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Limit Break Online  作者: 円連
第三章:出撃、サーシャ小隊
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第七十八話 集団戦:黒軍VS黄軍【4】

 ゼット小隊の読み通り、千個で1セットのRANK1トラップ【対大型艦用宇宙機雷Ⅰ】を黒軍プレイヤーのミロクは機体スキル【分解】で千個の機雷に分け、更に機体スキル【増加】で機雷数を数倍に増やしていた。宇宙機雷の設置可能範囲は3Lサイズの広範囲エリアのみ、とてもではないが拠点内進入路に設置する事は不可能であったが、分解された宇宙機雷は人の大きさと同等の3Sサイズとみなされ極めて狭い場所でも、逆に広大な範囲にでも設置が可能となっていた。故にミロクは数多の宇宙機雷を拡散させたり密集させて設置していたのだ。


 ちなみに、ミロクの所持している機体スキルは【分解】と【増加】のみである。

【分解】:結合しているものを分ける

【増加】:対象の数量を増やす





 設置型トラップが発動し、黄軍NPCAQA撃破の報告ログが情報端末を経由して第二モニター画面に流れる。

 124個目の機雷でNPC機を撃破、1個の機雷で1のダメージである事から、RANK2NPCAQAの耐久力は124であり、黒軍RANK1NPC機の約6倍である。コスト面ではRANK2のNPCAQA1機でRANK1のNPCAQAが5機配備できる。

 RANK3NPC1機に対しRANK2が5機、RANK1だと25機、数的優位を取るか機体性能を取るかだが、俺は数を黄軍は性能を取った。

 コストは5倍だが能力差は6倍以上、この能力差が厄介で、脳内予測ではRANK3の機体1機とRANK1の機体25機で勝負した場合、圧倒的にRANK3の機体が勝つ、RANK1の装備だと攻撃してもほぼ当てられない、当てたとしてもダメージを与えらない、防御面では一撃で破壊され、機動面では追い付けず、避けられずである。選ぶなら断然上位RANKの機体だろう。

 戦は数だと言う奴もいるが、それは同等の兵力での場合であり、過去には少数精鋭で大軍を打ち破ったという例が山ほどある。要は勝った奴の勝因など参考程度にしかならんという事だ。




 コロニー拠点内に仕掛けていた宇宙機雷の罠発動によるAQA撃破で得たポイントは100ポイント、それに加えて罠発動成功124回で372ポイント、損失は設置した宇宙機雷千個。

 1機撃破するのに千個の機雷損失は非効率的だな、次は纏めて倒す計略でも考えておくか…。

 …まあ、今回は損失を考慮しても意味は無いけどな。



 黒軍の捨て駒(NPCAQA)と拡散設置した宇宙機雷によるロストログレーダーを利用しての位置情報の予測だと、そろそろ黄軍の主力部隊が黄軍偵察隊と合流する頃だ。

 敵軍の性質は次以降のログ群が示す事になるだろう。



『エリア2 X:489 Y:499 Z:108 にて設置型トラップが発動、 3ポイント獲得しました』

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

『エリア2 X:489 Y:499 Z:108 にて設置型トラップが発動、 3ポイント獲得しました』

『エリア2 X:489 Y:499 Z:108 にてAQA【トルストロイ】を撃破、200ポイント獲得しました』

『エリア2 X:489 Y:499 Z:108 にてAQA【トルストロイ】を撃破、200ポイント獲得しました』



 NPC機ではなく、プレイヤー機が罠にはまった。

 黄軍の特徴はA&Mタイプで決まりだな。


 機雷群を突破するには幾つかの方法が考えられる。

・軍の目的を優先させ個人を犠牲にする特攻、これがAタイプ。特攻野郎だからAではなく、阿呆の頭文字のAである。

 時と場合により有効な手段となるが、今回余裕があるにもかかわらず、罠の残数すら予測せず、戦力を減らし続けるのは愚の骨頂と言えよう。

・同じ特攻ではあるが、人ではなく軍の備品(NPCAQA等)を消費させるBタイプ。馬鹿のBだな。

 誘爆させるなら、先程の様にAQA丸々1機を投入するよりも、武器や機体装甲の一部を投げ込めば戦力の損失は減らせるのだから、敵とは言えもう少し工夫して欲しいところだ。

・スキルによって罠を無効化させるCタイプ。キャンセルのCと言ったところか。有効なスキルを使ってクリアしていくのがゲームの醍醐味だろうに、黄軍の連中は趣の無い奴らばかりか…。

・機雷は攻撃判定には反応しないタイプの罠だが、AQAやアイテムには反応する。NPCAQAを撃破した際に得られるアイテムを投げ込み誘爆させるDタイプ。ドロップアイテムのDとしておこう。

・アイテムとしては扱われない物、石や板などのオブジェクトで機雷を押し退ける。Eタイプ。

・俺の想定の上を行く方法で罠を除去、あるいは通過するならFタイプ。

 敵のタイプがEやFなら拠点が奪われたとログが流れるだろう。

 最初に宇宙機雷群の罠に掛かったのはタイプB(NPC機)、次がA(PC機)という事は合流した友軍が先行部隊よりもタイプM(無能)な上位者であり、無理()無茶()無謀()な指示をだした事を示している。


ピピピ


 タイマー音が鳴った。

 計算通りだ。


 指揮者が無能()だと出来る事も出来なくなるというもの。

 あと数歩で拠点二つを占拠できたのに惜しかったな、お前らには悪いが時間切れだ。

 黄軍の拠点攻略部隊をコロニーに内包したまま、二基の黒軍拠点コロニーが正面衝突し、遠く離れた位置からでも確認できるほどの爆発を起こした。


 モニターには獲得した戦果ポイントとソウルのログが大量に流れる。自軍コロニーを失った事による減点は無い。

 黒軍の手で拠点を無くしたのだ。黒軍拠点を奪われたわけでも撃破されたわけでもない、よって黄軍の獲得ポイントは0の筈である。まあ、黄軍にポイントが入っていたとしても構わないがな。


「コロニー殲滅作戦結果報告、既に確認済みだとは思うが、黄軍プレイヤーAQA二五機、ノンプレイヤーAQA百十八機撃破、作戦は成功、皆の協力に感謝する。次の迎撃作戦でも皆の奮闘に期待している。返信不要」


 想定よりも多くのプレイヤー機を撃破したわけだが、悉くこちらの思惑通りに動くのだから非常につまらない相手だった。


 軍団戦開始前のルール説明によると、撃破されたプレイヤーが再出撃可能になるまでの時間は十分、そこから全速で移動したとして黒軍拠点要塞への到達はおよそ二十分、併せて三十分は掛かる。

 黒軍拠点要塞が作戦宙域から離脱するのにあと三十分弱、このまま行けば黄軍先行部隊との戦闘は想定しなくても良いだろう。


 さて、残った黄軍側拠点防衛隊が主力であるか、それとも先行部隊より実力が劣るのかは知らんが、急がないとお前らの大好きなソウルやポイントが逃げてしまうぞ。



 通信回線を開き直接黄軍残存機を挑発したわけではないが、こちらの意図を漸く察知した奴らは宇宙機雷に当たろうが進行速度を緩めずに、NPCAQAを従えて拠点要塞へ真っ直ぐ全速力で向かってきた。集団戦開始当初は警戒されていた黒軍のNPCAQAや宇宙機雷は、もはや黄軍にとって脅威とはならず時間稼ぎにすらなっていない。

 この勢いで来るなら拠点要塞が作戦宙域を離脱する前に追いついてくれるだろう。


 そう、そう来なくては俺の計画が水泡に帰すところだ。

 この撤退戦にはどうしても戦わなければならない場面が必要だったからな。


「ケイトです。只今黒軍要塞に到着しました」

 素体での機動力でも間に合うと計算していたが、屍共は問題を起こさず時間通りに拠点要塞へ辿り着いたようだ。


「それでは各機、要塞格納庫内に待機させてあるNPCAQAの装甲を装着してくれ」

「えっ?」

「換装が可能かどうかは既にカミラ小隊隊員が実証している。装甲の性能は最弱だがRANK1の装甲なら誰でも装着は可能だ」

 集団戦終了後に装甲は没収されるだろうが、素体のままでいるよりは気休めにはなるだろう。


 五分後には屍共全員がNPCAQAスライムザッコーの装甲を装備し終えた。

「最弱装甲だとしても装備してるとしていないとでは大違いですね。なんだか安心しました」

「よし、次にフェイスオープンスイッチを押したら素体になったNPCに喰らいつけ」

「ええっ!?」

「喰えるかどうかも実証済みだ。カミラ小隊では何も得る事は出来なかったが、ケイト達なら少しは経験値になるだろう」


「…やってみます!」

 暫く考えた様だが、意を決したケイトがNPC素体に噛み付き、その後、喜びの声を上げる。

「やりました!素体レベルが2に上がりました!」

 レベルが上がったと聞いた途端に他の屍共が次々とNPC素体に噛み付き、歓喜の声を張り上げた。

「喜ぶのはまだ早い、敵軍主力部隊がそちらへ向かっている。撤退作戦を成功させるには君たちにも戦ってもらわねばならない、各員は格納庫内に立て掛けている盾を装備し次第、要塞外に居られるカミラ隊長の元へ急げ」

 戦闘命令により歓喜に震えていた屍共のざわめきが止む。

「大した武器も無い貧弱な装備の私達で勝てるでしょうか?それとも皆さんの盾として…」

「犠牲にしようとは考えていない、君たちは俺達を守る為に戦うのではなく、自分を守る為に戦場に立ってもらいたい。装備したら分かるだろうが、その大型シールドだけは事前にRANK3で取得している。耐久値も高く、遠距離からの攻撃による防御特性も備わっているから簡単にやられたりはしない」

 屍共を囮に使っても構わないのだが、然程、役に立つとは思えず、寧ろ僚友を失ったカミラ隊長が気落ちなされる事を憂慮せねばならない。この役立たず共を形だけでも役立つ様に見せるのが俺の仕事だ。

 ソウルを大量に失った級友の為に用意したNPCAQA用RANK3の重盾【ゴレムシールド】を各自が手に取った。

「こんな馬鹿でかい盾じゃ取り回しが効かないだろ!遠距離攻撃は防げたとしても近距離攻撃は防げねえよ」

「先程まで項垂れていた半人前が名も名乗らず、文句だけは一人前だな」

「う、うるせえ!俺はヘンケンだ。わざわざ外に出て戦わなくても要塞内で籠城戦をすれば良いじゃねえか!」

 こういう阿呆な私見を述べる阿呆が往々にして味方の足を引っ張る。

「拠点要塞の推進装置や動力源は後方に集中している。当然ながら俺達は敵に背後を晒しながら逃げているんだ。要塞内に立て籠もっていては簡単に機動力を奪われる。その後は制限時間一杯まで袋叩きにされ続けて終わりだ」

「…ちっ!」



 敵の弱点を捜し、見つけて攻める。それが戦いの基本。逆に己の弱点は見つからない様に隠す。

 誰しも自分の欠点は隠したがるものだ。隠すが故に何処が急所なのか一見だけでは判断し辛い部分もある。欠点に気付くのが遅ければ取り返しのつかない失敗を生む。だが、阿呆は誰が見ても阿呆、存在自体が弱点なのだ。


 怪我を隠して戦うよりも、怪我を曝して戦う方が戦いやすい。

 こんな反論も出来ない阿呆でも、阿呆は阿呆なりの役目がある。


「では、臆病者のヘンケンは特別に我々カミラ隊の最後尾に就く事を認めよう、安全な場所でのほほんと見ているが良い」

「なんだとコラ!!俺はビビッてなんかいねえぞ!ただ武器も無いのにこんな盾ひとつじゃ勝ち目ねえって言ってんだよ!それよりも、俺達の前に出てこれねえ手前こそビビりじゃねえか、隠れて命令だけしてないでこっち来いよ!」

 確かに俺は屍共の前にはいない、撤退作戦が失敗した時に備えて別の場所で待機している。



「ミロクは万が一に備えて別地点に居る。ここは私を含む五名が君達と共に戦う所存だ」

 俺の代わりにカミラ隊長(他四名)が屍共の前に現れて下さった。

「私はカミラ、我々が君たちを守る。君たちは無防備な拠点要塞を守ってくれ、無論、君たちの安全が最優先だ。撃墜されると感じたならば迷わず拠点防衛任務を放棄し、危険区域から全力で離脱してくれ」


 本来ならば屍共がカミラ隊長へ身命を賭して忠誠を示さねばならないのに、後方守備に回さねばならぬとは下策も下策、こんな策を練った自分が腹立たしくて仕方がない。

 仕方がないが、これも後々の為の布石、今は我々カミラ小隊の実力を見せつけ、屍共の忠誠を得ておくことが先決だ。


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