第七十七話 集団戦:黒軍VS黄軍【3】
「こちら捜索班ゼット小隊のフロード、エリア2 X:484 Y:499 Z:110にて黒軍軍事拠点を発見、RANK1非武装型コロニーであり、現在エリア3方向へ移動中、周囲に敵影は無く、放棄したか拠点内に潜伏している模様」
宇宙機雷が密集している先に黒軍が潜伏していると読んだ黄軍ゼット小隊であったが、機雷群を強行突破したものの黒軍機の発見に至らず空振りに終わり、軍事拠点の発見が当初の予定よりも少し遅れていた。
「こちら捜索班ワインレス小隊のグランゼル、エリア3 X:20 Y:26 Z:89にて敵の拠点を発見、こちらもRANK1非武装型のコロニーだ。エリア2方面へ移動している事から合流しての防衛か、撤退を狙っているものと予測する」
ほぼ同時刻に黄軍ワインレス小隊が、もう一方の軍事拠点を発見する。
「こちら解析班のトルスルトだ。合流される前に各個撃破するぞ、先ずはエリア2側の拠点から攻略する。捜索班はコロニー内への進入口を確保、先行攻略班の到着と同時に制圧を開始だ。究極攻略班は周囲を警戒しつつ前線を押し上げ、収集班は拠点攻略後に修理と補給を行い、敵拠点の物資を根こそぎ奪え」
行軍の遅れなど想定の範囲内だと解析班は問題にせず、黒軍の戦術の意図を読み、その機先を制する策を直ちに立案し、全部隊へと指示を出した。
「なによ、自分たちは拠点防衛って名目でまったく動かないくせに、他人にはああしろこうしろって命令ばかりしちゃってさ」
「俺もリーゼと同意見だけど、奴らも解析班として一応の結果は残してるからな、今は従ったふりをしておこうぜ」
「そうそう、長いものには巻かれろって言うしね」
「私は短気なの!長いものなんて大っ嫌い、ゼット隊長もそうよね」
隊長機が親指を立て、同意を示す。
「ほらね」
「はいはい、それでも指示に従わないのは拙いからな。勝手な行動はするなよ」
「進入路の確保はするし、先行攻略班の到着と同時に制圧って指示も守るわ。…でもね」
リーゼ機がコロニー外壁に降り立ち、他の四機とNPC機の二十機がそれに続く。
「どこまでが進入口かは解釈の違いで変わるわよね。指令室の手前までが進入口と言えるかも知れないしね。それに、先行攻略班の到着って、何処に来たら到着というのかも解釈の違いがあると思うの、私は戦闘宙域に入った時点で到着だと思うのよね。貴方たちはどう?」
またしても隊長機は同意を示し、他の隊員は呆れてものも言えずに口を開けている。
指示という名の命令なのに、リーゼは、それを破るギリギリの独断専行をしようと言うのだ。
「やれやれ、理解力の無さを棚に上げないでくれよ。進入口と進入路を混同している時点で解釈の違いもへったくれも無いんだぞ…。ああ、神様、どうか俺達が進入路へ入る前に先行攻略班が到着します様、お願い致します」
神頼みが通じたのか、進入口の扉を開いて見た瞬間、リーゼの顔が引き攣り、フロードの顔がほころぶ。
「何よこれ?拠点内に宇宙機雷を置いても良いの?」
AQAが二機並んで進入可能な幅の通路に、隙間を抜けるのはどう見ても不可能な程、大量の宇宙機雷が設置されていた。
「あらら、びっちりと設置されてるね。これは別の進入口を探したほうが良さそうだね」
一刻も早く制圧を進めたいリーゼは機雷群へ向けマシンガンを撃ちまくるが、弾丸が当たっても宇宙機雷は宙に浮いたまま動きも爆発もしなかった。銃撃では誘爆はおろか、一つとして宇宙機雷を破壊することができなかったのだ。
「ふざけるんじゃないわよ!」
リーゼは身近に居た黄軍NPC機の首根っこを引っ掴み、機雷群へと放り投げた。
「おい、おい、無茶が過ぎるだろ」
弾丸とは違い、NPC機が宇宙機雷に触れるやいなや機雷が次々に爆発していく。
爆発ダメージにより木端微塵に破壊されたNPC機だったが、機雷群を排除する成果をもたらした。
もたらしたのだが…。
「きー!!奥にも機雷って、こんな性格の悪い奴がいるなんて信じらんない!」
またもNPC機を機雷群へと放り込もうとするリーゼだったが、友軍機に羽交い絞めにされ止められる。
「NPC機とはいえ、これ以上安易に戦力を減らす真似はさせられない、ここは堪えてくれ」
「ちょっと放してよ、ジャンク―!」
「俺達への指示は拠点進入口の確保だ。それはもう達成されている」
ジャンクーの説得にフロードも同意を示す。
「解析班に現状の報告が先だ。NPC機を失う事より、他に名案があるかもしれないからな」
進入路確保と現状の報告を終えたゼット小隊。
次に解析班から出された指示は『機体スキル【解除】を持つ収集班の到着を待て』であった。
「何で収集班しか罠解除のスキルを持ってないのよ、せめて先行攻略班に一名くらいは入れておきなさいよ」
「俺達に愚痴っても仕方ないだろ。ここは大人しく援軍を待ってようぜ」
「はあ?ただ待ってるんじゃなくて、ゼット隊長を見習って他に進入口が無いか探してみようとか思わないわけ?」
援軍が来る前に手柄を立てたいのに制止され、逸る気持ちと憤りを抑えられないリーゼは地団駄を踏むばかりなのだが、自分の事は棚に上げ、隊員達を虚仮にする。
リーゼの傍若無人な態度にも慣れているのか、皆、彼女の口撃をさらりと躱していた。
暫くして同じ捜索班のワインレス小隊が合流、罠解除系のスキルを持たない彼らも、ただ待つしか出来ずにいた。
「援軍も増えてNPC機も倍増したんだから、もう一機犠牲にしても良いんじゃない?」
待ちきれず痺れを切らしたリーゼが『宇宙機雷の強引な除去』を提案するが、誰の賛同も得られずに再びふてくされる。
そこへ、AQAと同じサイズの岩塊を抱えた隊長機が戻ってきた。
運んできた岩の塊を宇宙機雷へとぶつけて、爆破除去しようという魂胆である。
武器での攻撃では罠を発動させる事は叶わなかったが、武器でなければ接触反応を起こし爆発するのではないかとゼット隊長は考えたのだ。
「…う~ん、爆発はしなかったけど、穴は開いたわね」
「…。」
岩塊をぶつけても宇宙機雷は爆発しなかったが、ぶつかった機雷は岩塊に押され機雷群の真ん中に風穴が空いた。その穴はAQAがギリギリ通れるかどうか判断し辛い微妙な大きさであった。
目の前に道が出来たら渡るだろうか、躊躇して渡らぬ者もいるだろう。
だが、躊躇いとは無縁のリーゼが無謀ともいえる火の輪くぐりならぬ、機雷の穴くぐりをやってのけた。
「やってやれない、あ、こともな~い」
機雷群を抜けたリーゼは喜びの見得を切る。
次にゼット隊長が機雷の穴を抜けるが、他の者が続けてこない。
「あなた達、なに日和ってんのよ」
「俺達にはあんな芸当できねえよ」
なぜできないのかとリーゼが言う前に、ゼット隊長機が先程投げた岩塊を担ぎ、出口へ向け再び投げた。
「流石はゼット隊長ね。ほら、大岩二つ分の穴なら貴方達でも通れるでしょ」
「いやいや、確かに穴は拡がった様に見えるけど、まだ風穴に数個の機雷が残ってるんだよ」
「今更一つや二つの機雷でびびってんじゃないわよ!大したダメージにもならないって知ってんでしょ」
「いやいやいや、押し退けただけで機雷はまだ残ってるから、下手に誘爆したら木端微塵になるのもNPCAQAを見て知ってるだろ、俺は慎重に物事を進めたいの、何度も言うがLBOは慎重に慎重を重ねて進めていくゲームなんだよ」
「なによ、良い訳ばかりで男らしくない、『ガンガン行こうぜ』くらい言えないの!」
「い~や、ここは『命を大事に』だ、リーゼこそもう少し女の子らしくなってくれよな…」
「私のどこが女らしくないのよ!ボン!ギュッ!ボン!のナイスバディの持ち主に向かって!」
「いま無理やりギュッとした!?」
ボンは、ぼんでも盆の様な胸に、締め付けてアピールするウエスト、ボン!よりもボーン!と言う表現が適切である尻をアピールされても何の魅力も感じないし、見た目よりも寧ろ性格の方に問題があると思うフロードであった。




