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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第一章 俺の知ってる異世界と違う
11/73

10 勇者と温泉に行くことになった

「やっと終わったー」

「お疲れ様ー、おかげ様でいつもより大分早く終わったよー」


 世界中を飛び回りようやくエビフライの配給が終わった。

 しかし、いくら移動魔法があるとはいえ毎日こんなことしてるのか。

 勇者ってのも大変なんだなあ。


「あー、もう汗びしょびしょ。こんなに肉体労働したの初めてかも」

「若いのにだらしないわね。そうだ、私が良いところに連れてってあげる」


 ニコニコしながらクレアが言う。

 なんとなく俺は嫌な予感がしていた。


「ほら、行くよっ!」


 少し渋る俺の手を無理やり引っ張ってクレアが移動魔法を使う。





「ちょ、何だよここ!? こんなところに俺を連れてきてどうする気だ?」

「いーからいーから、黙ってついてきなさいよねっ!」


 蒸し暑い。

 なんだかもわっとしたところだ。

 そして、見渡す限りごつごつとした岩ばかり。

 ところどころ急斜面になっていて、落ちたら一巻の終わりだろう。

 こんな山の中に一体何があるというのだろうか。


「到着ー!」

「おお? これって温泉? へえ、この世界にも温泉があるんだなあ」


 数分歩いて辿り着いた場所。

 俺の知ってる温泉と何ら変わらない普通の温泉だ。

 少し濁ってるし、湯気が凄いことになってるが。


「疲れたんでしょ? この温泉は癒し効果抜群なんだからっ!」


 でも、困ったことが一つ。

 建物とか何にもない。

 本当に天然の温泉なのだ。


 俺は今、クレアと二人きり。

 いくらなんでも、こんなところに二人で一緒に入るのはドキドキしてしまう。


「じゃあ、私はこれで。一時間くらいしたら迎えに来るから」

「あれ? クレアは入らないの?」


 普通に立ち去ろうとするクレアを呼び止める。

 決して、クレアと一緒に温泉に入りたいというわけではない。


「大丈夫よ、ここは私が見つけた秘境の温泉。誰も来ないしモンスターもいないわ」

「そ、そうか……それなら安心だな」


 クレアは、俺を置いて立ち去ってしまう。

 くそ、俺のバカ。

 もっと上手い切り替えしをすれば良かった。


 ま、いっか。

 一時間後に迎えに来てくれるって言ってたし、のんびりと温泉を堪能しよう。





「あー、生き返るぅ」


 なんだか年より臭い台詞だが、疲れたあとの温泉は本当に気持ちが良かった。

 と、そこで何やら岩陰の向こうから物音がした。


 あれ?

 まさかモンスター?


 いやそんなはずはない。

 モンスターはいないってクレアが言ってたはずだし……。


 いや待てよ。

 そもそもあの勇者を信用して良かったのだろうか。


 もしかして、ドッキリ企画でこの後ザバーっと温泉のお湯が流れる仕組みとか!?

 何それはずい。

 とはいえ、このまま不安を抱えたままのんびりと温泉に浸かってるわけにもいかない。


 俺は恐る恐る物音がした岩陰のほうへと歩み寄る。

 そして、そっと向こう側を覗くことにした。


 誰かいる。

 湯気でよく見えないが間違いなく誰かがそこにいる。

 おかしいな、誰もいない秘境の温泉って話だったのに。


 ははーん、さてはクレアが俺を驚かそうとしてるんだな?

 そうはいくかってんだ。

 逆に驚かせてしまえ。


 俺は勢いよく人影のあるほうへと飛び出した。


「きゃあああああああっ!」

「あ、あれ? クレ……ア?」


 影の正体は紛れもなくクレアだった。

 と、思った瞬間俺の身体はクレアの魔法で弾き飛ばされていた。


「い、いててえ。おい、今のは不可抗力だっ! まさか温泉に入ってると思わなかったんだ!」

「最低ッ! 覗かれるのイヤだから帰った振りしてこっそり入ってたのにっ!」


 そんなまどろっこしいことするからだろうがあああ。


「入りたきゃ最初からそう言えってんだ! なんだよ帰る振りって、意味わかんねー」

「何? 逆ギレ? もう怒った。私一人で先に帰ってやるんだからっ!」


 クレアが怒りながら魔法を唱え始める。


「お、おい、それはちょっと困……おーい!」


 うお、本当に帰りやがった。

 どうすんだよ、俺。


 ここ、どこなんでしょう?





 落ち着け。

 とりあえず湯冷めしないようにもう一回温泉に入ってだな。


 ……。


 こ、こんなことしてる場合かっ!?

 ど、ど、ど、どうしよう。


 まさか置いて行かれるなんて。

 この状況をどうやって切り抜けたらいいんだろう。


 見知らぬ世界の見知らぬ土地。

 そして、全裸で温泉に浸かる俺。


 詰んだ。

 完全に詰んだ。


 と、その時。

 目の前にある大きな岩の上に何やら乗っかっている。


「なんだこれ?」


 布きれのようだが、これって……。


「あ、あんた何してんのよっ! 服を着てなかったから急いで戻ってきたらっ! 最低、本当に最低だわっ!」

「ちょ、だから違うって。誤解だああああああ! 頼む、だから置いてかないでくれええええ」

「やめて、こっちこないで。イヤアアアアアアアアッ!」

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