第七十話 クロスイベント オヅヌ+ケントツカムイVS緑軍グリムドゥーナ騎士団+耳長騎士と笑顔仮面【8】
ようやく理解した。これはミッション、勝利条件は終幕を迎えること。敗北条件は無し、つまり勝つまで帰れないって事だ。
二十三話目の笑えない笑い話を聞き終えて、観客全員が笑顔の仮面を装着、悲し涙を嬉し涙に変換、尽きかけの気力を振り絞り、賛辞の言葉と全身全霊の拍手をオウガデスへと送る。
「ありがとうございます♪有難う御座います♪それでは最後に小噺で締めさせていただきます♪」
ここで、挫けてはいけない。まだ続くのかと意気消沈してしまっては無限ループに嵌まってしまう。
NPCの対応に合わせ行動するのが攻略のポイントだ。
『親分、もしも生まれ変われるとしたら何になりたいでやんすか?』
『そうだな、悪党の俺が生まれ変わるなら石鹸になりたいな』
『それはどうしてでやんす?』
『足を洗うのさ』
「お後が宜しい様で♪」
かつてない程の短い話を終えると、さっさと舞台袖へと引っ込むオウガデス、緞帳が下がり終演を告げるアナウンスが流れた。
歓喜に湧く観客たち、後方で控えていた赤、青、黄色の召喚機獣が何時の間にか消えていた。
ララベル達も安堵の表情を浮かべ、歓喜に泣き崩れる隊員や、げっそりとした表情で項垂れる隊員もいた。
NPC達も各々のAQAへと戻ろうとしている。
どうやら本当に終わったようだな。
と、安心してしまったのがいけなかったのか、再び緞帳が上がりオウガデスが現れる。
「それでは第二幕を開演いたします♪」
女性陣が悲鳴を上げる。これは本当に抜け出せない無限ループなのか?
「いいかげんにしろ!!」
舞台袖から躍り出て、オウガデスにドロップキックをお見舞いし、舞台袖へと蹴り飛ばしたのはライムだった。
「師匠!」
「ライム師匠!」
黄色い歓声を受けたライムは仏頂面をしたままオウガデスとは反対の舞台袖へと去って行った。
― 達成条件を満たしました。ミッションクリアです。 ―
タイミングよく緞帳が下り、今度こそ、本当に今度こそ閉幕となった。
今にして思えばミッションクリア条件は拍手喝采ではなく、繰り返される『ボケ』に対する『ツッコミ』だったのかも知れない。
今更だがな。
― ミッションクリアがキャンセルされました。別ミッションの達成条件をクリアしてください。 ―
まただ。またミッションクリアを邪魔された。
まあ、今回は自力でクリアしたとは思ってないけど、喜びが悲しみに変わる瞬間は何度味わっても嫌なものだ。
新たな勝利条件はオウガデスの課題クリアとなっている。今度も敗北条件は無い。
俺の傍でオウガデスが微笑んでいる。
この人の口調は楽しげ、態度は穏やか、感情は喜怒哀楽ありそうなのに、表情は真顔と微笑の2パターンしか見ていない。
「まだ何か御用でしょうか?」
「ええ♪同郷の好みでお手伝いしようと思いまして♪」
「手伝いですか?」
「はい♪オヅヌさんの部隊は攻略失敗が続いております♪このままではオヅヌさんが戻られたところで同じ事の繰り返しかと♪」
いったいどう言う事だ?サーシャ隊長がミッション失敗したなら俺達が戻るまで待つか、簡単なミッションに変更する筈だ。
「オウガデスさんは今の隊長達の置かれている状況が分かるのですか?」
「分かりますとも♪時間軸のずれたステージへ跳躍した御仲間、トウマさんの現状も分かりますよ♪」
「トウマもまだ戻れていないのですね。サーシャ隊長は、部隊の皆は無事ではないのですか?」
オウガデスの説明によるとサーシャ小隊の皆はキングカララというBFAに母艦を強奪され、取り戻す為にカララ星のカララキングダムへと侵攻したものの返り討ちに遭ったらしい。母艦が有れば別だが、敵に鹵獲されたままでは脱出は不可能、敵国内の仮アジトから強制リトライになり、全滅を繰り返しているそうだ。
4回全滅って事は俺やトウマ以外の全員が最低でも4年分、4回とも撃墜されていればさらに4年分の寿命を失った事になる。
サクラ、チナツ、メイプル、ホーリーにとっては折角取り戻した寿命をまた失うのは相当に辛いはずだ。
「一刻も早く戻って助けに行かないと!」
「敵の首領はキングオブキングスカララ、ライムさんと同等の相手ですよ♪」
オウガデスの言葉を聞いて背筋が凍りついた。
「まともに戦って勝てる相手では無いって事ですね」
「はい♪ですが、倒せない相手でもありません♪」
対策があるってことか…。
「ボス対策を教えてもらう訳には・・・」
静かに首を振るオウガデス。
「私が誰かに攻略法を教えてしまえば、その時点でAMIDAは攻略法を変えてしまうのですよ♪AMIDAでも干渉できない私やライムさんが相手なら話は別ですけどね♪」
なるほど、だからライムとの戦闘の際は助言してくれたのか。
「では、オウガデスさんが仰る手伝いとは何ですか?」
「オヅヌさんにより強くなって頂く為のお手伝いです♪強くなるには何をするべきか?そう、定番中の定番、修行ですね♪」
こうして俺の修行が始まる。
因みに、トウマは既にキングオブキングスカララを倒せる程にパワーアップを果たしているそうだ。だけど、時間の逆行に往生しているらしく、オウガデスから、トウマの為にも強くなって貰うと言われたが、その理由は教えてもらえなかった。
修行場へと移動する際、オウガデスが懐から扇子を取り出し一振りすると、居場所が演芸場が和室へと変わる。どうやって移動したのか仕組みは分からない。オウガデスのやる事に一々不思議がっていては身が持たないので気にしないことにする。
「さて、先程の修行では耐久力と精神力を強化しましたので、今回の修行は脳波力と命中力を強化します♪」
先程って、もしかして聞かされ続けた落語の事を言っているのだろうか?あれって修行だったんだ。
今は自分のステータスを確認する手段は無いが、どのくらい強化されたか後で調べてみよう。
「やっていただくのはこちら♪機獣将棋です♪」
将棋か、古き良き時代の遊具だな。実物は見た事ないが、ネット画像で見たものと似てはいるが、扱う駒は似ても似つかない物だった。
「駒は召喚機獣を縮小した物を使います♪慣れてもらう為に最初は五駒から始めましょうか♪」
オウガデスから渡された俺の手駒は手の平サイズの戦金後鬼、刻銀前鬼、ケントツカムイに兎の機獣と馬の機獣だ。
「既に金後鬼と銀前鬼との召喚契約は結ばれていますね♪では、残りの献突神猪、伯天月兎、武闘馬頭との契約を済ませてください♪」
兎の機獣はハクテンゲット、馬の機獣はブトウバズと言うらしい。
ケントツカムイは封印を解いたのだから契約するのに吝かではないが、ハクテンゲットとブトウバズは譲り受ける形になるわけだ。何だか気が引けるが、つまらない話を聞いてくれたお礼だと言われた。そうか、あの地獄の寄席の報酬だと思えば多少は気が楽になるかな。
でも契約ってどうするのだろう?センカクゴギュウやコクギンゼンコの時は浮遊する物体をAQAで食べたら契約した事になったと記憶してるけど。
「これをどうぞ♪」
懐から取り出し渡された物は【博士の電子辞書】だった。
端末の登録者はオヅヌ、AQAプレグナル・オウガに残してきた物だ。その懐はところ構わず何処にでも繋がるのだろうか?
『レアアイテム【猪鬼の証】を入手しています。ケントツカムイと召喚契約を結びますか?YES/NO』
否は無い、YESだ。
『ケントツカムイと契約しました。召喚機獣・献突神猪は特殊AS突猪鬼となりました。』
『【鬼力強化】により特殊AS突猪鬼は特殊AS突香猪鬼となりました。』
トッコウイノキか、何だかカウントダウン後に突っ込んで行きそうな名前だな。
槍を構えた猪武者で、名は体を表すと言うが、反して沈着冷静な感じがする。
『レアアイテム【兎鬼の証】を入手しています。ハクテンゲットと召喚契約を結びますか?YES/NO』
当然、YES。
『ハクテンゲットと契約しました。召喚機獣・伯天月兎は特殊AS天兎鬼となりました。』
『【鬼力強化】により特殊AS天兎鬼は特殊AS天翔兎鬼となりました。』
テンショウトキか、兎だけに跳ぶのか?それとも飛べるのか?
ウサ耳付けた華奢な見た目とは違い、ドリル型の杵を手に持つパワーファイターの様だ。
『レアアイテム【馬鬼の証】を入手しています。ブトウバズと召喚契約を結びますか?YES/NO』
言わずとも、YES。
『ブトウバズと契約しました。召喚機獣・武闘馬頭は特殊AS闘馬鬼となりました。』
『【鬼力強化】により特殊AS闘馬鬼は特殊AS闘士馬鬼となりました。』
馬なのに蹄ではなく五本指だ。白毛ではなく黒毛だけど角があるからユニコーンのようにも見える。
まあ、馬なのは頭だけだが…。獲物は持たず、素手で戦うみたいだ。
「今後、オヅヌさんが主に揃えるべき召喚機獣は十二支鬼獣ですね♪」
なるほど、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の十二種類か、なんだか多いな、全部集めるのは大変そうだ。
「丑寅の鬼門は開いておりますので、鬼を揃える条件は整っていますが、申、酉、戌は鬼に成り辛いのでご注意を♪」
猿、鳥、犬か…鬼に成らない理由があるのだろうか?
理由を尋ねるとオウガデスは首を振った。なるほど、攻略に深く係わる改編懸念事項なんだな。
「それではルールを説明しますね♪操作は簡単で初心者でも出来ますが、奥が深いので玄人でも長く楽しめますよ♪」
戦場は正方形の平面盤、実際の将棋盤と同じ9×9の81マスで出来ている。
盤面は平らだがスクリーン盤になっており、毎回違う戦場、陸、空、海、宇宙など様々な地形が用意されている。
今回は山岳と森林地帯、森の中に隠れたり、高い場所の方が地形効果が得られるので、如何に有利な地形を抑えられるかが重要だ。
駒には攻撃力と防御力、耐久力、そして機動力が設定されており、攻撃する方向、攻撃を受ける向きによって補正倍率が変わるので、進むべき向きも考慮しなくてはならない。駒によって動けるマス数や方向も違い、地形によっても変わる。今回は大将である自機を含む主要駒六種類の性能を把握しなくてはならない、駒毎にスキルや、得意地形などの特性があるのだ。
将棋と同じく機獣将棋でも敵から奪った駒は自分の駒として使えるのだが、今回は修行ルールを適用し、自駒にはせず捕虜駒として扱う。敵大将を倒せば勝利となり、勝てば倍掛け、負けても所持する捕虜駒の数だけ成長できるのだ。
本来なら、大将駒一種一個、奪い合える主要駒八種八個と使い捨ての雑兵駒一種九個、計一八個の駒を使用するのだが、今回は俺が機獣将棋に慣れてきたら、徐々に使用駒数を増やすという事になっている。
理想の勝ち方は捕虜駒五個を得てから大将を倒す事なのだが、相手はオウガデス、経験も実力も向こうが何枚も上手である。
負けを覚悟で少しでも捕虜駒を確保していきたい。最悪なのは一機も倒せずに負け続ける事だ。成長出来ず、ただ時間を浪費してしまう事だけは何としても避けたい。
「それでは始めましょうか♪オヅヌさん、先手をどうぞ♪」




