよっかなー?」


 ニヤニヤしながら、髪の毛をくるくるといじる少女。

 ぶん殴りてえ。

 こいつ、絶対性格悪いよ。


 俺がこんなにお願いしてるのに。


「お、お願いします、助けてください!」

「んふふー、しょうがないなー。そこまで言うなら助けてあげよう、そりゃ」


 少女がネコを指差したかと思うと一瞬にしてネコが綺麗さっぱり消滅した。


「あああああああッ! なんてことを、なんてことをッ! 可愛いネコさんが!」

「あんたが助けてくれって言ったんじゃないのよ」


 この悪魔めええええ。

 いくら助けて欲しいって言ったからって、何も罪のないネコさんを大量に虐殺するこたぁねえだろう!

 動物愛護法を知らんのかッ!


「それにしても、なんでネコが降ってきたんだ? 天変地異? 空にネコの巣があるとか?」

「天気予報で今日は晴れ時々ネコって言ってたじゃない。って、あんた本当に何も知らないわけ? そういえば、異世界がどうとかって言ってたわね。よし、分かった、ちょっと私についてきなさい」


 名前も知らない謎の少女は俺の手を取ると、何やら呪文を唱え始めたのだった。

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