第七十三話 合流【1】
修正しましたが、第七十二話でソウルをカルマと誤表記していました。
意味不明になってしまい申し訳ございません。
「カララ王国への転移門を設置しました♪これで何時でも開く事が出来ます♪」
「早すぎるだろ!こっちはまだ半分も出来ていないのに!」
「こんな事もあろうかと事前に用意していたのですよ♪」
ライムからは時間が掛かると言われていたサーシャ小隊が居るエリアへの扉を、オウガデスはいとも簡単に用意してくれた。
「続きまして、トウマさんを此方へ呼び寄せますね♪」
オウガデスから聞いた情報では、今現在、いや、時間軸のずれた未来にいるトウマは新型AQAの開発を終えた所らしい、あとは転移門の出現条件を満たせれば元の【戦艦撃墜】ミッションへと戻れるそうだ。
だが、戻ったところで、サーシャ小隊は【戦艦撃墜】ミッションから【旗艦奪還】ミッションへと移行しているので、ミッション間移行イベントを済まさなくてはならない。これでは大幅なタイムロスだ。
よって、今回はこちらの世界、緑軍エリアへとトウマを呼び寄せる事になった。
ここからならオウガデスが繋げてくれた転移門を通れば直接【旗艦奪還】ミッションへと行ける。
問題はトウマのいる未来への転移門だ
どういう仕組みかは分からないが、未来へ行くのは簡単だが、過去へ行くのは難しい、ましてや行き来させるのは尚更ら難しく、トウマのいるエリアへの転移門を開くには流石のオウガデスでも時間が掛かるそうだ。
そこで転移門の代用として用意されたのが召喚用魔法陣である。
召喚された者を常時留めておくには特殊な魔法陣、もしくは膨大な量のエネルギーか精神力が必要だが、一時的に召喚するのであれば比較的低コストで済むらしい。
簡易式大型魔法陣でトウマを現代に呼び寄せていられる時間は約五時間、制限時間を過ぎると召喚元の世界、今回だと未来へ戻ってしまう。そうなるとトウマが自力で転移門を呼び寄せる条件を満たすか、オウガデスに転移門を設置して貰うか、どちらにせよ時間を掛けないと現代には戻れない。
サーシャ小隊全員が集団戦に参加するというミッション外ミッションをクリアする為には、トウマが未来へと戻る前に敵ボスであるキングオブキングスカララを倒す。或いは旗艦を取り戻し、カララ王国から脱出する事で【旗艦奪還】ミッションから抜けられる。そしてトウマが黒軍基地へと戻る事により未来へ戻るのを防げば良いのだ。
「AQAトウマ・エルファ召喚♪」
召喚されしAQAはリヴァイア・サクトゥの面影もない、トウマの新型機であるトウマ・エルファだ。
機体色は艶消しブラック、乳白色の角に悪魔を思わせる翼、両腕の側腕部に反りのある刃が出ている。
素体と変わらない風貌をしているが、大幅なパワーアップを果たしているのは一目瞭然だ。
「オヅヌ?オヅヌか!無事だったか?それでここは何処なんだ?戦艦のドックにも見えないし、その人たちは整備員さんじゃなさそうだし」
手を振り迎える俺を見つけたトウマがコックピットからこちらへ飛び降りてくる。
「やあ、トウマ、お互い元気そうで何よりだ。そうだな、先ずは俺がお世話になっている二人を紹介するよ。こちらのエルフがライム、緑軍の将校で、俺はこの人に完膚なきまでに叩きのめされた。凄腕のパイロットだ」
「おいっす!よろしくなトウマ、俺の事はライムでいいぞ」
「トウマだ。よろしくライム」
二人はにこやかに握手を交わす。気が合いそうな感じで良かった…と思ったら、お互い握り合う手に力を込めている様だ。まあ、似た者同士ってところかな。
「それから、こちらの方がオウガデスさん、ライムに止めを刺されそうになったとき、助けに入ってくれた恩人だ。元黒軍のお偉いさんだったらしく、そのよしみで色々と便宜を図ってくれているんだ。トウマをここに呼び寄せてくれたのもこの人だ」
「そ、そうか、俺の仲間が世話になったみたいだな。礼を言うよ、ありがとう」
「いえいえ♪その分、楽しませて頂いておりますのでお気遣いなく♪」
オウガデスの内に秘めたる凄味を察したのだろう、あの物怖じしないトウマが一瞬怯んだ。
「ここはオウガデスさんの所有する格納庫で、今はライムに俺のAQAを製造して貰っているところなんだ」
「そうか、それで今は素体なんだな。随分と形が変わったところを見ると、オヅヌも己の殻を破ったのか?」
「ん?己の殻って何?」
「能力の限界を超える為のミッションだ。あれ?やってない?」
「ふふ♪竜族のリミットブレイクは己の殻を破る事なのですよ♪鬼族のオヅヌさんとは限界突破の方法が違うのです♪」
なるほど、属性によっても限界突破の方法が変わったりするんだな。
「それで本題なんだが、俺達が居なくなってからゼクセドアルスが敵に奪われたらしいんだ。旗艦を取り戻そうとカララの王国へサーシャ隊長達が向かったけど、返り討ちにあって、ミッション失敗による帰還もできないらしくて何度も全滅しているみたいだ。直ぐにでも助けに行きたいけど、俺のAQAがまだ完成していないんだ。」
「任せろ。先に俺が行って助けてくる。オヅヌは後からゆっくりと来てくれ」
「いや、それがゆっくりとはしていられないんだ。あと三時間ほどで軍団戦が始まる。開始に間に合わないと今まで稼いだソウルが半分になる。遅れるのは仕方ないにしても軍団戦に不参加だと、これまで稼いだソウルは没収、学校からは厳重注意を受けた上に、日曜日の外出は禁止になるんだ」
「ってことは、麗しの弟妹達には会えないって事か?」
頷く俺、涙目になるトウマ。
「だから一刻も早く皆を助けなければならないんだ。俺も後から直ぐに行く、済まないが今はトウマが頼りだ」
「深刻なお話の最中に失礼しますよ♪」
「な、なんですか?」
「トウマさんのAQAトウマ・エルファはRANK8です♪RANK10相当の素体にRANK8の装甲では吊り合いません♪ああ、未来の科学者達ですら、この程度の開発しか出来ないとは非常に嘆かわしい♪」
「本当はRANK10のAQAトウマ・ジステアってのを開発する予定だったんだ。でも、開発に失敗してRANK8のAQAトウマ・エルファで妥協する事になったんだ」
「ふふ♪私ならばトウマ・ジステアの開発が可能ですよ♪」
オウガデスはこのAQAをRANK10にまで上げるつもりらしい。装甲の開発をしてくれるのは嬉しいが、今は時間の方が貴重だ。
「それでは俺もトウマも間に合わない事になりませんか?」
「そうですね♪ですから、お二人は素体の儘で出撃なさってくださいな♪」
装甲無しでは格段に性能が落ちるのに行けと言うオウガデス、本来なら正気を疑う言動だが、この人の言う事なら従うべきだと思える。
既にトウマはやる気を見せていて、今にも自機へと乗り込まんばかりに意気込んでいた。
「わかりました。素体のままで行きます」
「俺も行きます」
俺達の返事に満足そうに頷くオウガデス。
「ふふふ♪御理解感謝しますよ♪」
会心の笑みを浮かべながら懐から扇子を取り出し、開いた扇子を一振りすると、AQAトウマ・エルファの機械装甲が無くなる。
二振り目には素体のコックピット内へと送られ、三振り目には転移門の扉が開かれていた。
こんな事が出来るのに、AQAの開発に時間が掛かるって本当か?本当なのか?
「それでは行ってらっしゃい♪健闘を祈ってますよ♪」
扇子を振りながら見送るオウガデスと、やれやれといった表情で片手を上げるライム、肝心なことはAMIDAからの改編対象になるから言えないのだろうけど、今回は多くのヒントを貰った気がする。こんなに小隊の状況情報や、やるべき事を教えても大丈夫なのだろうか?
いや、底の見えない彼らを信じ、深く考えるのは後にして、今はただ仲間の事を考えよう。
我らが仲間の元へ、いざゆかん。
オヅヌとトウマが去った後、機械装甲の設計図を作成するフリをしていたライムは手を止める。
「随分とお気に召した感じだな、三文芝居に付き合った見返りはあるんだろうな?」
ライムへと振り返ったオウガデスの表情はいつもの微笑。
「ええ♪お礼は手加減なしの機獣将棋に致しましょう♪」
「いやいや、俺にはまだやる事があるから遠慮しとくわ」
額に汗を滲ませ手を振り拒否の姿勢を見せるライム。
「遠慮なさらずに♪他にやる事も無いでしょうから御付き合い下さいな♪」
閉じた扇子をくいっと上げるとライムが宙に浮いた。そのまま自室へと連行しようとする。
「まて、ちょっとまて、あれだ、やる事は観戦、そう、師匠としては弟子たちの観戦をしなくては駄目だろ?」
オウガデスの動きがピタリと止まる。
「確かにそうですね♪私も軍団戦とやらが観てみたくなりました♪」
ライムは地に降ろされ自由を取り戻す。
「ふぅ~、助かった」
「そうそう、観終ったら対局致しましょうね♪互いに時間はたっぷりとある事ですし♪」
「あー、長寿な自分が恨めしい!」




