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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第二章 それぞれの想い
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17 嘘つきライアン

 我は正義の味方グレート仮面。

 この世界の平和を影から守っている。


 と、思っていた。

 スライムと出会うまでは。


「はぁ、結局、僕は正義の味方でもなんでも無かったんだな……」

「あれれ~、どうしたのお兄ちゃん。珍しく落ち込んじゃって」


 どうしたもこうしたもないよ。

 僕は、自分が特別な存在でどんな奴にも勝てると本気で思ってたんだ。

 それなのに――。


「ちょっと、一人にしてくれないか」

「せっかく勇者様に命を助けられたっていうのに変なお兄ちゃんねえ」


 そうなのだ。

 勇者だ、勇者クレア。

 彼女のおかげで村は救われた。

 だが、僕の心はなんだかぽっかりと穴が開いたように虚無感に襲われていた。


 僕は一体、何のために生きている?


 毎日、だらだらと過ごして、勇者の配給を待つ日々。

 月に一度のお祭りのときだけ命がけで料理をゲットする。

 ただそれだけだ、他には何もすることのない世界なのだ。


 その生活がスライムによって一変した。

 この世界には、自分の力ではどうにもならないものが存在している。

 その事実を目の当たりにしてしまった僕は、なんだか憂鬱で仕方がなかった。





 現在、カレー祭りで有名な町カレンディアに来ている。

 昨日のスライムの襲撃によって、エビル村は半壊。

 なので、カレンディアに避難しているというわけだ。


 カレー祭りまで、だらだらと過ごす。

 グレート仮面ごっこも悪の組織ごっこもする気分じゃない。

 あんなものは所詮は幻想だった。

 僕は、何の取り柄もないダメな男なのだ。


「スライムがでたぞーっ!」


 突如響き渡る叫び声。

 スライム……だと?


 昨日の今日でまたスライムがやってくるなんて!

 逃げなきゃ、でもどこへ?


 いや、逃げる必要なんてない。

 僕は正義の味方グレート仮面。

 今度こそ、この手でスライムをやっつけてやるんだ!





 物陰からスライムの様子をうかがう。

 何か弱点があるはずだ。


 と、そこにはスライムと戦う一人の少女の姿。

 シャルノちゃんだ。


 祭りの日に決まって勇者と遊んでいるミステリアスな大食い少女だ。

 幼い割に、しっかりとした物腰で時折寂しそうに笑う姿が実に印象的だった。

 僕は、前から彼女のことが気になっていたのだ。

 

 しかし、その少女がまるでスライムを手なずけているかのように町はずれに誘導していく。


 


 一体、何故――?

 まさか、シャルノちゃんはスライムの飼い主なのか?

 だとしたら、エビル村を襲わせたのも?


 不審に思った僕は、シャルノちゃんの後をこっそり追い掛ける。

 気付かれないように、ゆっくりと――。


 そこで見たものは信じられない光景だった。




 僕は、急いで町に戻った。

 この事実をみんなに知らせなければッ!

 

「大変だ、スライムがナイトで、シャルノちゃんが敵だったんだよっ!」

「お母さーん、お兄ちゃんがまた変なこと言ってるよー?」

「ライアン、あんた今までどこいたんだいっ!? 全くスライムにやられちまったのかと思ったじゃないか、ちょっと、どこ行くんだい? ちょっと――」


 ダメだ、信じてくれない。

 なんでだよ、どうしてだよ。

 今回は、本当なんだ。

 僕は、この目で見たんだ。


 スライムがナイトに変わる瞬間を――ッ!



「あの、町長さんに会わせてくださいっ! 大変なんです。スライムの正体がッ!」

「あー、君の噂は聞いてるよ。なんでも嘘つきで有名なんだって? こんな緊急事態にまで嘘をつくなんてろくでもないやつめ!」


 カレンディアの町長に会いに行ったが門前払いされてしまった。

 くそ、どうして誰も信じてくれないんだよッ!


 僕が、僕が何をしたっていうんだッ!





「あ、変態仮面じゃない! ねえ、スライムがどこに行ったか知らない?」


 僕が、町の片隅で項垂れていると目の前に勇者さんが立っていた。

 勇者さんなら、僕の話を信じてくれるだろうか?


 いや、どうせ信じてくれないだろうな。


「……知りません、僕は何も知りませんよ!」

「……? どうかしたの? 何か知ってるんでしょ? お願いだから話してちょうだい!」


 何も知らないって言ったのに、必死に問いただしてくる勇者。

 そのことがなんだかとても嬉しかった。

 僕の話を聞いてくれる人がいたなんて――。


「ナイトがスライム? そんなはずは……」

「……ですよね、僕の話なんて信じられませんよね」


 僕は、そう言って歩き始める。

 もうこの町にも居られない。


 どこか遠くへ行こう。

 誰も知らない、あの丘の向こうへ。


「ちょっと、どこへ行くのよ!」

「どこでもいいじゃないか。どうせ僕の話なんてどうせ誰も信じてくれないんだし」

「私は信じるよ? ううん、信じたいのかもしれない。ナイトが生きてるって、そう思いたいのかもしれない」


 勇者さんが、真剣な面持ちでそう告げる。

 その言葉の意味がいまいち理解できなかった。


 と、そこへシャルノちゃんたちがやってきた。

 ナイトも一緒だ。


「にゃっはー、祭りだ祭りだ、にゃんにゃんにゃーん」

「こら、レミエル。はしゃいではいけませんよ?」


 そんなことを言いながら平然とこっちに向かって歩いてくる。


「ナイトッ! 生きてたのね、良かった!」


 勇者さんがシャルノちゃんたちのほうへと駆け寄っていった。


 そうか、そうだったのか。

 勇者もやつらの仲間なんだ。

 

 こうなったら僕がなんとかしなければ――ッ!

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